イレウス管が入っていたら絶対に絶飲食?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「減圧チューブ留置中の飲食」に関するQ&Aです。

 

久保健太郎
大阪市立総合医療センター看護部
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

イレウス管が入っていたら絶対に絶飲食?

 

一般的に減圧チューブ(胃管やイレウス管)留置中は絶飲食が必要ですが、お茶やジュース類は許可してもよいでしょう。

 

〈目次〉

腸管の減圧のため、絶飲食が原則

イレウス(腸閉塞)とは、腸管内腔の閉塞や腸管運動障害により、腸管内容の通過が障害された状態をいいます。イレウスの原因はさまざまで(表1)(1)、病態生理も多彩で複雑です。

 

表1イレウスの原因別分類

イレウスの原因別分類

 

片桐美和,長尾二郎,中村陽一:診断の進め方と注目すべき臨床所見検査所見.特集最新 のイレウスの診断と治療,消化器外科 2010;33:1535-1544.より引用

 

イレウスにおける基本的な病態生理は(表2)(2),(3)のとおりであり、イレウスの保存的治療においては、腸管の減圧が重要です。腸管の減圧のために、減圧チューブ(胃管やイレウス管)の挿入と絶飲食を行います(図1)。

 

表2イレウスの合併症と治療

イレウスの合併症と治療

 

図1イレウス管挿入時のX 線画像(立位)

イレウス管挿入時のX 線画像(立位)

 

液体の飲用で保存的治癒率が上がった研究もある

単純性癒着性イレウスでは、絶飲食と胃管の挿入により65%は改善すると報告されています(4)。イレウス状態が改善し、減圧チューブを抜去した時点で水分から経口摂取を開始して、段階的に食事形態を上げていくという考え方が一般的です。

 

また、減圧チューブを抜去する前に、チューブを留置したままクランプした状態で食事を開始し、それでもイレウスが再燃しないことを確認したうえで減圧チューブを抜去する施設もあります。

 

一方、胃管(減圧チューブ)を留置しても絶飲食にする必要はないとする報告もあります。ただし、この報告は減圧チューブ留置中も食事をとってよいというわけではなく、下剤や消化剤などを加えた液体を飲用させることで、絶飲食群よりも保存的治療で治癒した率が高かったというものです(5)。

 

イレウス治療においては、腸管の減圧のために減圧チューブ留置と絶飲食が必要とする考えが一般的です。しかし必要ないとする報告もあるため、今後の動向を注視していく必要があります。

 

絶食はもちろん必要ですが、飲水は許可してもよい場合があります。
イレウス管が挿入されている場合に飲水しても、ある程度は小腸から吸収され、残りはイレウス管から吸収されるので、病態に悪影響は及ぼさないと考えられます。
何より、イレウス管が入っているのはとても苦痛です。さらにあれもこれもダメというのはかわいそうなので、水くらいは飲ませてあげたいですね。

 


[文献]

  • (1)片 桐美和,長尾二郎,中村陽一:イレウスの診断( 1) 診断の進め方と注目すべき臨床所見,検査所見. 特集最新のイレウスの診断と治療,消化器外科 2010;33:1535-1544.
  • (2)炭山嘉伸,斉田芳久:単純性イレウスの初期治療: 減圧術を中心に.特集イレウス診療のpitfall -い つ外科に送るか,臨牀消化器内科 2004;19: 1237-1244.
  • (3)渡邊利広,木村理:イレウスの初期治療と保存的 治療.特集最新のイレウスの診断と治療,消化器 外科 2010;33:1555-1563.
  • (4)布施暁一,八木義弘:癒着性イレウスに対する保 存的治療と手術適応.消化器外科 1996;19: 1803-1809.
  • (5)Chen SC, Lee CC, Yen ZS, et al. Specific oral medications decrease the need for surgery in adhesive partial small-bowel obstruction. Surgery 2006;139:312-316.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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