在宅での呼吸リハビリテーションの内容は?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「在宅での呼吸リハビリテーション」に関するQ&Aです。
藤田吾郎
東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科
在宅での呼吸リハビリテーションの内容は?
患者が安心して在宅生活を送るために行われるすべてのサポートが含まれます。
特に、ADLとQOLの維持・向上という視点が重要です。
〈目次〉
在宅での呼吸リハビリテーション
在宅で行う呼吸リハビリテーションには、安心して在宅生活を送るためのすべてのサポートが含まれる。運動療法や理学療法などの狭義のリハビリテーション手技をもって、呼吸リハビリテーションとはいえない。
在宅で行われる運動・呼吸機能に対するアプローチは、呼吸器離脱を目的とした急性期や回復期のアプローチとは異なる。
主に、筋骨格系の運動機能を維持するための運動療法、人工呼吸器合併症の予防や呼吸ケアとしての気道クリアランス法、QOLやADLの維持を目的としたリハビリテーションが挙げられる。
人工呼吸器装着患者への在宅呼吸リハビリテーション
1筋骨格系の機能低下に対するアプローチ
人工呼吸器装着中の患者は、どうしても臥床時間が長くなる。また、多くの場合、原疾患そのものが動作に必要な四肢・体幹の筋骨格系の機能低下を招いている。したがって、ROM(関節可動域運動)*や、筋力増強運動が必要となる。
自動運動が可能な患者には、しっかりと自主トレーニングを指導する。
神経筋疾患などにより自動運動が難しい場合には、負担にならない程度に家族が行えるような指導が必要である。
2人工呼吸器関連の合併症予防のアプローチ
人工呼吸器関連の合併症を防ぐためには、気道クリアランスを保つ必要がある。
基本的な体位ドレナージについては、本人や家族でも可能であるため、入院中または訪問リハビリテーションにおいてしっかりと指導する。
咳介助や排痰介助が必要な神経筋疾患や脊髄損傷患者に対しては、適応があれば器械による咳介助(MAC*、MI-E*)が有用な場合もある(図1)。
図1非侵襲的な排痰補助装置
3ADL・QOL低下に対するアプローチ
人工呼吸器管理下の患者では、原疾患や呼吸器疾患由来ではなく、ベッドレストによる二次的合併症としてのADL低下、さらにはQOL低下が起こる。
車椅子乗車を支援することは、患者の離床機会を増やし、身体活動量を増加させ、生活リズムを整えるとともに気分転換を図ることにもつながる。
車椅子乗車が困難な患者で身体活動量を増加させるには、ベッド上でも可能なサイクルエルゴメータを利用することもできる(図2)。
- ROM(range of motion):関節可動域
- MAC(mechanically assisted coughing)
- MI-E(mechanical insufflator-exsufflator)
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社