徒手的呼気介助って?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「徒手的呼気介助」について説明します。
道又元裕
杏林大学医学部付属病院看護部長
徒手的呼気介助って?
徒手的呼気介助とは、徒手的に胸郭運動を他動的に介助することである。
胸郭を呼気時に圧迫することで呼気を促進し、相対的に吸気量を増やすことで、換気の改善・気道分泌物の移動・呼吸仕事量の軽減を図るものである。
なお、徒手的呼気介助としばしば混同される手技に、スクイージング(aqueezing)がある。
スクイージングは、排痰体位をとり、気道分泌物の貯留する胸郭を呼気時に圧迫し、吸気時に圧迫を開放する手技である。呼気流速の増大によって分泌物を押し出し、気道分泌物の移動・換気の改善・酸素化能や肺コンプライアンスの改善を図るものであり、呼吸理学療法とは一線を画す手技である。
徒手的呼気介助は、排痰援助の第一選択とされるべき手技ではない。
徒手的呼気介助はあくまで換気改善手技として位置づけられていること、排痰効果が科学的に検証されていないこと、不適切な手技による合併症(肋骨骨折、低酸素血症、疼痛、循環動態異常など)が起こりうること、などがその理由である。
排痰援助の基本は「適切な加湿」と「有効な体位変換」である。
徒手的呼気介助の実施が検討されるのは、手技に熟練したスタッフがいる施設で、十分なフィジカルアセスメントの結果、取るべき痰が存在し、体位管理、加湿、吸引を行っても痰が除去できない場合のみと考えられよう。
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社