術後の弾性ストッキングと間欠的空気圧迫法はどう使い分けるの?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「術後の弾性ストッキングと間欠的空気圧迫法」に関するQ&Aです。
竹下静子
大阪市立総合医療センター看護部主任
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
術後の弾性ストッキングと間欠的空気圧迫法はどう使い分けるの?
リスク分類に基づいて予防法を決めます。
〈目次〉
静脈血栓塞栓症のリスクレベル
術後の弾性ストッキングと間欠的空気圧迫法の使い分けは、静脈血栓塞栓症のリスクレベル分類に基づいた評価を実施して決めます。
日本版「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」ではリスクレベルを「低、中、高、最高」に分類し、それぞれに対応した予防法を推奨しています(1)。
適正な予防法を選択するためには、主な手術・処置のリスク分類を行い、さらに対象患者の静脈血栓塞栓症の付加的な危険因子(表1:術前リスク)を加えて、総合的にリスク評価を行う必要があります。
静脈血栓塞栓症のリスク別の予防法
弾性ストッキングは中リスクの患者では静脈血栓塞栓症の有意な予防効果を認め推奨されていますが、高リスク以上では単独使用での効果は弱いとされています。
間欠的空気圧迫法は、高リスク以上でも有意に静脈血栓塞栓症の発生頻度を低下させるといわれています。また間欠的空気圧迫法を用いている場合、歩行が可能となった後も血栓リスクが高い状態では、弾性ストッキングによる予防を継続することもあります。
当院ではリスクレベルを決めるための周術期肺血栓塞栓スコア・リスク評価表(以下チェックシート、表1)を作成し、日本版ガイドラインのリスク分類とその推奨予防法をもとにした「リスク分類と予防法」(表2)をチェックシートとともに院内マニュアルに示しています。
リスクレベル | 奨励予防法 |
---|---|
低リスク | 早期離床および積極的な運動 |
中リスク | 弾性ストッキングあるいは間欠的空気圧迫法 |
高リスク | 間欠的空気圧迫法あるいは低用量未分画ヘパリン |
最高リスク | 低用量未分画ヘパリンと間欠 的空気圧迫法の併用あるいは 低用量未分画ヘパリンと弾力 ストッキングの併用 |
CULUMN深部静脈血栓症(DVT)予防
術後の深部静脈血栓症(deep vien thrombosis:DVT)は肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)に進展する可能性があり、致命的な術後合併症の1 つと考えられています。そのため予防の重要性が指摘されています。
既往症と施行予定の手術内容からリスク分類を行い、それをもとに患者に応じた適切な予防法を行います。また、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を発症した場合には早期に診断し治療を開始することが大切なため、術後の注意深い観察が重要となります。
予防法実施に伴う合併症が認められることもあるので、実施にあたっては十分な注意が必要です。
(清水貞利)
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社