VAP(人工呼吸器関連肺炎)予防にはなにをすればいいの?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「VAP(人工呼吸器関連肺炎)予防」に関するQ&Aです。
塚原大輔
日本看護協会看護研修学校認定看護師教育課程特定行為研修担当教員
VAP予防にはなにをすればいいの?
バンドルアプローチを行うことが提唱されています。
VAP予防
VAP予防策はさまざまな学会などから「診療ガイドライン」が発表されている。
特に、IHI(米国ヘルスケア改善協会)*が2006年に発表した“100,000 Lives Campaign Prevent Ventilator-Associated Pneumonia”には「人工呼吸器バンドル」が示されている。このケア・バンドル4項目を遵守することは、VAP発症率減少に大きな成果をもたらし、その有効性が広く認識されるようになった。
IHIは2010年、人工呼吸器バンドルに「クロルヘキシジンを使用した日々の口腔ケア」の1項目を追加した5項目を発表した(表1)。
IHI人工呼吸器バンドル(2010)
- ① ベッドの頭位を30~45度上げる
- ② 鎮静の中断と抜管可能かどうかの評価を毎日行う
- ③ ストレス潰瘍の予防を行う
- ④ 深部静脈血栓症の予防を行う
- ⑤ クロルヘキシジンを用いた口腔ケアを毎日行う
わが国においては、日本集中治療医学会が、2010年に「人工呼吸器関連肺炎予防バンドル2010改訂版(VAPバンドル)」を学会ホームページ上に公開している(表2)。
人工呼吸器関連肺炎予防バンドル2010改訂版
- Ⅰ 手指衛生を確実に実施する
- Ⅱ 人工呼吸器回路を頻回に交換しない
- Ⅲ 適切な鎮静・鎮痛をはかる。特に過鎮静を避ける
- Ⅳ 人工呼吸器からの離脱ができるかどうか、毎日評価する
- Ⅴ 人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しない
バンドル(bundle)は日本語で「束」を意味し、戦略的な意味合いをもつ。1つひとつでは効果が薄いかもしれないが、組み合わせて実施することで効果を上げることができる。
特徴は、特別に高価な医療機器を用いなくても、高いVAP発症率減少効果をもたらすことが可能な点である。
バンドルの効果について、IHIは、人工呼吸バンドルの遵守率が95%以上であればVAP発症率が61%減少していると報告している。
- IHI(Institute of Healthcare Improvement):米国ヘルスケア改善協会
[文献]
- (1)CDC’s NHSN. Ventilator-Associated Event( VAE). http://www.cdc.gov/nhsn/PDFs/pscManual/10-VAE_FINAL.pdf(2014年11月18日閲覧).
- (2)IHI. IHI Ventilator Bundle(IHI Tools). http://www.ihi.org/(2014年11月18日閲覧).
- (3)日本集中治療医学会ICU機能評価委員会:人工呼吸器関連肺炎予防バンドル2010改訂版:6-7.http://www.jsicm.org/pdf/2010VAP.pdf(2014年11月18日閲覧)
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社