せん妄は、どのように予防すればいいの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「せん妄の予防」に関するQ&Aです。

 

茂呂悦子
自治医科大学附属病院看護部

 

せん妄は、どのように予防すればいいの?

 

せん妄のリスク要因を取り除くための介入が基本となります。せん妄の発生やせん妄期間の減少が期待できる介入として、早期離床が推奨されます。

 

せん妄予防

せん妄予防は、リスク要因を取り除くための介入が基本となる。また、信頼性・妥当性のある評価ツールを用いたせん妄評価で早期発見に努めることも重要である。

 

せん妄のリスク要因は多岐に及ぶため、医師・看護師・理学療法士など多職種チームによる包括的な介入が推奨されている1, 5

 

せん妄予防の介入の概要を表1に示す。

 

表1せん妄予防のための介入

 

せん妄予防のための介入

  • 適切な酸素供給
  • 水分/電解質バランスの調整
  • 適切な疼痛管理
  • 不必要な薬物投与の中止・回避
  • 腸/膀胱機能の調整
  • 適切な栄養摂取
  • 早期のモビリゼーションとリハビリテーション
  • 術後合併症の予防と早期発見・早期治療
  • ケアの頻度とタイミング、照明、騒音の調整による夜間の睡眠を妨げず過ごしやすい、見当識維持を助ける適度な刺激のある環境の調整
  • ケア参加できる程度の鎮静レベルの維持と意思表示の促進

 

睡眠環境の調整では照明や騒音、看護ケアによる刺激の削減などが含まれる。低コストで有害性がほとんどないことから鎮静薬の必要量を減らすためにも実施が推奨されている

 

早期離床は、せん妄管理と並んでABCDEバンドルの1つとして位置づけられており、重要性の認識は広まってきている。

 

Needhamらは、医師、看護師、理学療法士・作業療法士などからなる多職種チームによる適切な鎮痛・鎮静管理と早期リハビリテーションを組み合わせた介入を行い、介入前と比較して運動機能レベルの向上(端座位可:P=0.02、椅子への移動:P=0.005、立位:P=0.05)と、せん妄期間の短縮(P=0.03)が認められたと報告している。この調査では、インフォメーション、教育、カンファレンス、コンサルテーション、介入効果のフィードバックなどを行い医療チームの連携と介入の促進を図っている。

 

各施設で早期離床を積極的に取り入れる際には、安全性維持のためにも、早期離床の重要性と進め方、せん妄・痛み・鎮静の評価スケールの使い方などに関するスタッフ教育と適切な鎮痛・鎮静管理、離床の開始基準・中止基準の設定、運動機能の評価などが必要であり、医師・理学療法士を含めた多職種連携による介入が望まれる。

 

医療チーム内での認識の共有と円滑な介入を促進するには、早期離床を成功させるために活用できるリソースやシステムのインフォメーション、カンファレンス、介入効果のフィードバックを行っていくことも重要である。

 


[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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