せん妄を早期に発見するには、どんなアセスメントツールが有用?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「せん妄のアセスメントツール」に関するQ&Aです。
茂呂悦子
自治医科大学附属病院看護部
せん妄を早期に発見するには、どんなアセスメントツールが有用?
成人のICU患者に使用できるせん妄のモニタリングツールのなかで、信頼性と妥当性が最も高いのは、CAM-ICUとICDSCです。
〈目次〉
せん妄のモニタリングツール
CAM-ICU*とICDSC*は、挿管・非挿管患者どちらにも使用できる。
両者とも、ICU看護師と集中治療医師が使用した際の評価者間の信頼性が高く、DSM-Ⅳで比較したとき、高い感度と特異度を示したとして、PADガイドラインでも推奨されている5。
しかし、両者とも、日本語版の信頼性・妥当性の検証が行われていない点は課題である。
CAM-ICU
CAM-ICUの評価は2つのステップからなる。
1ステップ1
RASS*(『人工呼吸中の鎮静レベルの評価方法には、どんなものがあるの?』)または、それ以外の鎮静スケールを用いて覚醒の状態を評価する。
RASS−4と−5(他のスケールを使用した場合は、これに相当するレベル)の患者は、深く鎮静させられているか、昏睡状態ということになり、せん妄かどうか「評価不能」と判断する。
RASS−3以上の場合、ステップ2の有無を評価する。
2ステップ2
CAM-ICU(表1)でせん妄の診断基準に該当する4つの特徴を見る。
- 特徴1 精神状態変化の急性発症または変動性の経過
- 特徴2 注意力欠如
- 特徴3 意識レベルの変化
- 特徴4 無秩序な思考
特徴1と特徴2があり、特徴3または特徴4があれば、せん妄と評価する。
幻覚は、しばしばせん妄患者に認められる症状であるが、診断上の必須条件ではないため、CAM-ICUでは検出できない。
「せん妄なし」と評価された場合でも、幻覚のようなせん妄症状が認められる場合もある。この場合は、軽微なせん妄と考えられ、時間経過とともにCAM-ICU で「せん妄あり」になりうるので、モニタリングを継続する。
ICDSC
ICDSC(表2)は、8~12時間の勤務帯で実施する日常的な看護介入時の観察や診療録、申し送りなどの情報に基づき、8項目それぞれについて該当の有無を評価する。
8項目の合計が4点以上であれば、せん妄と判断する。
点数化できるため、重症度の評価として代用できる可能性がある。
患者に直接質問や指示をする必要がないため、患者に負担をかけないのがメリットである。
CAM-ICUは評価した時点でのせん妄の有無を判断できるのに対して、ICDSCは過去8~12時間の包括的な状態の評価である点は留意する必要がある。
- CAM-ICU(confusion assessment method for ICU)
- ICDSC(intensive care delirium screening checklist)
- RASS(Richmond agitation-sedation scale)
[文献]
- (1)Ely WE. Delirium in Critical Care. New York:Cambridge University Press;2011.
- (2)Ely WE, Shintani A, Truman B, et al. Delirium as an Predictor of Mortality in Mechanically Ventilated Patients in the Intensive Care Unit. JAMA2004;291(14):1753-1762.
- (3)Pisani MA, Kong SY, Kasl SV, et al. Days of Delirium are Associated with 1-Year Mortality in an Older Intensive Care Unit Population. Am J Respir Crit Care Med2009;180:1092-1097.
- (4)Girard TD, Jackson JC, Pandharipande PP, et al. Delirium as a predictor of long-term cognitive impairment in survivors of critical innness. Crit Care Med2010;38:1513-1520.
- (5)Barr J, Fraser GL, Puntillo K, et al. Clinical Practice Guidelines for the Management of Pain, Agitation, and Delirium in Adult Patients in the Intensive Care Unit. Crit Care Med2013;41:263-306.
- (6)古賀雄二,若松弘也:ICUせん妄の評価と対策;ABCDEバンドルと医原性リスク管理.ICUとCCU2012;36:167-179.
- (7)卯野木健:簡単にせん妄を評価できるツールは?.EB Nursing2010;10:31-34.
- (8)Needham DM, Korupolu R, Zanni JM, et al. Early physical medicine and rehabilitation for patients with acute respiratory failure: a quality improvement project. Arch Phys Med Rehabil 2010; 91: 536-542.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社