せん妄発症のリスクには、どんなものがあるの?|せん妄のメカニズムとリスク因子

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「せん妄発症のリスク」に関するQ&Aです。

 

茂呂悦子
自治医科大学附属病院看護部

 

せん妄発症のリスクには、どんなものがあるの?

 

せん妄発症のリスクは多岐に及びます。ただし、基本的なリスクファクターは、認知症高血圧、アルコール依存の既往歴、入院時の重症度です。

 

〈目次〉

 

せん妄発症のメカニズム

せん妄発症のメカニズムは明確にされておらず、1人の患者に複数の要因が存在する場合も多い。

 

クリティカルケアにおけるせん妄は、重症患者に生じる臓器障害の1つ(急性機能不全)ととらえられており、炎症・低酸素血症・薬剤による神経伝達物質不均衡などの関連が考えられている。

 

せん妄のリスク因子

せん妄の具体的なリスク要因は表1に示すように、多岐に及ぶ。

 

表1せん妄のリスク因子

 

古賀雄二,若松弘也:ICUせん妄の評価と対策;ABCDEバンドルと医原性リスク管理.ICUとCCU2012;36(3):167-179.より引用

 

1宿主因子

宿主因子は患者がもつ素因であり、せん妄発症のリスク評価には欠かせない情報である。

 

PADガイドラインでは、基本的なリスク要因として認知症・高血圧・アルコール依存の既往歴、入院時の重症度を挙げ、エビデンスレベルBとしている。

 

2医原性因子

鎮静誘発性の昏睡はICU患者のせん妄発生のリスク因子であるという報告や、ベンゾジアゼピンよりデクスメデトミジンのほうがせん妄発症を減少させるという報告を引用し、さらなる調査が必要性としながらも、昏睡やベンゾジアゼピンの使用がせん妄発症のリスク要因となりうることを示唆している

 

ベンゾジアゼピン系薬物は、アルコールの離脱症状のある患者において症状の持続期間や程度を減少させることが報告されている

 

臨床でよく経験する不眠に関しては、せん妄による不眠なのか、不眠によるせん妄なのかは明らかになっていないが、せん妄を発症している患者は、発症していない患者に比べてレム睡眠の頻度が減少し、その時間も短く、レム睡眠の出現までに時間を要することが報告されている

 


[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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