鎮静薬には、どんなものがあるの?|鎮静薬の種類と特徴|人工呼吸ケア

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「鎮静薬の種類」に関するQ&Aです。

 

植村 桜
大阪市立総合医療センター看護部

 

人工呼吸中の鎮静薬には、どんなものがあるの?

 

鎮静薬には、プロポフォール(プロポフォール)、ミダゾラム(ドルミカム)、デクスメデトミジン(プレセデックス)などがあり、特徴を考慮して使用します。

 

鎮静薬の種類と特徴

日本集中治療医学会の調査では、国内のICUにおける鎮静薬の使用頻度は、プロポフォールが最多で53%に使用されており、次いでミダゾラム23%、デクスメデトミジン19%の順であった

 

表1鎮静薬の持続投与量(集中治療における人工呼吸中の鎮静)

 

プロポフォール ミダゾラム デクスメデトミジン
0.3~3.0mg/kg/時 0.03~0.18mg/kg/時 0.2~0.7μg/kg/時

※添付文書を参考に作成

 

プロポフォールは、作用発現がすみやかで、鎮静レベルの調節性がよいのが特徴である。脂肪製剤であり、12時間ごとに注入ラインの交換が必要である。

 

ミダゾラムは、作用発現が早く作用時間が短いという特徴がある。ただし、48~72時間以上の持続投与が行われた場合、蓄積した代謝産物や脂肪組織から血中への移行により、中止後も鎮静効果が遷延することがある。また、長期投与後の突然の中止で、離脱症候群を引き起こすことがあり、注意が必要である。

 

デクスメデトミジンは、鎮痛・鎮静作用を有する薬剤で、自然な睡眠に近い状態が維持され、刺激を与えると容易に覚醒し、反応することが特徴である。

 

PADガイドライン(『PADガイドラインってなに?』)では、ICU入室期間やせん妄のリスク因子を考慮し、ベンゾジアゼピン系薬剤(ミダゾラム)より非ベンゾジアゼピン系薬剤(プロポフォール、デクスメデトミジン)の使用を推奨している。

 

ICUの重症患者では、腎機能障害や肝機能障害により鎮静効果が遷延する場合があるため、ウィーニング時には注意が必要である。

 


[文献]

  • (1)日本集中治療医学会:ICUにおける鎮痛・鎮静に関するアンケート調査. 日集中医誌2012;19:99-106.
  • (2)日本呼吸療法医学会人工呼吸中の鎮静ガイドライン作成委員会:人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン. 人工呼吸2007;24:146-167.
  • (3)Barr J, Fraser GL, Puntillo K, et al. Clinical practice guidelines for the management of pain, agitation,and delirium in adult patients in the intensive care unit. Crit Care Med 2013; 41: 263-306.
  • (4)飯田有輝, 坪内宏樹:ICU患者の早期運動療法の効果. ICUとCCU2012;36:407-413.
  • (5)臼杵理人, 松岡豊, 西大輔:集中治療室における急性ストレス障害(ASD)と心的外傷後ストレス障害(PTSD). ICUとCCU2012;36:181-187.
  • (6)古賀雄二, 若松弘也:ICUせん妄の評価と対策:ABCDEバンドルと医原性リスク管理. ICUとCCU2012;36:167-179.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護ケアトップへ