NPWT(局所陰圧閉鎖療法)って何?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「NPTW(局所陰圧閉鎖治療)」に関するQ&Aです。

 

久保健太郎
大阪市立総合医療センター看護部
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

NPWTって何?

 

創部を密閉し陰圧をかける治療方法のことです。従来の方法に比べて早く創傷を治癒させる可能性があります。

 

〈目次〉

 

NPWTとは

NPWT(negative pressure wound therapy)とは局所陰圧閉鎖療法のことで、創部を密閉し陰圧をかけることで治癒を促進させる治療方法です。

 

1990年代に米国で始まった比較的新しい治療方法であり、わが国でも2010年より保険適応となるとともにNPWT専用装置が上市され、現在ではV.A.C.治療システムやRENASYS創傷治療システムなど(図1)を用いて行われています。

 

V.A.C.(バック)療法という呼び方も浸透していますが、正確にはV.A.C.治療システムを使用した場合にのみそう呼びます(図2)。

 

図1NPWT専用装置の例

V.A.C.の作用機序

NPWT専用装置の例

 

NPWT専用装置の例

 

 

図2V.A.C.の作用機序

V.A.C.の作用機序

 

(写真提供:ケーシーアイ株式会社)

 

NPWTの理論と適応

NPWTの作用機序は、

 

  1. 創縁を引き寄せて創収縮を促進
  2. 過剰な滲出液を除去することで適切な湿潤環境を保つ
  3. 陰圧による物理的刺激により肉芽形成や血管新生の促進
  4. 吸引による細菌量の減少
  5. 陰圧による局所血流量の増加

などによって治癒が早まるといわれています(1)。

 

NPWTの適応は、静脈性下腿潰瘍、外傷、褥瘡糖尿病性潰瘍、術後離開創などがあります(2)。NPWTのエビデンスとしては、数百の論文でさまざまな創傷に対する有効性(治癒率の早さや合併症の少なさ、医療コストの削減など)が報告されており、特に糖尿病性潰瘍では十分な根拠があり推奨されています(他の創傷に関しても有効であると考えられていますが、決定的な根拠に欠けています)(3)。

 

NPWTの実際

NPWTを有効に使用する最大のポイントは、「効果的な時期に開始すること」です。というのも、NPWTの使用期間(保険適応)は3週間まで(必要と認められれば4週間)と決められているためです。

 

では効果的な開始時期とはいつでしょうか。それは感染が制御され、創底の壊死組織が少なくなってきたときです。また下腿潰瘍に使用する場合には血流の評価を必ず行い、虚血肢の場合は血行再建術を先行させたほうがよい場合があります。

 


[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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