気管切開患者の酸素療法はどうするの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「気管切開患者の酸素療法」に関するQ&Aです。

 

露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)

 

気管切開患者の酸素療法はどうするの?

 

酸素流量が3L/分以下であれば、人工に低流量システムを接続します。
酸素流量が4L/分以上であれば、高流量システムを用いて加温加湿します。

 

〈目次〉

 

気管切開患者の酸素療法

気管切開患者は、上気道がバイパスされているため、必ず加温加湿が必要になる。

 

方法としては、酸素療法における加温加湿か、人工鼻の装着のどちらかであり、酸素流量によっていずれかを選択する(図1)。

 

図1気管切開患者における酸素療法の選択

気管切開患者における酸素療法の選択

 

酸素流量3L/分以下のとき

酸素流量3L/分以下のときは、人工鼻を装着し、横から低流量システムで酸素を接続する(図2)。

 

図2人工鼻装着時の酸素投与方法

人工鼻装着時の酸素投与方法

 

人工鼻は、軽量で死腔が少ない。その反面、人工呼吸器用よりも加湿率が低いため、乾燥した酸素を投与すると、分泌物がより乾燥しやすくなるため注意する。

 

酸素流量4L/分以上のとき

酸素流量4L/分以上のときは、高流量システムを用いて加温加湿を行い、トラキマスクまたはトラキTアダプター(Tピース)を用いて気管切開孔に当てる。

 

上気道バイパス時は、加湿だけでなく、加温も必要になる。その際は、ヒーターを使用して加湿水を加温する。酸素への加温加湿時は、相対湿度が減少しないように、室温を温める、蛇管を短くするなど、蛇管を冷却させない工夫が必要となる。

 

Tピース使用時は、必ず蛇管1節分(60mL程度)を装着し、リザーバーとする必要がある。これを装着しないと、室内気を吸い込んでしまい、酸素濃度・加湿率が下がる(図3)。

 

図3Tピース使用時の酸素投与方法

Tピース使用時

 

 


[文献]

  • (1)田勢長一郎:酸素療法・酸素療法の適応と中止.丸川征四郎,槇田浩史 編,呼吸管理・専門医にきく最新の臨床,中外医学社,東京,2003:58-60.
  • (2)瀧健治:呼吸管理に活かす呼吸生理 呼吸のメカニズムから人工呼吸器の装着・離脱まで.羊土社,東京,2006:95.
  • (3)Kallstrom TJ. AARC Clinical Practice Guideline:Oxygen thrapy for adults in the acute care facility-2002 revision & update. Respir Care 2002; 47: 717-720.
  • (4)宮本顕二:インスピロンQ&A「より安全にお使い頂くために」 Q10.日本メディカルネクスト株式会社.(2014年11月18日閲覧).

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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