麻酔が切れなくても、 鎮痛薬を投与していいの?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「鎮痛薬の投与間隔」に関するQ&Aです。
嵐大輔
大阪市立総合医療センター麻酔科医長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
麻酔が切れなくても、鎮痛薬を投与していいの?
大丈夫ですが、鎮痛薬の投与間隔は守ってください。
〈目次〉
痛みがなくても鎮痛薬を投与してもいい?
ひと昔前までは手術したのだから痛いのは当たり前という考えでした。しかし、痛みは交感神経を興奮させることで心臓に負担をかけ、呼吸が浅くなることで呼吸器系合併症を増やし、消化管の動きが悪くなることでイレウスを起こします。さらに痛みによる不安や恐怖は精神的にも負担になります。また、痛みはそれ自体が痛みを引き起こし、悪循環となります(図1)。
痛みを取り除くことは、さまざまな合併症を減らし、痛みの悪循環から逃れるためにも非常に重要です。
ここで痛いときに鎮痛薬を投与するのは当たり前として、痛くなる前に投与してよいのかという問題がでてきます。
結論としては問題ありません。患者が痛みを訴える前に鎮痛薬を投与(予防鎮痛といいます(1))することで鎮痛効果が上がるというデータがあります(2)。実際、患者が痛みを感じてから鎮痛薬の効果が得られるまで結構な時間がかかります。ナースコールを受けた看護師が医師の処方で鎮痛薬を準備し、さらに薬が効くまでに時間がかかります。痛みを感じる前に鎮痛薬を投与すれば、この痛みは防げるはずです。
ただし、すべての鎮痛薬に副作用があります。鎮痛薬を過量投与すると副作用が起こりやすくなります。痛みが生じる前に鎮痛薬を投与するのは大事なことですが、添付文書に記載されている投与間隔は必ず守る必要があります。
鎮痛薬の投与のポイントは?
鎮痛薬を投与するタイミングをあらかじめ決めるとよいでしょう。処置の前や寝る前に鎮痛薬を投与すれば予防鎮痛ができ、非常に効果的です。痛みがあるけれど鎮痛薬を投与してからあまり時間がたっていないという場合は、別の種類の鎮痛薬を投与する方法もあります。2時間前にNSAIDsを投与してまた痛みが出てきてしまったとしたら、鎮痛薬の種類を変えて、ペンタゾシンを考慮してみましょう。患者に痛みを感じさせないような投与のタイミングを考えてあげてください。
[文献]
- (1)Katz J, Clarke H, Sellzer Z. Review article Preventive analgesia:quo vadimus?. Anesth Analg 2011;113:1242-1253.
- (2)松永万鶴子:上腹部手術における術中硬膜外ブ ロックの術後鎮痛効果.ペインクリニック 1997; 18:47-53.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社