ドレーンチューブ(ドレーン) | ドレーン・カテーテル・チューブ管理
『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はドレーンチューブ(ドレーン)について説明します。
加藤正人
伊豆七海会熱海所記念病院外科
Point
- ドレナージをする際、体内に挿入、留置する管をドレーンチューブ(ドレーン)といい、周術期管理で重要な役割を果たす。
- ドレーンには、構造上、主に「フィルム型」「チューブ型」「マルチスリット型」「サンプ型」の4種類がある。
- 各ドレーンの形状・特性を理解し、目的に応じて適切なドレーンを選択・使用することが重要である。
〈目次〉
ドレナージとは
ドレナージ(drainage)とは、腹腔内、胸腔内や創傷部に貯留した血液、リンパ液、消化液、膿汁、滲出液などを体外へ誘導、排除することである。その歴史は古く、Hippokratesの時代から膿胸や腹水の治療的ドレナージが行われてきた。
ドレナージをする際、体内に挿入、留置する管をドレーンチューブ(ドレーン)という。
19世紀後半にSimsらが婦人科手術でドレーンを用いて以来、ドレナージは個々の疾患に対する成否を含め、周術期管理の重要な役割を果たしている。
ドレーンの種類
ドレーンの材質としては、「組織反応が少ない」「柔軟性・耐久性にすぐれている」「抗血栓性で、管腔内が凝血塊などで閉鎖しにくい」ものが要求される。
種類は大きく以下の4種類に分類される(表1)。
1フィルム型(図1)
主に情報・治療的ドレナージを目的とする、開放式ドレナージで用いる。
毛細管現象を利用し、皮下や体内に貯留した液体をドレナージする。
2チューブ型(図2)
予防的・治療的ドレナージを目的に使用する、管状のドレーンである。
主に腹腔内、胸腔内のドレナージに用いる。
素材はゴム、シリコン、シリコンおよび塩化ビニルの合成などがある。
3マルチスリット型(図3)
主に情報・治療的ドレナージを目的とし、低圧持続吸引システムと接続することにより、持続吸引が可能である。
ドレーンにスリットが入っており、組織を巻き込みにくい。
4サンプ型(図4)
予防的・治療的ドレナージを目的に使用する。
閉塞しにくく、粘稠性の高い排液が予想される場合に用いる。
2腔型(ダブルルーメン)、3腔型(トリプルルーメン)があり、持続洗浄も可能である。
一方の腔から外気を導入し、他方の腔から排液する(サンプ効果)。
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ドレナージは術後患者の短期予後を左右する重要な手技で、適切なドレナージで難を逃れたという経験をもつ外科医は多い。各ドレーンの形状・特性を理解し、ドレナージの目的に応じて適切なドレーンを選択し、使用することが重要である。
[引用・参考文献]
- (1)Robinson JO.Surgical drainage : an historical perspective. Br J Surg 1986;73(6):422-426.
- (2)井上昌也:ドレーンの種類と目的別使用法.外科2014;76(7):710-714.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社
[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社