不眠はなぜ起きるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「不眠」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
不眠はなぜ起きるの?
不眠を引き起こす原因は様々です。騒音や寝具、気温、採光など環境の悪さが不眠を引き起こすこともありますし、痛みやかゆみ、発熱、呼吸困難など身体的な要因が原因になることもあります。また、ストレス、不安、抑うつなど精神的な要素も、睡眠に影響をおよぼします。
ストレスを例に不眠の機序を勉強してみましょう。
大きなストレスを感じているとき、あるいは精神的な緊張や不安、恐怖などがあるとき、これらの情報は脳幹網様体(のうかんもうようたい)や視床下部から大脳皮質に届きます。すると、大脳はどんなストレスなのだろうと、記憶回路を働かせて判断しようとします。すなわち、本来なら睡眠に向かっていくはずの大脳が、覚醒した状態になってしまうのです。
さらに、ストレス刺激が強いとアドレナリンやセロトニンの分泌が促進されます。アドレナリンやセロトニンは、分泌が減少すると睡眠に傾き、分泌が増加すると覚醒に傾くという作用があります。これらのホルモンが脳幹網様体や視床下部の調節機構に作用すると、大脳皮質の活動はさらに高まります。まさにダブルパンチが大脳に加えられるのです。
大脳皮質が覚醒していると、眠れないという気持ちが新たなストレスになり、不眠の悪循環を生むこともあります。
MEMO不眠のパターン
不眠には寝つきが悪くなるパターン(入眠障害)や、夜中に何度も目が覚めてしまうパターン(途中覚醒)があります。眠りが浅くて熟睡感がない、早朝に目覚めてしまうといった場合や、睡眠時無呼吸症候群のように、睡眠が何度も中断されているにもかかわらず、本人が不眠と気づかないこともあります。
MEMO睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠中に、無呼吸(呼吸に伴う換気が10秒以上停止した状態)が1時間あたり5回以上、あるいは7時間に20回以上ある場合を睡眠時無呼吸症候群といいます。睡眠中に一時的に目覚めるため昼間に眠気に襲われ、仕事に支障をきたしたり、居眠り運転による事故を起こすこともあります。
MEMO脳幹網様体
刺激を視床に伝える役目をもつ網の目状の神経細胞ネットワーク。大脳皮質に影響を及ぼし、意識水準の調節を行います。
※編集部注※
当記事は、2018年5月21日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版