脳に有害な物は入り込まないの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「血液脳関門」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
脳に有害な物は入り込まないの?
血液は、酸素やグルコースなどの栄養素を細胞に供給する大事な経路ですが、細菌、化学物質、抗原、抗体など、身体に有害な影響を与える物質が含まれていることがあります。こうした物質が脳内に入り込むことを防ぐ装置があります。それが神経細胞と毛細血管の間にある血液脳関門です。
血液脳関門は一種のフィルターのようなもので、ここで有害物や不要物が厳重にチェックされ、グルコースなどの選別された物質だけが脳の神経細胞に送られるようになっています。
脳以外の臓器の細胞では、毛細血管からしみ出た組織液と細胞の間で、直接、物質のやり取りが行われています。
しかし、脳の場合は直接のやり取りができないように、中間にアストロサイト(星状膠細胞)という細胞が介在します。アストロサイトは検疫所のような役割を果たし、紛れ込んだ粗悪品や有害物を厳重にチェックするシステムがつくられているのです。
アストロサイトは、毛細血管の周囲にヒトデのように腕を伸ばして取り付き、不要物と必要物を選別してから、神経細胞に酸素と栄養分を送り込んでいます。その結果、脳内には、この商品は折り紙つきですと認められた物質しか流通しないことになります。
血液脳関門は、毛細血管の内皮細胞の間隔が極めて狭いですが、アルコール、カフェイン、ニコチン、抗うつ薬などは通過します。また、脳炎や髄膜炎のときは血液脳関門の働きが低下します。
※編集部注※
当記事は、2017年12月4日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版