低流量システムと高流量システムは、 どう違うの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「低流量システムと高流量システム」に関するQ&Aです。

 

露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)

 

低流量システムと高流量システムは、どう違うの?

 

酸素ガスの供給量が、患者の一回換気量より多いか少ないかが違います。
低流量システムは酸素ガスの供給量が一回換気量より少ないもの、高流量システムは酸素ガスの供給量が一回換気量より多いものをいいます。

 

〈目次〉

 

吸気流量

健常成人は、1回に約500mLの空気を、約1秒で吸入している。このときの吸気流速は500mL×60秒=30L/分となる(表1)。

 

表1吸気流量(L/分)

 

▪ 成人平均一回吸気量:500mL
▪ 一回吸気時間:1秒
▪ 吸気流量:500mL/秒
▪ L/分単位:30L/分

 

酸素ガスの供給量が、30L/分以下のものが低流量システム、30L/分以上のものが高流量システムである。

 

低流量システム

酸素ガスの供給量が30L/分以下の場合、不足分の吸気は、マスク周囲から流入する室内気によって補われる。(図1)

 

低流量システムの場合、FIO(吸入気酸素濃度)は吸入した外気量に左右され、同じ酸素流量でも患者の呼吸パターンによってFIOが異なる。

 

図1低流量システム

低流量システム

 

高流量システム

高流量システムはベンチュリー効果(高速で流れる流体がまわりの物を引きつける効果)を利用することで、酸素と空気を混合し30L/分以上の高流量をつくり出す。(図2)

 

高流量システムの場合、患者の呼吸パターンに左右されず、安定したFIOが得られる。

 

図2高流量システム

高流量システム

 


[文献]

  • (1)田勢長一郎:酸素療法・酸素療法の適応と中止.丸川征四郎,槇田浩史 編,呼吸管理・専門医にきく最新の臨床,中外医学社,東京,2003:58-60.
  • (2)瀧健治:呼吸管理に活かす呼吸生理 呼吸のメカニズムから人工呼吸器の装着・離脱まで.羊土社,東京,2006:95.
  • (3)Kallstrom TJ. AARC Clinical Practice Guideline:Oxygen thrapy for adults in the acute care facility-2002 revision & update. Respir Care 2002; 47: 717-720.
  • (4)宮本顕二:インスピロンQ&A「より安全にお使い頂くために」 Q10.日本メディカルネクスト株式会社.(2014年11月18日閲覧).

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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