PEEP・プラトーは、なんのために使うの?|人工呼吸器の使い方

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「PEEP・プラトー」に関するQ&Aです。

 

春田良雄
公立陶生病院臨床工学部技師長

 

PEEP・プラトーは、なんのために使うの?

 

PEEPは、呼気時に肺胞虚脱を防ぎ、気道を開放するために使います。
プラトーは、膨らみにくい肺胞にも均等にガスを入れるために使います。

 

〈目次〉

 

PEEP(呼気終末陽圧)とは

  • PEEPは、呼気終末時に気道内を設定した陽圧にすることにより、呼気時に肺胞が虚脱するのを防ぐ。また、FRC(機能的残気量)の増加や気道の閉塞を解除する効果もある。
  • 虚脱した肺胞を膨張させたり虚脱させたりすると、肺の損傷を起こす可能性が高くなる。そこでPEEPを使うことにより、呼気時に肺胞の虚脱を防ぐと同時に虚脱していた肺胞にガスが入ってガス交換能がよくなり、酸素化能を改善する。
  • PEEPには副作用があり、①心拍出量の低下、②肺の圧損傷、③尿量の減少、④圧の亢進に注意しなければならない。

図1PEEPの働き

PEEPの働き

 

プラトーとは

  • プラトー(plateau)とは、人工呼吸器が、吸気終了時に吸気弁と呼気弁を設定した時間だけ閉鎖し、気道内圧を高いまま一定に保つことである。EIP、休止時間(pausetime/ポーズタイム)、inspiratoryhold(インスピラトリーホールド)ともいわれる。
  • 多数ある肺胞は、それぞれの肺胞で膨らみやすさが異なる。肺胞の膨らみやすさは時定数で表され、時定数が小さいほど肺胞は膨らみやすく、時定数が大きいほど膨らみにくいことを示す。
  • プラトーを使用すると、膨らみやすい肺胞から膨らみにくい肺胞へガスが移動するため、吸気ガスの不均衡分布が改善し、ガス交換効率が向上する。

図2プラトーの原理

プラトーの原理

 

プラトーと肺コンプライアンス

  • 肺コンプライアンス(膨らみやすさ)には、静肺コンプライアンスと動肺コンプライアンスがある。
  • 静肺コンプライアンスは、人工呼吸器下で、呼気回路を遮断して気流を停止させたときのコンプライアンスである(図3)。プラトー圧を用いた以下の式より算出できる。
    静肺コンプライアンス(mL/cmHO)= 一回換気量/プラトー圧
  • 動肺コンプライアンスは、吸気から呼気に移行するときの圧から求められるコンプライアンスである。静肺コンプライアンスに気道抵抗が因子として加わる。

図3静肺コンプライアンス

静肺コンプライアンス

 

略語

 

  • PEEP(positive end expiratory pressure ventilation):呼気終末陽圧換気
  • FRC(functional residual capacity):機能的残気量
  • EIP(end-inspiratory pause):吸気終末休止

 


[文献]

  • (1)Brander L, Slutsky AS. Assisted spontaneous breathing during early acute lung injury. Crit Care 2006; 10: 102.
  • (2)Boles JM, Bion J, Connors A, et al. Weaning from mechanical ventilation. Eur Respir J 2007; 29: 1033- 1056
  • (3)Thille AW, Rodriguez P, Cabello B, et al. Patient– ventilator asynchrony during assisted mechanical ventilation. Intensive Care Med 2006; 32: 1515–1522.
  • (4)Gilstrap D, Maclntyre N. Patient-ventilator interactions. Implications for clinical management. Am J Respir Crit Care Med 2013; 188: 1058-1068.
  • (5)Imanaka H, Nishimura M, Takeuchi M, et al. Autotriggering caused by cardiogenic oscillation during flow-triggered mechanical ventilation. Crit Care Med 2000; 28: 402–407.
  • (6)Tobin MJ, Jubran A, Laghi F. Patient-ventilator interaction. Am J Respir Crit Care Med 2001; 163: 1059–1063.
  • (7)Checkley W, Brown R, Korpak A, et al, Effects of a clinical trial on mechanical ventilation practices in patients with acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 2008; 177: 1215-1222.
  • (8)Scheinhorn DJ, Chao DC, Stearn-Hassenpflug M, et al. Outcomes in post-ICU mechanical ventilation: a therapist-implemented weaning protocol. Chest 2001; 119: 236-242.
  • (9)日本集中治療医学会ICU機能評価委員会:人工呼吸関連肺炎予防バンドル 2010改訂版. (2014年11月18日閲覧).
  • (10)Meyers TR, Maclntyre NR.Respiratory controversies in the critical care setting. Does airway pressure release ventilation offer important new advantages in mechanical ventilator support?. Respir Care 2007; 52: 452-458.
  • (11)Habashi NM. Other approaches to open-lung ventilation: airway pressure release ventilation. Crit Care Med 2005; 33: S228–240.
  • (12)Andrews P, Habashi N. Airway pressure release ventilation. Curr Probl Surg 2013; 50: 462-470.
  • (13)山本信章 : 呼吸管理機器おたすけパーフェクトBOOK. 呼吸器ケア 2011; 119: 43-50.
  • (14)佐藤敏郎 : 呼吸管理機器おたすけパーフェクトBOOK. 呼吸器ケア 2011; 119: 51-70.
  • (15)髙大二郎, Sinderby C, 中村友彦, 他:Neurally adjusted ventilatory assis(t NAVA). 人工呼吸 2012;29:Web版. (2014年11月18日閲覧).

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護ケアトップへ