主膵管拡張のエコー像
画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
[前回の内容]
今回は、「主膵管拡張のエコー像」についてのお話です。
加藤真吾
(横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科)
膵癌の予後の悪さはわかってもらえましたか?
診断も治療も本当に難しい癌なので、主膵管の拡張を見つけることは大切なことなんです。
拡張した主膵管って、どのぐらい拡張した状態のことなんですか?
確か膵臓って、他の消化器の組織と比べても小さかった気がします。
膵臓の大きさは、一般的な日本人の成人で、長さは約17cm、幅は約4cm、厚さは約2cm程度です。
主膵管は、この大きさの膵臓の中を通っているのでとても細い管です。
拡張した主膵管がどの程度の大きさなのか、ここでしっかりとみていきましょう。
〈目次〉
主膵管拡張のエコー像
主膵管は、計測すると3mm未満の非常に細い管です。しかし、いくつかの要因によって、主膵管が閉塞し、管の内圧が上昇すると、主膵管が拡張します。
一般的に、計測して主膵管が3mm以上の場合は、「主膵管の拡張あり」と診断します。
まずは、主膵管の拡張がない正常な画像を紹介します(図1)。
図1主膵管の拡張がない例
次に、主膵管が拡張しているエコー像とCT像を紹介します(図2、図3)。
図2主膵管の拡張がある例
図3主膵管が拡張しているCT像
エコー検査の準備
主膵管拡張を見るための検査は、基本的に、他の検査を行っている過程で見ます。このため、この検査を目的とした準備はありません。
エコー検査の準備は、他項目と同様で、表1の①~⑤の準備を行いましょう。
表1検査前に準備すべきこと
① | 患者さんに仰臥位で寝てもらいます。 |
② | エコー機器を患者さんの右側、頭側に設置します。 |
③ | 服にゼリーがつかないように、胸の位置まで服をしっかりとまくり上げます。女性の場合、必要時以外は胸にタオルをかけましょう。 |
④ | 医師がエコー画面を見やすいように電気を消します。 |
⑤ | 検査終了後にゼリーを拭けるようにタオルなどを準備しておきましょう。 |
検査後の片付け
主膵管拡張の評価だけを目的とした検査は通常ありませんので、検査後の片付けは他項目を参照ください。
申し送り時のポイント
主膵管が拡張していない場合は、申し送る必要はありません。主膵管が拡張している場合は、その旨を伝えると良いでしょう。
申し送り例
エコー検査の結果、主膵管が拡張していました。
そのため、膵腫瘍の疑いがあり、膵ダイナミックCT検査が追加となりました。
記録記入時のポイント
主膵管が拡張していない場合は、記録する必要はありません。主膵管が拡張している場合は、記載を残しておくと良いでしょう。
Check Point
- 主膵管拡張は、膵腫瘍を早期発見するための重要な所見です。
- 看護記録には、検査結果(主膵管の拡張の有無)を記載しましょう。
- 主膵管拡張は膵癌を疑う異常所見
- ⇒『初めてのエコー(超音波)検査』の【総目次】を見る
[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科
Illustration:田中博志