脳の中枢が傷つくとどうなるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「脳の損傷による影響」に関するQ&Aです。
[前回]
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
脳の中枢が傷つくとどうなるの?
出血や梗塞、外傷などによって中枢の一部が機能を果たせなくなると、損傷された部分によって言葉が理解できない、言葉が話せない、記憶できない、手足を動かせない、判断することができないといったさまざまな症状が現れてきます。
たとえば、耳から入ってくる音を受け止める聴覚野が損傷を受けると、音がするという情報は入ってくるものの、そこから先へは情報が伝わらないため、音を聞き取ることができなくなります。聴覚野が正常で、その先の感覚性言語野(ウェルニッケ野)が損傷されると、音がしていると感じるものの、音楽なのか言葉なのか雑音なのか、区別できません。
では、聴覚野や知覚性言語中枢が正常でも、運動性言語野(ブローカ野)が損傷されるとどうでしょう。
言葉や音楽を聴き取ることができ、言葉の意味することがわかり、それに対する返事も用意できているのに、実際に舌や筋を動かすための指令を送ることができなくなります。そのため、明確に発音できず、あ~、う~といった不明瞭な音になります。
このように、中枢の一部が損傷されると、その中枢の受け持っていた機能が損傷されるだけでなく、連動して働いている機能にまで影響が及びます。
COLUMNウェルニッケ失語とブローカ失語
失語症とは、大脳半球の言語野とその周辺の病変によって起きる症状で、その90%以上は脳出血や脳梗塞などの脳血管障害によって生じます。失語症になると、読む、書く、話す、聞いて理解する、読んで理解する̶など、言葉を通じたコミュニケーションに障害が現れます。
失語症を大別すると、ウェルニッケ失語とブローカ失語があります。
感覚性言語野(言葉を聴いて理解する機能をもつ)が侵されると、話す言葉数が多く、また流暢に話すのですが、意味のある言葉が少なくなります(そのため、何を言っているのか分からなくなります)。これをウェルニッケ失語といいます。
一方、運動性言語野(話すことに対して命令を出す)が侵されると、自分の考えを言葉や文字にすることが非常に難しくなります。これは、外国人の話している内容が何となくわかるが、何か言おうとしても言葉が出てこないという状態と似ています。これをブローカ失語といいます。
※編集部注※
当記事は、2017年11月3日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版