結核が疑われる段階で、部屋を隔離するのはなぜ?
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は結核の感染対策に関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
結核が疑われる段階で、部屋を隔離するのはなぜ?
結核は空気感染によって伝播する疾患であり、患者、医療従事者、家族を介した集団発生を抑える必要があるからです。
結核が疑われる段階での対応
結核は、結核菌を含む微小飛沫核の吸入による、空気感染(飛沫核感染)を感染経路としています。
一方、病院内には糖尿病患者や、悪性腫瘍などに対する治療中、免疫抑制剤服用中、外科手術後、高齢者など、いわゆる易感染状態である患者が多数入院しています。
外来(救急外来を含め)患者や入院患者のなかでも、咳や痰が2週間以上続くような、結核が疑われる段階では、部屋の隔離(一般患者との隔離)やサージカルマスクの着用、あるいは可能であればHEPAフィルターによる空気濾過が可能な陰圧空調個室(空気感染隔離室)が望ましいとされています。
また上記の一般患者との隔離の段階で、すばやい結核菌検査が必要とされ、結核菌塗抹検査と結核菌培養検査、および核酸増幅検査などの検査がありますが、結核菌培養は結果が出るまで時間がかかるため、塗抹検査と核酸増幅検査が迅速性に優れています(核酸増幅検査では検出感度は培養検査にやや劣りますが、数時間で結果が得られ、また結核菌と非結核性抗酸菌との鑑別が可能です)。
結核病床をもたない一般病院を含め、どの病院においても結核患者が受診する可能性があります。
前述したように結核は空気感染によって、患者本人以外にも医療従事者や家族を介した集団発生を来たす可能性もあり、患者隔離を含めた対応が必要とされています。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版