衛生的手洗いを行うのはなぜ?
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は衛生的手洗いに関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
衛生的手洗いを行うのはなぜ?
医療従事者の手指を介した交差感染から患者を守るためです。
〈目次〉
手洗いとは
手洗いには、日常的手洗い、衛生的手洗い、手術時手洗いなどがあります。
- ①日常的手洗い:石けんを泡立て、15秒間ほど手全体をすり合わせ、流水で洗い流す方法です。皮膚表面の汚れ、有機物、通過菌(一時的に付着した細菌)の一部を除去します。
- ②衛生的手洗い:石けんや抗菌石けんを泡立て、15秒間以上両手の表面全体をすり合わせ、流水で洗い流す方法です。皮膚表面の汚れ、有機物、通過菌のほとんどが除去されます。
- ③手術時手洗い:衛生的手洗いを行った後に、アルコール擦式製剤のみで消毒を行う方法(ラビング法)です。以前は抗菌性スクラブ製剤とブラシによるブラッシング法やスクラビング法が行われていましたが、ブラッシングによる皮膚損傷が感染のリスクを増大させる危険性があるとして、現在では手をもみ洗いする方法が行われるようになってきました。最近では、指先のみブラッシングを併用した手洗い法も行われています。
衛生的手洗いとは
医療従事者の手指は病原微生物の伝播媒体の1つです。つまり、石けんを用いた手洗いを正しく行うことで交差感染を防ぎ、医療従事者と患者を感染から防御することができます。
衛生的手洗いとは患者の皮膚や粘膜に触れるケアを行う前、無菌操作を行う前の手洗いのことです。
手指の皮膚表面にみられる汚れを除去するとともに、感染の原因となる有機物や大腸菌および黄色ブドウ球菌などの通過菌を除去し、接触感染を防ぐために行うものです。
2007年にCDC(米国疾病管理対策センター)から勧告された「医療現場における手指衛生のためのガイドライン」では、石けん(または抗菌石けん)と流水による手洗いに加えて、アルコール擦式製剤(速乾性手指消毒薬)によるラビング法を推奨しています。手指が目に見えて汚れている場合を除き、この方法は簡便に確実な除菌を達成できる方法です。
衛生的手洗いの手順
衛生的手洗いの手順は、以下のとおりです(図1)。まず、両手を手首まで流水で十分に濡らし、手のひらに液体石けん(固形石けんは細菌汚染の頻度が高いとされています)をとり、泡立てます。
- ①手のひらと手のひらをすり合わせて洗います。
- ②手の甲をもう片方の手のひらで洗います。
- ③親指をもう片方の手で包み、もみ洗います。
- ④指先をもう片方の手のひらで洗います。
- ⑤両手首を洗います。
- ⑥指を組んで指の間もていねいに洗います。
- ⑦両手の指先を上に向けるようにして、流水で洗い流します。
- ⑧ペーパータオルで水気をよく拭き取り、使用したペーパータオルを用いて蛇口を閉めます。
手洗いが不十分になりやすい部位を知っておくことも必要です(図2)。洗い残しがないように、手全体を洗うことを心がけましょう。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版