注射後、マッサージするのはなぜ?マッサージをしてはいけないのはどういうとき?
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は注射後のマッサージに関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
注射後、マッサージするのはなぜ? また、マッサージをしてはいけないのはどういうとき?
注射後のマッサージは注入した薬液が周囲組織へうまく浸透し血管への吸収を助けるためです。
またマッサージが禁じられているのは、皮内注射後や静脈内への注射後です。
〈目次〉
注射後、マッサージするのは
皮下注射や筋肉内注射では、一般的に注射後同部位を軽くマッサージします。
これは皮下注射の場合、注射した薬液が脂肪や線維性結合組織内に浸透し、多数の毛細血管壁に接し、血管内への吸収を助けるためです。筋肉内注射でも同様に注射した薬液が筋肉内、あるいは筋肉間の結合組織に浸透し、血管への吸収が速やかに行なわれるようにするためです。
マッサージを行なわないで、注射後放置しておくと、薬液が注入部にとどまった状態となり、血管への吸収が遅れ、期待した薬効を得ることができなくなってしまいます。
しかし注入する薬液によっては、マッサージをしてはいけない場合があるので、注意が必要です。
注射後マッサージをしてはいけないのは
一般的にマッサージをしてはいけないのは、皮内注射と静脈内注射を行なった後です。
皮内注射の多くは、ツベルクリン反応やアレルゲン検出などの皮膚反応をみるために行ないます。ですから、皮内注射後に同部位をマッサージすると、免疫反応によって得られた皮膚反応以外に、マッサージによる物理的刺激による血管拡張などの結果として、発赤などの人工的な皮膚反応が加わり、正確な判定が行なえなくなります。
静脈内注射の場合は、当然血管内に直接薬液を注入するわけですから、吸収をよくするためのマッサージは不要です。かえって刺入部血管壁の損傷を増強させ、止血が遅延することになったり、また注射後の同部位からの感染が起こる可能性もあります。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版