SaO2が下がっても酸素濃度をあげてはいけないのは、どんなとき?

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回はCO2ナルコーシスに関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

どんなとき、SaO2が下がっても酸素濃度をあげてはいけないの?

 

Ⅱ型呼吸不全(換気不全型呼吸不全)では酸素濃度を上げることによって、二酸化炭素(CO2)ナルコーシスを引き起こす可能性があります。

 

CO2ナルコーシスとは

進行した肺気腫や胸郭変形、肺結核後遺症、ある種の薬物などが原因となったⅡ型呼吸不全(換気不全型呼吸不全)では、肺胞低換気のために二酸化炭素(CO2)の蓄積状態に陥ります。

 

通常、呼吸中枢は動脈血中のCO2分圧の上昇によって刺激されますが、Ⅱ型呼吸不全では慢性的にCO2上昇の刺激を受けているために、CO2による刺激が鈍い状態となり、酸素分圧(O2分圧)による影響(O2低下で呼吸が刺激される状態)を受けています(表1)。

 

表1二酸化炭素(CO2)貯留の原因

二酸化炭素(CO2)貯留の原因

 

この状態のときにSaO2(動脈血酸素飽和度)の低下に対して高濃度の酸素を投与すると、O2が上昇することによって呼吸は反対に抑制され、慢性的にあったCO2の蓄積がさらに悪化して、高CO2血症による意識障害などの中枢神経障害が起こります。これをCO2ナルコーシスとよんでいますが、この中枢神経障害によってさらに呼吸中枢が抑制されるという悪循環状態も起こります。

 

中枢神経障害としては振戦、痙攣、頭痛傾眠傾向などがみられ、検査所見では呼吸性アシドーシスや高カリウム血症(高K血症)などがみられます。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護ケアトップへ