WPW症候群|PQ間隔が短い心電図(2)
看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。
[前回の内容]
今回は、WPW症候群について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
WPW症候群
ケント束があっても、洞調律の場合はなんの兆候もなく、心電図にデルタ波が見られるだけですが、この副伝導路は発作性上室性頻拍(PSVT)の原因になります。
ケント束を有し、頻拍発作をきたしうる疾患を、発見者の名前にちなんで、WPW症候群(Wolff-Parkinson-White syndrome)といいます。
PSVTとは期外収縮などをきっかけにして、房室伝導とケント束とで、心房心室間を興奮が旋回(リエントリー)する不整脈です(図1)。
心房からの興奮が房室結節からヒス束~脚~プルキンエ線維をいつもの順序で伝導して、その興奮は、心室からケント束を逆方向に伝導して心房を興奮させて(逆伝導)、心房興奮は房室結節から心室へという繰り返しがリエントリーです。
洞調律では、心房から心室へ2つの伝導路で興奮が伝導して、しかもケント束を通ったほうが早く心室に到達しますのでデルタ波ができます。
しかし、PSVT(発作性上室性頻拍)になると、心室への伝導は通常の房室結節、ヒス束~脚~プルキンエ線維ですから、幅の狭いQRS波となり、デルタ波はなくなってしまします。
ケント束は、洞調律とは逆に心室から心房への逆伝導に使われ、心房を下から上に興奮させますから、Ⅱ誘導、Ⅲ誘導、aVFの下方向を陽性にする誘導では、幅の狭いQRS波の直後に陰性のP波が見られます。
ケント束の性質を房室結節-ヒス束と比較してまとめておきましょう。
- 伝導速度が速い:心室に速く到達し、デルタ波をつくる。
- 不応期が短い:高頻度の心房興奮を心室に伝導する。
- 逆伝導がある:心室から心房へも興奮を伝導するので、PSVTの原因となる。
まとめ(洞調律時)
- PQ間隔(P⊿間隔)が3コマ以内に短縮している。
- デルタ波が見られ、QRS幅が3コマ以上になっている。
- PSVTの原因になる。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版