3度房室ブロック(完全房室ブロック)
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看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。
[前回の内容]
今回は、3度房室ブロックについての解説です。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
3度房室ブロック(完全房室ブロック)
「仏の顔も3度まで」「2度あることは3度ある」といいますが、そうです。房室ブロックも3度まであります。
心房から心室への伝導が完全に遮断された状態が完全房室ブロックです。3度房室ブロックともいいます。ヒス束あるいはヒス束より下位の広範な障害で発生します。心室に興奮が来ないわけですから、そのままでは心臓が停止してしまいます。
では、図1の心電図を見てみましょう。
まず全体。QRS波が少ないですね。一見して徐脈です。RR間隔を測って心拍数を計測してみましょう。RR間隔は約67コマ、0.04×67=2.6秒。心拍数は1500÷67=22回/分と高度の徐脈です。ここで、RR間隔がほぼ一定になっていることを覚えておいてください。
次にP波を探してPP間隔を計測してみましょう。
Ⅰ誘導、Ⅱ誘導、aVFで陽性P波、PP間隔は18コマ(0.72秒)で規則正しく出現しています。ところどころQRS波、T波と重なっていますので注意してください。洞調律で、洞結節~心房は0.72秒間隔つまり83回/分で平常どおりに活動しています。
では、PQ間隔をチェックしてみましょう。う~ん、どうも規則性がないですね。バラバラです。そうですね、このP波はQRS波と関連がない、つまり心房興奮は心室に伝導していないのです。これが完全房室ブロックです。
なぜ、関連がないと言い切れるかといえば、心室の興奮周期が、心房の興奮周期と無関係だからです。PP間隔、RR間隔とも規則正しく、一定ですが、別々の周期ですね。これは、心房は洞調律ですが、房室伝導がないために、心室が補充調律になっているからです。このように心房と心室が別々のリズムで興奮していることを房室解離といいます。
房室間の伝導がなくなってしまって、興奮が心室に届かなくなった場合は、心室内、具体的にはヒス束、脚、プルキンエ線維の自動能で心室を興奮させます。このように徐脈によって下位の自動能がペースメーカー機能を果たす調律を補充調律、補充調律による心室の収縮を補充収縮といいます。補充収縮が出ないと心室停止となってしまいます。
これは房室接合部青函トンネルを抜けた後の本州の料金所が、無期限ストライキに入った状態です。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版