高度房室ブロック
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看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。
[前回の内容]
今回は、高度房室ブロックについての解説です。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
高度房室ブロック
“高度”とは、ここでは“重症”という意味で使います。心房の興奮が2回以上連続で心室に伝導しない状態が高度房室ブロック(advanced AV block)です。
図1の心電図で実感しましょう。
まず、全体をざっと見ます。規則正しく幅の狭いQRS波が連続していますが、RR間隔は長いようです。心拍数はRR間隔が33コマですから1500÷33≒45回/分、徐脈ですね。
では、P波はありますか。QRS波に先行してⅠ誘導、Ⅱ誘導で陽性P波があるので洞性P波のようですし、PQ間隔は5コマ=0.16秒です。洞性徐脈でしょうか。
基線をよく見てみましょう。T波の後に小さい波が出ていますね。そうですこれはP波です。さっき確認したP波と比較してみてください。同じ形ですね。ということは、これも洞性P波です。QRS波の前にあるP波とこの孤立するP波は、いずれも洞性P波ですからこの間隔が洞周期になりますね。
計測してみましょう。
16.5コマ(0.64秒)、したがって心拍数は1500÷16.5≒90回/分となります。わざわざ16.5コマとしたのは、心房と心室の心拍数の比が2:1であることを強調したかったからです。
この心電図の場合、心房の興奮は洞調律で、洞性P波・洞性P波・洞性P波・洞性P波・洞性P波・と規則正しく90回/分で繰り返されていますが、房室間は、伝導・ブロック・伝導・ブロック・伝導・ブロック・伝導・ブロック・と2回に1回しか心室に伝えません。したがって、心室は、QRS波・休み・QRS波・休み・QRS波・休み・QRS波・休み・QRS波・休み、と心房の半分の頻度で興奮することになります。
このように、洞性P波が2拍以上連続して伝導しない状態が高度房室ブロックです。P波何拍に対してQRS波が出現するかを伝導比といい、この場合は伝導比2:1ということになります。2:1より悪い伝導比つまり、洞性P波3拍に対して1拍伝導する場合が3:1伝導または、3回に2回ブロックされるので3:2ブロックといっても構いません。
4回に1回なら4:1伝導(4:3ブロック)、5回に1回なら5:1伝導(5:4ブロック)、というわけです。2:1伝導よりも伝導比が悪いものはすべて高度房室ブロックです。
注意すべきは、人体はそう精密なものではないので、同じ高度ブロックでも2:1になったり、4:1になったり変動することがある点です。いずれにしても2拍として連続して伝導しないのが高度房室ブロックです。
このタイプもモビッツⅡ型と同様に、ヒス束以下に器質的障害つまり病的な伝導能障害があるために出現します。完全房室ブロックの一歩手前の状態であるとともに、すでに徐脈となっていてペースメーカー治療の適応となります。
無期限ストライキに入っている本州料金所が、気が向いたときに通過を許可している状態です。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版