心房頻拍|異所性調律から読み解く心電図(2)
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看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。
[前回の内容]
今回は、心房頻拍について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
〈目次〉
心房頻拍
さて、図1の心電図はどうでしょう。
図1心房頻拍(AT)の心電図
異所性のP波がすごい勢いで出現していますね。洞機能のところで勉強したように、洞結節がいくら頑張っても200回/分以上の頻度で信号を出すのは不可能です。
つまりこれは、心房の洞結節以外の部位から高頻度で信号が発生している状態です。頻拍とは心拍数が100回/分を超えた場合であり、洞調律以外の心房の調律による頻拍ですから心房頻拍(atrial tachycardia:AT)といいます。
心房が房室伝導の通過可能な限界を超えて、頻拍になれば、房室結節は心室に興奮を伝導しません。上室性期外収縮の項で勉強したように、あまりに早いタイミングで房室結節に入ってくる興奮は心室に伝導されないのです。この場合はPP間隔は約8コマ(0.04×8=0.32秒)、心房心拍数は1500÷8=188回/分です。
このため房室間は興奮が遅れて通過したり、最後のほうの心房興奮はブロックされたりしています。これは、房室間の伝導が不良なわけではなく、心房の興奮があまりにも高頻度なために房室間の伝導がブロックされているもので、機能性のブロックといってもよいでしょう。
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ここで、「日本列島新聞配達物語」に例えてみましょう。新聞の発行はどうなっているのでしょう。洞結節宗谷岬は沈黙しています。心房北海道内の新聞社が暴走して、すごい勢いで新聞を出し続けています。
心房北海道は不応期が短いため、なんとか配達をしてP波を出し続けていますが、もともと高頻度の命令が苦手な房室結節青函トンネルゲートオジさんは、ときに時間をかけ、ときに命令を無視して心室本州を守っています。房室接合部トンネルを通過して下りてきた新聞は、通常どおり両脚・プルキンエ高速で配達され、QRSは幅の狭い正常型です。
心房頻拍の対処
どんな原因であれ、150回/分以上の頻脈は報告しましょう。心房頻拍は、薬剤や除細動で治療する場合もありますし、房室結節の伝導を抑制する薬剤で心拍をコントロールすることもあります。
心房頻拍のまとめ
- 非生理的な高頻度で異所性興奮が出現し頻拍となる場合を心房頻拍という。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版