呼吸機能を表す記号|呼吸

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

呼吸筋の働き

 

今回は、呼吸機能を表す記号について解説します。

 

内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

Summary

  • 1. 呼吸機能を表す記号は、1次記号(表1)と2次記号(表2)に大別される。
  • 2. 1次記号は分圧など機能に関する量を示し、変数の場合は大文字のイタリック体で書く。
  • 3. 2次記号は1次記号に付随して気体あるいは液体の状態を示し、ローマン体で1次記号の(下付)として書く。
  • 4. 2次記号は、1次記号の内容が気体に関する場合は大文字、液体(血液)に関する場合は小文字という約束がある。

 

〈目次〉

 

呼吸機能に関する物理学的・化学的解析

呼吸機能の検査では、呼吸器系の働きを調べる物理学(力学)的解析および、呼吸に関係する気体および液体の状態を調べるための化学的解析が行われる。このため、呼吸機能検査に関する数値では、体積・容積、圧力、濃度などの単位がよく用いられる。

 

表1呼吸機能を表す1次記号

呼吸機能を表す1次記号

 

表2呼吸機能を表す2次記号

呼吸機能を表す2次記号

(吉岡利忠、内田勝雄編著:生体機能学テキスト.第2版、中央法規出版、2007より改変)

 

濃度と含量の違い

溶質が液体または固体の場合、一定量の溶液中の溶質の物質量を濃度(concentration)といい、通常、溶液1L中のモル(molあるいは mole)で示したモル濃度(molarity)で表す。モル濃度の単位は、mol/Lで、これをMと書くこともある(M/Lと書くのは間違い)。

 

なお、溶質1kg中のモル濃度(質量モル濃度 molality、単位はmol/kg)で示すと、温度および圧力に依存しないという便利さがあり、浸透圧など溶液の物理化学的性質を表すときに使われる。

 

一方、溶質が気体のときは、濃度でなく含量(content)という。通常、溶液100mL中の気体の量(mL)で示し、単位はvol%である。例えば、血液100mL中に存在するO2の量は約21mLであり、この場合、O2含量(酸素容量 oxygen capacity)は約21vol%と表す。

 

STPDとBTPS

標準状態(0°C、1気圧)での乾燥気体(standard temperature and pressure, dry)の体積をSTPDという。酸素摂取量(V()O2)、二酸化炭素排出量(V()CO2)をSTPDで表す。

 

肺活量などの肺気量は、体温(37°C)、測定時の大気圧および37°Cにおける水蒸気飽和状態(body temperature, ambient pressure, saturated with water vapor、BTPS)で表す。

 

1次記号に付くドット

Q()などに付く傍点(ドット)は単位時間(呼吸機能に関しては1分間)あたりの量であることを示す。分時換気量(V()E)、V()O2V()CO2なども同様である。

 

2次記号の大文字と小文字

肺胞気など気体に関する量であることを示すときは2次記号を大文字で書き、動脈血など液体に関する量であることを示すときは小文字で書く。例えば、PAO2は肺胞気O2分圧であり、PaO2は動脈血O2分圧なので、同じA でも大文字と小文字を区別しなければならない。

 

2次記号に付くバー

生体内の組織は代謝のレベルが異なるので、静脈血のO2やCO2分圧が異なっている。

 

各組織からの静脈血が右心房に集まって混合され、平均化されたものが混合静脈血で、2次記号のvに付くバー(v())がそれを示している。

 

なお、血管内でO2やCO2分圧が変化することはないので、動脈血は左心室での値と各組織での値を区別する必要はない。

 

※編集部注※

当記事は、2016年8月23日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

圧力に関係する単位

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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