心理検査|精神科系の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、心理検査について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
心理検査とはどんな検査か
心理をアセスメントするためには、心理検査法と面接法、行動観察などの方法を用いて患者の心理的特徴について情報収集、アセスメントしなければならない。
心理検査法は心理的特徴を測定する検査である。
心理検査の目的
心理検査は、その患者の心身の苦痛、困難、知能、人格、発達がどのようなものであったかを知り、おかれた状況やおかれている集団を理解することで、よりよい援助の方法を選択するために行う。
心理検査にはとても多数の検査方法があり、それらの検査を組み合わせ、多角的に患者をとらえることが必要となる。
心理検査の実際
本項では代表的なもののみを紹介する。
発達および知能を検査するものとしてもっとも用いられるものが Wechsler-adult intelligencescale (WAIS)である。言語性IQと動作性IQを指標とする。全検査IQを個人IQとする。IQ100は、各年齢の総得点の平均であり、その標準偏差は15程度である。
性格・人格検査には、精神障害の鑑別に用いられるMinnesota Multiphasic Personality Inventory(MMPI)やCornell Medical Index( CMI)、自己の性格への理解を調べる谷田部・ギルフォード性格検査(Y-G)などがある。これらは質問紙法のため様々な状況で実施が可能である。データ化することで客観的に評価できる。
また、投影法を用いる検査には、インクのしみを見て何に見えるかを答えてもらい、自己の内面や外界の知覚を知るロールシャッハテスト、刺激語を提示しその後に続く文章を完成させる文章完成法(SCT)、葛藤的場面を見て自分自身の対処法からストレス対処、自我の成熟、社会的規範の内在を調べるP-F人格検査などがある。
心理検査前後の看護の手順
検査前の看護
検査は診断や治療に役立てるものであり、よりよい人間関係を築いていくために自己の特徴を知るためのものであり、評価するものでないことを説明し協力を得る。検査の組み合わせにより差はあるが、一連の検査には丸一日、あるいは日をまたいで検査することになるため、事前に調整をしておく。
検査後の看護
患者の疲労度を把握しねぎらう。患者の病態、認知機能、性格、感情などを総合的にアセスメントし看護ケアに生かす。
心理検査において注意すべきこと
心理検査は、目的の設定から検査の組み合わせ、ラポール、フォローまでの流れを成立させる必要がある。
高度なスキルが必要となり、安易に検査をすべきではない。熟練した医師や臨床心理士と密に連携し適切な検査を適切に実施される必要がある。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版