2018/05/28 のクイズ

80歳代男性のAさんが肺炎で気管挿管され、人工呼吸管理されています。使用している気管挿管チューブの内径は8.0mmでした。あなたはAさんの呼吸器のアラームが鳴っているのに気付き、訪室しました。Aさんはせき込んでおり、気管挿管チューブ内には、少量の黄白色の痰が見えました。聴診器を喉に当てると吸気と呼気でゴロゴロという副雑音が聴取できました。あなたは気管吸引する必要があると判断し、これから気管吸引を行います。以下の中で、最も正しい手技はどれでしょうか?
  1. 1. 気管挿管チューブの経(内径)が8.0mmのため、吸引チューブは14Fr(外径約4.2mm)のものを選択し、吸引を行う。
  2. 2. 気管挿管チューブ内に痰が確認できるため、気管吸引から行う。
  3. 3. 気管吸引は、40秒以上かけて十分に行い、痰が回収しきれるまで行う。
  4. 4. 吸引前に吸引チューブを折り曲げ、吸引圧20kPa(150mmHg)に設定し、吸引を行う。

挑戦者4130人 正解率39%

吸気と呼気でゴロゴロと聞こえる副雑音は、rhonchiといい、太い気管や気管支に痰などの異物がある場合に聞かれます。Aさんのように、気管挿管されている患者さんでこのような副雑音が聞こえたら、気管吸引が必要であると考えます。

1. 気管挿管チューブの経(内径)が8.0mmのため、吸引チューブは14Fr(外径約4.2mm)のものを選択し、吸引を行う。
不正解

吸引チューブのサイズの選択の基本は、気管吸引ガイドラインでは、外径が人工気道の内径の1/2以下のものを使用するよう推奨されています1)。患者さんによって、気管挿管のチューブのサイズは異なるため、サイズの確認を行い、1/2以下のサイズのものを選択します。Aさんの場合、気管挿管チューブの内径が、8.0㎜であることから、吸引チューブは4.0mm以下のもので吸引する必要があります。1Frは、約0.3mmで計算することができるため、10Fr~12Frで吸引するのがよいでしょう。

2. 気管挿管チューブ内に痰が確認できるため、気管吸引から行う。
不正解

吸引チューブが気管内を刺激すると咳嗽反射が起こります。その咳嗽により、口腔内やカフ上部に溜まった分泌物が気管挿管チューブの外側を伝って、気管内に垂れ込み、肺炎を起こす可能性があります。それを防ぐため、まず口腔内の吸引(カフ上部吸引が可能な場合は、そこも吸引を行う)を行って、その後に気管内を吸引するようにしましょう。

3. 気管吸引は、40秒以上かけて十分に行い、痰が回収しきれるまで行う。
不正解

気管吸引ガイドラインでは「1回の気管吸引で、挿入開始から終了までの時間は15秒以内にすることを推奨する。低酸素血症を予防または最小限にとどめるためにも、1回の操作は短時間で終了すべきである」1)とされています。吸引は、無呼吸状態や肺胞の虚脱につながることがあります。また、患者さんにとっても吸引は苦痛や疲労を感じるなど、たくさんのエネルギーを消費してしまいます。そのためにも、手早く効率のいい吸引方法で、患者さんの苦痛を最小限に努める必要があります。

4. 吸引前に吸引チューブを折り曲げ、吸引圧20kPa(150mmHg)に設定し、吸引を行う。
正解

気管吸引ガイドラインでは「推奨される吸引圧は最大で20kPa(150mmHg)であり、これを超えないように設定する。吸引圧の設定は接続チューブを完全に閉塞させた状態で行う」1)とされています。吸引を行う際は、吸引チューブを折り曲げ、完全に閉塞させた状態で、吸引圧を確認して、吸引を行うようにしましょう。また、高い吸引圧は、肺胞の虚脱を招く可能性があるためです。吸引時、粘稠痰が吸引チューブの中をゆっくり上がってくることがあり、吸引圧を上げてしまいがちですが、これは危険です。痰が粘稠である場合は、加湿が不十分であったり、体内の水分量が不足したりしている可能性なども考慮し、尿の性状や量を確認する、加湿の方法を考えるなどして対応することが必要です。

引用参考文献など

1)日本呼吸療法医学会気管吸引ガイドライン改訂ワーキンググループ.気管吸引ガイドライン2013 (成人で人工気道を有する患者のための).人工呼吸.30.2013,75-91.
2)道又元祐監.気管吸引.重症集中ケア認定看護師に聞く やってはいけない!人工呼吸管理50.日本看護協会出版会.2006,76-79.

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