ナースのチカラ~私たちにできること 訪問看護物語~【4-2】

ママナースもも子』でお馴染みの広田奈都美さんが描く、訪問看護師マンガ。

単行本4巻の発売を記念して、月刊誌『フォアミセス』より特別転載でお届けします!

「家に帰りたい」という西田さんの願いに応えた訪問看護師の持田さん。病棟で西田さんをみていた増岡さんの心中は複雑で…。

 

前回のあらすじ

 

 

過去のことを言われた持田さんは、「今…言われてどーせーっちゅーの!!4〜5年前よソレ。4〜5年前といえば、私が30になった頃でステーションん運営に躍起になってた時だわー。30歳の私…あの頃はまだ若くてキレイだったわ。それに嫉妬したのね…。」と前向きな解釈をし始めました。増岡さんは、呆れながら「あんたの状況の話はしてない。彼女はあの後、どうやって亡くなったの?」と聞きました。ふざけていた持田さんも真剣な顔になり、「彼女、景子さんはね。家に帰って真っ先にやった事は…。」と話し始めました。

 

「お茶?」と増岡さんは聞き返しました。持田さんは、「そうよ、お茶入れたの。旦那さんもじっと座って待ってた。夫婦をね、したかったんだって。なぜ家に帰りたかったと思う?」と増岡さんに質問しました。増岡さんが、「…夫婦生活をしたかったから?」と答えると、「そうよ、その通り。」とうなずきました。

 

「だからそこを叶えてあげたかったの。残された時間をとにかく大切に使ってほしかったから。在宅医も変えるようアドバイスしたわ。緩和ケアが必要だったから。景子さんね、麻薬を飲むのに抵抗があって、痛みがひどくてもガマンしちゃう事があったの。唸るほど痛がっててもよ。それは麻薬というイメージで…意識がなくなったり…変になると思ったから。つまり夫婦の会話ができなくなると思ってたのよ。」と説明しました。

 

「だからまず、医療麻薬との違いを説明して、とにかくいいDrにコントロールしてもらうよう勧めたの。それで痛みが落ちついたら彼女…。なんと旅行に行ったの!!」と告げました。増岡さんは驚きのあまり「えーっ!!」と大声をだしてしまいました。続けて「イレウス管入ってて!?腹水あんなで!?点滴してて!?危険じゃない!!」と焦っていいました。でも持田さんは落ち着いた様子で、「そこが在宅なのよ。病棟とは違うの。」と言いました。

 

「病棟では治療できて感染にも注意できるし…つまり寿命は延びる。最後まで闘いたい。方や病院で看てもらいたい人は病棟で亡くなるのを望むだろうけど…。彼女は妻でいることのほうが大事だったわけ。『奥さん』て呼ばれるのが、嬉しいんですって、旦那さんが僕の『奥さん』がねって言うのが嬉しいんだって。だから彼女の望みは、最期は愛する人の側でこの人と結婚できて幸せだと思って死にたいって言ってくれたの。」と景子さん夫婦を思い出して言いました。

 

増岡さんも納得したように、だまって話を聞いていました。「最後の旅行は、日帰りの近場で家族に助けてもらいながら2人で温泉にも入ったんだってすごいでしょ?そんな事できるなんて私も思わなかったけど、家族が宿の人に頼んで皆で協力して貸し切り温泉入ったんだって。その勇気よ!!彼女が彼に残したかったのはそういうものだったと思うの。」と言いました。

 

「最後の一瞬まであなたの奥さんでいれて幸せでしたって、それを体で表現して生きてた。亡くなる3日前はね、なんと夫婦の結婚記念日でワインとケーキでお祝いしたそうよ。それでねー。なんと彼女ケーキを食べてワインも飲んだらしいの。」と持田さんはサラッと言いましたが、増岡さんはまた驚いて叫んでしまいました。「後で吐いたらしいけど。でもいいのよ…残された時間は彼女のものだから…。」と後悔はないといったように言いました。

 

「最後の一瞬までその人らしく生きるってこういうことだと思った。ある日、訪問に行くと夫婦2人でベッドに横になっている時があって。」とまた違う日のことを思い出しました。

 

(しまった…お邪魔だった!!)と入るのを躊躇すると、旦那さんが気付いて「あ…持田さんどうぞー。今ちょっと寝てるみたいで。今日は休みとったんでずっと側にいる約束してて…側にいてもいいですか?」というのでした。持田さんは「もちろん…ごめんなさいね…状態だけ確認させてください。」と断りを入れると、診察をはじめました。

 

診察をするときに、2人が手をつないでいることに気がついた持田さん。「ずっと手を握られてたんですか?」と聞くと、旦那さんは「ハハ…そうです。このくらいしかできないから。あ、さすがにトイレの時は離しますよ」と照れくさそうに言いました。この時の景子さんはもう時々しか起きなくて、旦那さんも会社を休んでいた時期で、文字通り最期の時を過ごしていました。

 

当時のことを思い出して持田さんは、「景子さんは若かったから、ご両親も介護に協力してもらえた。それは大きかった。だから数週間は、泊まって介護してもらえたわ。親子の時間もあった。友人との時間も。」と語り始めました。

 

すべての人が集まって彼女との時間を愛おしんでいました。亡くなったのは朝方だったけど、Drに電話するといつもはもっと遅く来るのに、先生もすぐ来ました。

 

先生は、亡くなった景子さんの表情を見て、「いい顔してるね…。」とぽつりと言うのでした。今までたくさんの看取りをしてきた先生も…今回のケースは思うことがあったようです。ご両親に「先生、娘の化粧した姿を見てってください。」と言われ、残ることにしました。

 

お化粧を施しながら、ご両親は「娘はね、本当にキレイな子だったんですよ。色白でね。生まれた時ピカピカでね…。モデルにスカウトされたこともあって…。2人で新宿歩いた時なんて…何人も声掛けられてね。」「そうだったねー、卒業アルバム見た人が電話かけてきて…
どこに行っても…皆に人気で…明るくてね。太陽みたいな子でね…。」と思い出を話してくれました。

 

 

持田さんは、Drが鼻をすするのをみて、(この先生が看取りで泣くの初めて見た……)と思いました。先生と持田さんは、「このお気に入りのドレスを着せてあげたいの。」「素敵ね。」「新婚旅行の時、着てた服だ。」と景子さんに明るく話すご家族を静かに見守るのでした。

【3】に続く

 

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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