ナースのチカラ~私たちにできること 訪問看護物語~【3-2】

ママナースもも子』でお馴染みの広田奈都美さんが描く、訪問看護師マンガ。

単行本3巻の発売を記念して、月刊誌『フォアミセス』より特別転載でお届けします!

師長から紹介された介護施設で研修中の花は、以前働いた介護施設とのギャップに驚き…

 

前回のお話

 

 

花は、(一日の流れは同じでも何がこんなに違うのだろう。ここの人はよく笑うし穏やかな表情をしてる…。スタッフも穏やかだ。)と前の職場との違いに愕然とし(もしや…)とあることを考えました。「えっ大卒のエリートばかりを採用?全然そんなことないよ!!
高卒の新卒で無資格の人も多数いるわよ。」と師長が言うと、「私もそうよ。ここは高校卒業してから入ったの。」「私なんて何の資格もないわよ…。」とスタッフさんも笑って言いました。

 

別の日、早速花は、前職の同僚の小澤さんに会い施設の研修について相談をしました。小澤さんは、「行ってみたいけど…そんなすごい人達の中で私やっていけないよ。きっと無理……!!」と自信なさげに断りました。「花ちゃんはナースだからいいけど…。私は初任者研修しか受けてないし…そんなすごい人達とやっていけないよ。」と花の意見を聞きません。「すごくいい人達だから大丈夫だよ。」と誘う花に、「花ちゃん…あの人達も最初はいい人達だったんだよ。」というのでした。

 

別の日、早速花は、前職の同僚の小澤さんに会い施設の研修について相談をしました。小澤さんは、「行ってみたいけど…そんなすごい人達の中で私やっていけないよ。きっと無理……!!」と自信なさげに断りました。「花ちゃんはナースだからいいけど…。私は初任者研修しか受けてないし…そんなすごい人達とやっていけないよ。」と花の意見を聞きません。「すごくいい人達だから大丈夫だよ。」と誘う花に、「花ちゃん…あの人達も最初はいい人達だったんだよ。」というのでした。

 

「ユキさんてわかる?あの人…昔はあんなじゃなかったの…。元々 元気で荒っぽいところはあったけど。今はいないけど、昔 すごいクレーマーの家族がいて、やることひとつひとつにクレーム入れたりされたの。皆で所長に言っても聞いてくれなくて、そのうち…(自分が家で看れないから私達が看てるのに、嫌なら自分でやれば良くない?)と言うようになってきたの。」

 

その頃から雰囲気悪くなり、クレーマーの家族が怒鳴って、食べ方の資料を読むよう強要してきたり…。みんな(こんなの全部やってられない。食事に40分なんてかけられないよ…。スタッフ数人で20人位みてるのに…この人にかかりきりになれないよ…)と不満を持つようになりました

 

所長に言っても「今月のノルマが果たせないって本部に怒られてるんだよ…介護度の高い人はやめさせたくないんだよね。」と話も聞いてくれませんでした。一日にトイレに何回も行くので家族が困り果てて入所させた人が、転んで骨折してしまった時は、「何のために施設に預けたと思ってるの!?転ばないよう見ててって言ったでしょ!?言ったわよね!?」とひどく責められました。

 

あんな強い言葉を一般の普通の人がぶつけてくる。そんなことが続くと「私達ってさ何なんだろうね。見下されてるよね…人として見られてない気がする。」とスタッフが話すようになりました。別の介護士も「そうだよなー。俺もこの間ウンチだらけにしてた人 風呂入れたんだけど、いうこときかないし臭いしで腹立つし暴れるしで…なのにそいつがもらってる年金が俺の給料より良かったりして。」

 

「俺って何なんだろうって思っちゃった…。俺ね、大学出ても就職先なくて それで介護の仕事始めたんだけど。彼女より給料少なくて結婚できないの……まだ…。奨学金返し終わってないんだ。」とつぶやくのでした。そんな姿を思い出し、小澤さんは「なんか皆…それぞれ疲れ切っていたんだと思う。それから暴言はいたり雑に扱ったり…が多くなったの。」と言いました。

 

「自分達のこと大切に扱ってくれないのに、なぜ自分達が大切にしなきゃならないのか…っていうことよく言ってた。…私、その気持ち少しわかるの。」とうつむいて答えるのでした。小澤さんの気持ちを聞いて、花は(これが…師長さんの言ってたことか。介護も看護もキレイじゃない。患者さんだけじゃない。私達だって傷ついてる)と感じた花なのでした。

 

(あーなんかキツイ話きいちゃったなーなんか…先輩達に話聞いてもらいたいなー。)と思い立ち、連絡をしようと考えました。(そもそも2人で飲んでるところに入れてくれる?どんな話してるだろう?)と悶々と考えるとまどろっこしくなって、思い切ってメールをするのでした。

 

花からメールをうけた持田さん。電話とうけると「アラ花?めずらしいどうした?またいじめられたの?」とすぐさま花へ電話をかけました。さらに「2人で飲んでますか?って飲んでねーよ!!いつも私が飲んだくれているような印象操作やめて!!」というと、「なんだ…また愚痴?酒買ってきたら聞いてやる。」というのでした。

 

しばらくして、「カフェにでもいるかと思いきや…仕事場じゃないですか!!どんだけ仕事好きなんですかお2人は!!」と花は大きな声をあげました。持田さんは悪びれもせず「私は好き!この仕事が好きだと自負してる。あんたもそうでしょ?」というと、馬渕さんいもふりました。

 

花が「2人とも何やってたんですか?」と聞くと、「合同勉強会の資料作り。あと市民講座のパンフ。合同勉強会はうちが主催だから案内から会場押さえやもろもろ…終わんないねぇ…。」と2人は答えました。花も2人を手伝いつつ、先日あったことを聞いてもらうことになりました。花の話を聞き終わると「ふ~ーん。……なるほどねぇ。…介護施設もいろいろだから…。」と持田さんは答えました。

 

「でも人って…ほんのささいなことで心が折れておかしくなるものじゃない?その理屈でやられたほうはたまらないわよ!!師長がよく言うんだけど…(一皮むけばみな汚物)」と師長の言葉を思い出して言いました。

 

「自分は正直者で優しいって思っている人間は思い上がってるって。立場や境遇が変われば 言動も変わりうるって。私達もこの好きな仕事して、人を助けたって満足してるのは健康で恵まれているからよ。貧乏で知恵のない家に生まれてたらナースになってなかったかもしれない…はたまた親の支配下にあっていたらなっていなかったかもしれない。過去にひどい虐待を受けていたら?戦争中だったら?私達の正しさや優しさは果たしてその時も持ち続けられるのか…。」

 

「だから、せめていつも私が思うのは傲慢になって人をたたくのはやめようって思ったの。立場が変わって私がその人になったら絶対やらない確信はないもの。」と答えるのでした。持田さんの話を聞いて、(私も自分の正義で人を裁いていたかも)と思う花なのでした。翌日研修先でのこと。

 

【3】に続く

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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