“間違い”のワケ|〈マンガ〉モンスター患者~みんなが困り果てた金田さんのこと~【7】

「間違ってると思いつつ、それ以外に方法がなかった…」その選択を持田さんが“間違ってる”と言い切るワケは?

(▶これまでのお話

 

マンガ・モンスター患者~みんなが困り果てた金田さんのこと~

Vol.7 “間違い”のワケ

困った患者さんとの出来事を話した私は、持田さんは「あなたのしたことは間違ってる。」とはっきり言われてしまいました。

 

『やっぱり私…間違ってた…そんな気がしたけど。』とどこか納得しつつも「どこが一番問題でしょうか。」と質問しました。すると持田さんは、「その人の気持ちを理解してなかった。あなたは自分の中の正義で相手を見てしまっている。」さらに、「その人にしてみたら、誰がなんと言おうと正しいんだもの。」と答えましたが、私は理解できませんでした。

 

『やっぱり正しいことと間違っていることはあると思う。人を傷つけてはいけない、とか持田さんの理屈でいくと私達が受けた言葉の暴力は許さなくてはならないのか…』と、金田さんとのやりとりを思い出しながら戸惑いました。持田さんは、「自分の正しさで人を見ると、見失うものがあるのよ…。」と続けて言いました。

 

「それは、なぜその人はそんなことを言うのか?という視点よ。」と続けた持田さんに、『それなら何度も何度も考えた…』と思いながら、「…かなりの立場にいた方が自由を失って、さぞ辛いだろう、思い通りにいかずイライラしているんだろうな…。」と自分の考えを伝えました。すると、持田さんは「そこじゃない。『なぜそういう反応ではならなかったのか』という視点なのよ。」と言い切りました。

 

「え?」と聞き返す私に、「だって、同じ状況でも違う反応になる人はいるわけでしょ?泣いたりめそめそしたり無気力になったり、逆に明るくなる人もいるでしょう?」「なぜその人は、そんな反応をしたの?」と持田さんは言いました。『その通りだ…なぜ金田さんはあぁまで暴力的なのか…。』私は思いをめぐらせながら、「高圧的な態度しかとれないから…では?」と考えを伝えます。

 

「つまり…?」と深掘りする持田さんに、「今まで人の上に立つことが多く…支配的なコミュニケーションでしか人とつながれない…。」とつぶやきながら、金田さんを思い出し、『あぁ…そうか…そうだった…。』とその答えに気付かされました。

 

持田さんはまっすぐ私を見つめ、「私もそう思うわ。」と言いました。私は、自分がしたこと、偏った考え方を悔い、『あぁ私…何が正義だ!!何がナースだ!!何も…何もわかってないしできてない。』と下を向くことしかできませんでした。

 


【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

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