転職先として、20代~30代の看護師さんから人気の高い美容クリニック。「夜勤がなく、残業も少ないのに給料が高い」イメージもありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
美容クリニックで働く看護師の仕事内容や働き方について紹介します。
目次
美容クリニックで働く看護師の仕事内容・役割
美容クリニックとは、美しくなることやアンチエンジングを目的とした「美容医療」に特化した医療機関。
その種類は大きく分けて2つあります。シミ・ホクロの除去や脱毛など、皮膚に関する施術を扱う美容皮膚科と、二重整形や豊胸手術といった外科手術を伴う美容外科です。
看護師自身が施術を行う
美容クリニックでの看護師の仕事内容は、下記の通りです。
〈美容クリニックの看護師の主な仕事内容〉
- 医師の診療補助
- レーザー装置の操作(レーザー照射)
- ピーリングなどの薬剤塗布
- 美容注射・美容点滴の投与(プラセンタ、ビタミン、アミノ酸など)
- オペ介助(美容外科の場合)
- 術後のアフターケア
- 医療機器・器具の準備や片付け、消毒・滅菌
- 備品・薬剤の管理
- 服薬指導
- カルテ記入
医師の診療補助や備品・薬剤の管理といった一般的な看護業務は、病院や一般クリニックと変わりません。
ただ、美容皮膚科では、看護師自身がレーザー照射や美容注射などの施術を行う点が特徴的。美容外科では、手術におけるオペ介助が看護師のメイン業務になります。
美容皮膚科と美容外科を併設しているクリニックの場合、一人の看護師がどちらの業務も担うところもあるようです。
カウンセリング業務を担うことも
大手のクリニックなどでは、「カウンセラー」「コンシェルジュ」と呼ばれる専門スタッフがいます。初めて来院されたお客さまのヒアリングや施術提案といったカウンセリング業務は、こうした専門スタッフがメインで担当します。
ただ、施術中や前後のケアの際などは、看護師が直接お客さまの要望や相談に対応するシーンも少なくありません。看護師としてお客さまとの対話を大切にしたい、悩みに寄り添ったケアをしたいという方に向いていると言えます。
また、個人経営のクリニックなどでは専門スタッフがおらず、看護師がカウンセリングのほか、受付や電話対応、予約管理などを担当するケースもあります。
営業ノルマやクレーム対応は心配しすぎなくてOK
美容クリニックで働く際に気になる「営業ノルマ」や「クレーム対応」ですが、実際はそれほど心配しなくても良いでしょう。
看護師が営業するように強いられたり、未達成で減給ペナルティが課されたりするような、個人ノルマを課されることはほとんどありません。
一方で、頑張り次第で基本給にプラスする「インセンティブ」を設けている美容クリニックも。多くの美容クリニックでは、クリニック全体での売上目標を立て、スタッフ全員で毎月の目標達成に取り組んでいます。
こうした雰囲気は病棟にはないものなので、ギャップを感じるかもしれません。
また、クレーム対応についても、基本的には電話を受け取る受付やカウンセラーが担います。ただ、施術中やその前後に「痛かった」「効果が出ない」「イメージと違う」といったクレームを、看護師が直接受ける場面もゼロではありません。
とはいえ、その際も1人で解決しなければいけないわけではなく、上司や主任と相談するのが一般的です。
美容医療が手軽に受けられるようになるにつれて、美容クリニックの数は年々増加傾向。美容看護師の採用ニーズも高まっています。
ただ、もともと美容看護師になりたい人が多いことに加え、採用側もクリニックの理念や雰囲気に合う人を採用しようと選考に力を入れているため、採用倍率は高めです。
美容クリニックは「接客サービス業」としての側面も大きく、看護師採用でも「丁寧な接客を任せられる人」など、高いレベルでの接遇スキルが求められます。
美容クリニックで働く看護師の1日
美容クリニックは平日の仕事終わりに利用するお客さまも多いため、看護師の勤務時間は10:00~19:00や11:00~20:00などが一般的です。
シフトが早番と遅番に分かれているクリニックもあります。
【10:00】始業・朝礼・予約確認・機器の準備
朝礼を行い、1日の予約を確認。お客さまの人数や時間帯、それぞれの担当者などをチームで共有します。
朝礼後は、施術のための機器や薬剤の準備も行います。
【10:30】施術・診療補助
予約に沿って、レーザー照射や美容点滴の投与といった施術を行います。施術の合間に医師の診療補助なども行います。
美容外科の場合、オペ介助が入ります。オペの前後には器具の準備や消毒、片付けなどをします。
予約時間の通りに施術が進むよう、スピーディーな対応が求められます。
【14:00】休憩
美容クリニックはランチ帯のお客さまも多いため、休診時間は14:00~15:00など午後遅めの時間が一般的。看護師の休憩もそのタイミングになります。
休診時間を設けていないクリニックでは、交代で休憩を取ることが多いようです。
【15:00】施術・診療補助
午前と同様、施術を中心に行います。
【18:30】事務作業、翌日の準備
片付けやカルテの記入といった事務作業をします。明日の予約を確認し、必要に応じて準備もします。
早番の場合、クリニックの営業終了前に勤務を終えるため、本格的な締め作業などは遅番のスタッフに任せるケースも。
【19:00】終業
キャリアアドバイザー
美容クリニックは基本的に完全予約制で、緊急対応が発生することも稀です。病棟に比べると残業は少ないでしょう。
美容クリニックで働く看護師の年収・給料
美容クリニックは自由診療が中心なこともあり、看護師の年収相場は390万~500万円程度と高め。インセンティブ制度がある場合、人によってはこの金額に数万~数十万円プラスになるケースもあるようです。
夜勤がなく、残業もあまり発生しないのにもかかわらず、病棟と同等のお給料がもらえるのは、かなりの好条件と言えるでしょう。
大手クリニックの場合、相場は420万~520万円とやや高め。小規模クリニックでも500万円超の求人がありますが、施設による違いが大きいようです。
インセンティブ制度とは?
美容クリニックでは、インセンティブ制度が設けられていることがあります。インセンティブ制度とは、業績が良かった場合などに基本給にプラスして、クリニック全体または個人に「報酬」が支給される制度。
クリニック全体で売上目標を達成したときにスタッフ全員に支給されたり、自分の働きかけで新しい予約が取れる・ドクターズコスメが売れるなどしたときに、看護師個人に支給されたりするケースが多いようです。
クリニック・人によっては、月1万~5万円ほどのインセンティブがもらえることも。インセンティブの金額や支給条件はクリニックによって異なるので、事前にチェックしておきましょう。
キャリアアドバイザー
インセンティブの金額は、求人票や雇用条件通知書などの年収額には含まれていないことが一般的です。
ただし「年収◯万円 ※インセンティブ含む」などと記載されているケースもあるので、気をつけて確認しましょう。
ボーナスは少なめか、ないところも
美容クリニックのボーナスは、基本給の2~3か月程度とやや少なめ。大学病院や総合病院から転職した場合、ギャップを感じるかもしれません。
ただし、美容クリニックではその分、基本給が高めに設定されています。業績によって金額が変動するボーナスに比べ「毎月安定して高めの給料がもらえる」と考えることもできるでしょう。
クリニックによっては年棒制を採用しており、ボーナスとしての支給はないところも。この場合も、ボーナス分は基本給に含まれているため、その分月々のお給料は高くなります。
美容クリニックで働く看護師のメリット・デメリット
夜勤がなく残業も少ないのに、お給料が高いとされる美容看護師。デメリットはないのでしょうか?
美容クリニックで働くメリット・デメリットをまとめました。
美容看護師のメリット3つ
1 夜勤なし・残業少なめでも給料高め
美容クリニックの看護師として働く一番のメリットは、やはり給料が高いこと。
夜勤がなく、残業も少なめなのにもかかわらず、病棟と同程度の給料をもらえるのは大きな魅力です。
インセンティブ制度のあるクリニックでは、自分の頑張りが給料に反映されることに、やりがいを感じることもできるでしょう。
2 美容や接客の知識・スキルアップ
美容クリニックは美容専門の医療機関。最新の美容技術や製品に日々触れることができるため、美容に関心がある看護師さんにとって、非常にやりがいを感じられる職場です。
また、健康な人を対象にしたサービス業としての側面が強いため、接遇のスキルやコミュニケーション能力を磨くこともできるでしょう。
3 交通の便がよく設備もきれい
美容クリニックの多くは、お客さまが気軽に通えるよう、駅ビルや駅チカなどにあります。そのため、交通の便がよく通勤しやすいのもメリットの一つ。大きなターミナル駅であれば、退勤後にショッピングを楽しむこともできます。
また、美容特化のクリニックということもあり、院内の設備や内装はどこもキレイ。職場の立地や環境を重視する看護師さんには、魅力的に感じられるでしょう。
キャリアアドバイザー
美容クリニックの中には「社員割引制度」があるところも。正規価格よりもおトクに施術を受けられます。美容に興味のある方には、大きな魅力になるでしょう。
美容看護師のデメリット3つ
1 土日や大型連休に休めない
美容クリニックは休日に来院するお客さまが多いため、全体的に土日・祝日の休みは少なめでしょう。
また、世間一般で大型連休と言われるGW、お盆、年末年始も繁忙期。その期間は連休が取りにくいこともあるでしょう。
平日に人混みを避けて出かけたり、割安なシーズンに旅行できたりといったメリットはありますが、土日休みの友人や家族とは予定が合わせづらいかもしれません。
2 病棟とのギャップを感じることも
美容クリニックで扱うのは健康な人を対象にした自由診療。サービス業としての側面が強いため、求められる接遇のレベルは病院以上に高くなります。
病院で患者さんと接していたときとはコミュニケーションスタイルが異なるため、初めは戸惑いを覚えることも少なくないようです。
ただ、一部の大手のクリニックでは、そうした接遇・マナースキルに関する研修がしっかり用意されていることも。心配な方は面接などで確認しておきましょう。
3 看護師の経歴としてカウントされにくい
美容看護師としてのキャリアは、看護師の経歴としてカウントされにくいケースが多く、次の転職での選択肢が限られることがあります。
美容クリニックのお客さまは「健康な人」であり、扱う症例や器具・機械が他の診療科と異なるからです。
のちのち「病棟に戻りたくても戻れない」といったことにならないように、美容クリニックへの転職を検討するときは、将来的なキャリアについても考えてみましょう。
ただ、美容クリニックで働く前に病棟で5年以上働いているなどの場合は、病棟復帰のハードルもそこまで高くない傾向にあるようです。
美容クリニックはこんな看護師におすすめ!
- 日勤のみで働きたい
- ワークライフバランス重視で残業は少なめがいい
- 病棟と比べて年収は下げたくない
- 相手の悩みに寄り添ったケアがしたい
- 丁寧なコミュニケーションがとれる
- 美容に興味・関心がある
- 新しい知識・スキルを学ぶのが好き
美容看護師は、高いお給料をもらいつつ「日勤のみ」「残業少なめ」で働くことができるので、プライベートの時間を確保しやすいでしょう。ワークライフバランス重視で、私生活も充実させたい方におすすめです。
また、美容医療はサービス業に近く、お客さまに気持ちよく過ごしてもらえるよう、丁寧なコミュニケーション・接遇スキルが求められます。相手の気持ちや悩みに寄り添い、笑顔になってもらうことにやりがいを感じる方にも向いているでしょう。
加えて、自分自身が美容に興味・関心がある方にもおすすめ。次々と新しい技術が生まれる美容医療について、積極的に学ぶことを楽しめる方であれば、美容看護師として働きやすいと言えます。
美容看護師になるために、特別なスキルや経験は必要ありません。美容関連の資格を転職時に求められることも、特にないでしょう。
病棟での経験を2~3年積んでから転職するのが一般的ですが、一部では新卒採用をしているクリニックもあります。
大手のクリニックは、入職後に2週間~1カ月程度の研修期間があり、現場に出る前に実際の施術や機器の使い方をしっかり身につけてもらうなど、教育体制が充実している傾向です。
一方、規模の小さなクリニックは、教育に割けるパワーが限られていることもあり、即戦力を求められることが多いでしょう。他の美容クリニックでの勤務経験があるなど、経験者が有利な傾向にあります。
新卒や未経験でチャレンジする場合は、志望先の受け入れ・研修体制を確認しましょう。
キャリアアドバイザー