「ケアミックス病院」は、一般病棟と療養病棟のどちらも備えているなど、地域の医療ニーズに幅広く対応する病院です。
看護師にとっても自身の関心やライフイベントに応じて働き方を選択しやすく、長く勤められる環境が魅力です。ケアミックス病院の看護師の仕事・働き方について解説します。
目次
ケアミックス病院とは
ケアミックス病院とは、「一般病床と療養病床、精神病床など、複数の医療機能に対応した病棟を持つ病院」のこと。
最近は、特に、「急性期病棟のほか、回復期病棟や慢性期病棟(療養病棟)がある病院」をケアミックス病院と言うことが一般的です。
急性期から慢性期の治療、看取り、在宅復帰支援まで、1つの病院で広くカバーできるのが、ケアミックス病院の特徴と言えます。看護師にとっても、1つの病院で幅広い経験を積めるメリットがあります。
ケアミックス病院は、担う機能によってさまざまなタイプがあります。中には、病院だけでなく訪問看護や訪問介護の部門があったり、介護施設も併せて運営したりと、「完結型の医療・介護サービス」を提供する法人もあります。
「ここはどんなケアミックス病院?」は病床数をチェック
「このケアミックス病院は、どんなタイプかな?」と知りたいときは、病院ホームページや求人情報の「病床数」に注目してみましょう。
たとえば、
- 一般病棟◯床、療養病棟◯床
- 一般病棟◯床(ICU△床、7対1△床)、地域包括ケア病棟◯床、療養病棟◯床
- 回復期病棟◯床、療養病棟◯床
など、それぞれのベッドの割合から、
「療養病棟のベッド数の方が多いから、ここは療養をメインにしたケアミックス病院だ」
「ICUがあって、2次救急も受け入れている。急性期に力を入れたケアミックス病院みたい」
と、おおまかなイメージがつかめるでしょう。
ケアミックス病院で働く看護師の仕事内容・役割
ケアミックス病院の看護師の仕事内容は、基本的に一般病院と同じです。
メインとなるのは病棟業務。
患者さんのアセスメント、医療処置(点滴・注射など)、服薬管理、清潔ケア、排泄ケア、食事介助、緊急入院や手術・検査出しの対応など、多岐にわたる業務を担当します。
「配属される病棟が急性期か、回復期か、慢性期か」によって、患者さんの重症度やADL、扱うことの多い疾患などが異なり、看護師に求められる知識やスキルも多少、変わってくるでしょう。
ただ、急性期病棟でも、それほど高度な急性期機能を担うケアミックス病院は少ないので、業務の慌ただしさという面では、比較的、落ち着いた雰囲気の病棟が多いようです。
キャリアアドバイザー
ケアミックス病院に転職するときは、配属病棟を希望できることがほとんどです。
「前職と同じ急性期病棟でスキルを生かしたい」「次は回復期か慢性期の経験を積んでみたい」など、面接の際に希望と動機を伝えましょう。
人員の都合で希望が通らないこともあるかもしれませんが、病院側もミスマッチを防ぎたいので、基本的には本人の希望を考慮して配属されます。
ケアミックス病院で働く看護師の給料
ケアミックス病院で働く看護師の平均年収は、およそ380万~520万円が相場となっています(常勤)。准看護師の場合は1割ほど低くなる傾向です。
ケアミックス病院の働き方は一般病院と同じで、給料も大きく変わりません。夜勤のない外来勤務になると病棟勤務よりも低め、という点も一般病院と同じです。
ただ、ケアミックス病院の中でも、急性期に力を入れている病院、在宅部門や介護施設も運営している法人などは給与条件が良いことが多いようです。
ケアミックス病院で働く看護師のメリット・デメリット
看護師がケアミックス病院で働く場合、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
ケアミックス病院の特徴によっても変わりますが、主なメリット・デメリットをまとめてみました。
ケアミックス病院で働く看護師のメリット3つ
1幅広い看護を経験できる
ケアミックス病院は、急性期から回復期、慢性期まで、さまざまな機能の病棟を備えているので、看護師も1つの病院で幅広い経験を積むことができます。
「しばらくは急性期でスキルを磨きたいけど、回復期のケアにも興味がある」「急性期から慢性期まで、ジェネラリストとしてキャリアを積んでいきたい」といった方にはおすすめです。
患者さんも急性期から回復期、慢性期へと同じ院内で転棟するので、ケアの流れを捉えやすく、長期的な視点で看護を実践できるでしょう。
2柔軟な異動で働き方を選べる
さまざまな機能の病棟・部署があるケアミックス病院は、自身の関心や、出産・育児などのライフステージの変化に応じて、配属病棟を希望できるメリットがあります。
「出産したら、急性期病棟で働き続けるのは厳しいかも…」などと考えている方も、ケアミックス病院なら、転職することなく異動で自分に合った働き方を叶えやすいでしょう。
必ずしも希望通りとは限りませんが、比較的、異動の希望は融通がきく病院が多いようです。
3プライベートと両立しやすい
ケアミックス病院は、全体的に残業が少なめでプライベートとの両立がしやすい環境です。
それほど高度な急性期機能を担うケアミックス病院は少ないので、突発的な対応が発生しにくく、病棟業務も落ち着いています。
ただし、高度急性期を担う病院、救急受け入れに積極的な病院の急性期病棟は、やはり慌ただしさがあります。転職先を選ぶときには、ケアミックス病院の特徴を確認しましょう。
ケアミックス病院で働く看護師のデメリット3つ
1関心のある領域以外への異動がある
さまざまな機能の病棟があるケアミックス病院は、関心のある領域以外に異動する可能性もあります。
もしも「私はずっと急性期がやりたい」「療養以外はやりたくないな…」などハッキリした希望がある場合は、ケアミックス病院はあまりおすすめできません。
急性期病院や療養型病院など、それぞれの機能に特化した病院が良いでしょう。
2専門的な医療スキルは磨きにくい
地域の医療ニーズに根ざしたケアミックス病院は、より生活に身近なタイプの病院が多くなっています。その分、高度・専門的な医療スキルを磨く機会は少なめです。
また、療養病棟の配属になると、身体介助やベッド移乗、おむつ交換など療養上の世話が多いので、医療処置のスキルアップを重視したい方は物足りなさを感じるかもしれません。
3病院によって違いが大きい
ケアミックス病院は、施設によって特徴が大きく異なります。転職先を選ぶ際、自分の希望や関心に合った病院かを慎重に検討する必要があります。
「思っていたより急性期が強い病院で、希望する働き方と違った…!」「療養の患者さんが多くて、やりたい看護とズレていたかも…」といったことのないように、病院見学や面接などできちんと確認しましょう。
ケアミックス病院はこんな看護師におすすめ!
ケアミックス病院で働く看護師は、次のようなタイプ・特徴の方に向いています。
- 急性期、回復期、慢性期…いろんな看護に興味がある
- 特定の領域に対するこだわりはない
- スペシャリストよりはジェネラリストタイプだ
- 長期的な視点で看護を実践したい
- 結婚や出産などを経ても長く勤めたい
- プライベートとの両立を重視したい
- 給料はあまり下げたくない
ケアミックス病院は、さまざまな機能の病棟があるので、急性期や回復期、慢性期など幅広い看護を経験できます。
「今は急性期で勤務しているけど、いずれ回復期や慢性期を経験するのもいいかも」など、なんとなく他領域の看護に興味を持っている方は、ケアミックス病院がおすすめです。
一方で、特定の領域で看護を極めたいというスペシャリスト志向の方は不向きかもしれません。
また、急性期状態から落ち着いた患者さんが院内の回復期病棟に転院するなど、切れ目なく医療を提供するのもケアミックス病院の特徴。ケアの流れを捉えて、より長期的な視点で看護を実践できることに、やりがいを感じる看護師さんも多いようです。
ライフステージの変化があっても、その時々に合った病棟・働き方を選べるので、これから結婚や出産を考えているなど、長く働きやすい環境を探している方にも良いでしょう。残業も少なめなので、プライベートを大切にしたい方にもおすすめです。