訪問看護師のキャリアアップ 訪問看護の認定看護師、専門看護師
訪問看護の道に進んだら、どんなキャリアアップ・スキルアップが目指せるのでしょうか。
「もうひとつ上の看護」を極めたい看護師のみなさんに、訪問看護師のキャリアアップについてご紹介します。
目次
認定看護師を目指す
認定看護師とは「特定の看護分野で熟練した看護技術・知識を持つ」と認められた看護師のことを言います。
日本看護協会の認定資格です。
在宅の現場にも、認定看護師が徐々に増えてきています。
訪問看護師におすすめの分野・領域は?
訪問看護師が認定看護師を目指す場合、次のような分野が考えられます。
訪問看護で生かせる認定看護師の分野
- 訪問看護(※新制度では「在宅ケア」に名称変更)
- 緩和ケア
- 皮膚・排泄ケア
- がん性疼痛看護(※新制度では「緩和ケア」に統合)
- 認知症看護
…など
※認定看護師制度は、2020年度から新しい制度に順次移行していきます。
新しい制度では、プログラムに「特定行為研修」が組み込まれます。また、認定看護分野の「訪問看護」は「在宅ケア」に名称が変わり、新制度の認定教育がスタートするのは2021年度からになる予定です(2020年度は、旧制度の「訪問看護」を開講している施設で受講することになります)。
制度の変わり目の時期に当たるので、日本看護協会ホームページなどで確認してください。
認定看護師になるには
認定看護師になるには、次のようなステップを踏みます。
1実務研修が通算で5年以上
うち3年以上は認定看護分野の実務研修
2認定看護師の教育機関で受講
- 6ヶ月~1年
- 600時間以上(特定行為研修を含む新制度では、800時間程度+特定行為に関する実習)
3認定審査
4認定看護師に登録
55年ごとに更新
専門看護師を目指す
専門看護師とは「特定の専門看護分野の知識・技術を深め、卓越した看護を実践できる」と認められた看護師を言います。
日本看護協会の認定資格で、看護系の大学院を修了する必要があります。
認定看護師が臨床現場での知識・スキルを重視しているのに対し、専門看護師は教育や研究の分野でも活躍が期待されます。
訪問看護師におすすめの分野・領域は?
訪問看護師が専門看護師を目指す場合、「在宅看護」や「がん看護」の分野が多いようです。
専門看護師は全13分野で計2,300人ほど。在宅の現場で活躍する専門看護師は、まだまだ少ないのが現状です。
専門看護師になるには
専門看護師になるには、次のようなステップを踏みます。
1下記の条件を満たす
- 看護系の大学院修士課程を修了し、専門看護師の教育課程基準の決められた単位を取得
かつ
- 実務研修が通算で5年以上(うち3年以上は専門看護分野の実務研修)
2認定審査
3専門看護師に認定・登録
45年ごとに更新
特定行為研修の修了を目指す
特定行為研修は、「医師の指示をその都度待つ必要がなく、あらかじめ作成された手順書に基づいて、一定の診療の補助(=特定行為)を行える看護師」を養成するものです。
在宅の現場でニーズの高い特定行為の研修を修了すれば、訪問看護師として、ぐっとスキルアップできるでしょう。
訪問看護師におすすめの分野・領域は?
特定行為は全部で21区分38行為あります(厚生労働省)。
在宅の現場でニーズが高いのは、主に次のような特定行為です。
訪問看護でニーズの高い特定行為
- 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
- 気管カニューレの交換
- 胃ろうカテーテル・腸ろうカテーテル・胃ろうボタンの交換
- 膀胱ろうカテーテルの交換
- 褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
- 創傷に対する陰圧閉鎖療法
…など
在宅の現場でニーズの高い特定行為をコンパクトにまとめた「パッケージ研修」も、2020年春ごろから始まる予定です。
特定行為研修を受講するには
特定行為研修の研修施設は全国に100カ所以上ありますが、施設ごとに研修を受けられる特定行為は異なります。
どこでどの特定行為の研修を受講できるかは、厚生労働省の特定行為研修制度ポータルサイトなどで確認できます。
ケアマネジャーの資格取得を目指す
ケアマネジャーの資格を取得するのも、訪問看護師としてスキルアップの一つの方法です。
ケアマネジャーは「介護支援専門員」とも言います。
ケアマネジャーの役割は?
ケアマネジャーは、介護保険の利用者さん・ご家族の相談にのり、要介護認定の申請をサポートしたり、ケアプランを作成したりといった役割を担います。
訪問看護では、ケアマネジャーの作成したケアプランに沿って訪問看護計画が立てられます。
そのため、ケアマネジャーがいる訪問看護ステーション(居宅介護支援事業所を併設するステーション)は多く、看護師資格のあるケアマネジャーも少なくありません。
訪問看護師がケアマネジャーの資格を取得することで、利用者さんをより深く理解し、一貫してきめの細かい看護を提供することができます。
ステーション管理者を目指したい方は、取得しておくと強みになる資格です。
ケアマネジャーの資格を取得するには
ケアマネジャーの資格を取得するには、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要があります。
看護師資格を持っている場合、実務経験が5年以上あれば受験が可能です。
試験は年1回、毎年10月に行われます。都道府県の所管で、受験日や申込期限などの詳細はそれぞれ異なります。
通信教育や各種スクール、テキスト学習などで試験勉強をする方が多いようです。
ケアマネジャー試験の合格率は例年10~20%と難関で、しっかり勉強して臨む必要があります。
試験合格後は、都道府県ごとに行われる「介護支援専門員実務研修」を受け、資格取得となります。
訪問看護師としてキャリアアップ・スキルアップを目指し、認定看護師などの資格を取得した場合、それが給料アップにもつながるかどうかは、訪問看護ステーションによる違いが大きいようです。
認定看護師や専門看護師は、診療報酬の算定要件になっているため、ステーションによっては、月3000~1万円ほどの資格手当を設けています。
一方、そうした要件が少ない特定行為研修の修了者に対しては、手当を支給するステーションはあまり多くないようです。
今後、特定行為に対する診療報酬のインセンティブが増えてくれば、現場への手当にも反映されていくでしょう。
認定看護師、専門看護師、特定行為研修の受講を目指すには、数十万~200万円ほどの費用がかかります。
ケアマネジャーの資格取得も、10万円前後は見込んでおいた方が良いでしょう。
研修の受講のために勤務を調整したり、休職したりする必要もあるかもしれません。
訪問看護師としてキャリアアップを考えるときには、資格取得に対するステーションの支援体制や、取得後の待遇アップの有無もよく確認しておきましょう。