認知症看護認定看護師とは?資格取得でできることや取得条件・流れを解説

 

看護師が取りたい資格図鑑シリーズの「認知症看護認定看護師」の記事のMV

認知症看護認定認定看護師は、認定看護師の分野の一つ。認知症ケアのスペシャリストの看護師であることを証明する資格です。

 

この記事では、認知症看護認定認定看護師になるとできることや資格を取るメリット資格を取るまでの流れ必要な学習の内容や費用試験の合格率などを解説します。

 

 

 

認知症看護認定看護師とは?

認知症看護認定認定看護師は、認知症の人の看護について、専門的な知識と技術を学べる資格です。

 

認知症ケアでは、徘徊や暴言といったBPSD(認知症の行動心理症状)への対応について、多くの人が難しさを感じています。

 

認知症看護認定看護師は、認知症の症状や原因疾患への理解、BPSDへの対応などのほか、ケアに当たるご家族への支援や、ケア方法のチームメンバーへの指導なども期待されています。

 

認知症の方をもっとよく理解したい

認知症の方に安心して入院生活や在宅生活をすごしてほしい

 

などと考える看護師さんが取得に挑戦しています。

 

また、これまでに約2,300人(2023年末)の認知症看護認定看護師が誕生しています。

 

 

認知症看護認定看護師に求められる役割とは

認知症看護認定看護師には、「実践」「指導」「相談」の役割が求められています。

 

認定看護師の役割を表した図版。1実践、2指導、3相談がある

出典:日本看護協会「認定看護師

 

認知症看護認定看護師の役割①「実践」

「実践」とは患者さんやご家族の方に質の高いケアを行うことです。

 

例えば、入院されている患者さんの認知機能をできるだけ低下させないための声かけや環境づくりなどが「実践」に含まれます。

 

 

認知症看護認定看護師の役割②「指導」

「指導」は、病院内の看護師さんに認知症看護についての指導を行うことです。

 

認知症ケアに関する勉強会を定期的に実施したり、部下や後輩にケアの仕方を教えたり、といったことが「指導」にあたります。

 

 

認知症看護認定看護師の役割③「相談」

「相談」は、ケアチームのメンバーから認知症の患者さんへのケアの相談を受け、一緒にケアの方法を考えることです。

 

医師や薬剤師などの他職種と認知症ケアチームを作り、カンファレンスを行いながら、患者さんの状態に合わせたケア方法を見つけ出す、といったことが「相談」にあたります。

 

 

認知症看護認定看護師を取るメリット

認知症看護認定看護師になるとスキルアップやキャリアアップにつながるというメリットがあります。

 

認知症看護認定看護師になるメリットを表した図版。1.認知症看護のスキルアップにつながる、2.院内のケアのレベルアップに貢献できる、3.キャリアアップにつながる

 

1認知症看護のスキルアップにつながる

資格取得を通じて、患者さんの認知症の状態に合わせたケアの仕方に関する知識・スキルが身につきます。

 

認知症を患う入院患者さんに生き生きと過ごしてもらう手助けができた
認知症患者さんへのケアのフローを整備して、院内全体としてより良い認知症ケアができるようになった

 

など、自身のスキルアップにつながります。

 

 

2院内のケアのレベルアップに貢献できる

自分の知識・スキルを、チームのメンバーに伝えることで、院内全体のケアのレベルアップにも貢献できるようになります。

 

「認定を取っているのであれば」と、周囲の理解も得られ、認知症ケアに関する院内研修の企画などもしやすくなるでしょう。

 

 

3キャリアアップにつながる

資格取得により業務の幅が広がるため、自分キャリアアップにもつながります。

 

ほかの職種との連携で得られる経験や同じ病棟の看護師への指導は、今後のキャリア形成にも役立ちます

 

病院によって異なりますが、資格取得により手当が付き給料がアップする場合もあります。

 

 

認知症看護認定看護師になるには?

認知症看護認定看護師になるには、どういったステップで進んでいくのでしょうか? ここでは、資格取得までの流れや通う学校、かかる費用、合格率などを解説します。

 

 

認定看護師になるまでの流れ

認知症看護認定看護師になるためには、次のステップを踏む必要があります。

 

認定看護師になるまでの流れを表した図版。実務経験を満たす→教育機関に入学し、カリキュラムを修了→認定審査を受ける→登録を行う

参考:日本看護協会「認定看護師」、京都大原記念病院「受験の条件と資格取得までの流れ

 

なお、A課程とB課程で学習方法や学習時間は異なりますが、認定を受けるまでの流れは同じです。

 

 

認知症看護認定看護師になるために通う学校は?

認定看護師は、看護分野ごとに指定の学校があります

 

認知症分野の授業を受講できる学校は、2024年度はA課程は3カ所、B課程は6カ所の教育機関で受け入れを行っています。

 

A課程の対象学校(2024年4月1日現在)

  • 北海道

 北海道医療大学認定看護師研修センター

  • 東京都

 聖路加国際大学 看護リカレント教育部

  • 山梨県

 山梨県立大学看護実践開発研究センター

出典:日本看護協会「認定看護師教育機関別の開講状況・定員数一覧(特定行為研修を組み込んでいない教育機関:A課程認定看護師教育機関)

 

 

B課程の対象学校(2024年4月1日現在)

  • 東京都

 日本看護協会看護研修学校

 昭和大学 認定看護師教育センター

  • 新潟県

 長岡崇徳大学教育センター

  • 兵庫県

 兵庫県看護協会

  • 福岡県

 福岡国際医療福祉大学 生涯教育センター

  • 熊本県

 熊本保健科学大学キャリア教育研修センター認定看護師教育課程

出典:日本看護協会「分野別教育機関一覧(開講状況・定員数),B課程

 

詳しくは、日本看護協会のサイトから確認することができます。

 

 

認知症看護認定看護師の学習内容は?

学校では、A課程・B課程にそれぞれ決められたカリキュラムを学習します。

 

カリキュラムは「共通科目」「専門科目」「演習・実習」で構成されていて、A課程とB課程で学習内容が異なります。

 

学習時間は、A課程は615時間以上、B課程は797時間と設定されています。入学から卒業までの間に時間分のカリキュラムを消化すると修了となります。

 

A課程とB課程の具体的なカリキュラムについて詳しくは、こちらからご確認ください。

 

 

 

認知症看護認定看護師の試験内容や合格率は?

認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。

 

  • 試験時間:100分
  • 会場:各都道府県に設置
  • 試験形式:マークシートで四肢択一形式
  • 問題数:計40問(150点満点)
  • 合格率:日本看護協会からの発表はなし

参考:日本看護協会「2024年度 認定の手引き」

 

合格率は主催である日本看護協会から公式に発表されていません。ただし、各教育機関から個別に発表されることがあります。

 

北海道医療大学は、令和5年度のA課程認定審査に修了生10人中全員が合格したと発表しています。

 

※参考:北海道医療大学「第31回(令和5年)認定看護師認定審査結果について

 

 

認知症看護認定看護師の資格取得の検討ポイント

認知症看護認定看護師の資格を取るかどうかを考える上で、検討しておきたいポイントを以下で3点紹介します。

 

「認知症看護認定看護師」の資格取得の検討ポイント

  • 資格取得までにかかる時間
  • 資格取得にかかる費用
  • キャリアとしての将来性

 

資格取得までにかかる時間

認知症看護認定看護師になるまでの時間は、人によって差はありますが、学校に通ってから合格まで最短で1年半以上はかかります。

 

大まかなスケジュール感としては、学校への入学が6月頃で、認定審査の合格発表が翌年の12月末頃です。

 

学校に入るための試験対策や認定審査のタイミングを考えると、資格を取るまでの時間は1年半以上かかると思っておくのが良いでしょう。

 

看護研修学校の学習スケジュールは公式サイトから確認できます。

 

確実にスキルアップにはつながりますが、学校に通っている期間は働いている病院を退職したり、休職したりするケースが多く見られます。

 

 

資格取得にかかる費用

認知症看護認定看護師になるためにかかる費用は、学校への入学から資格取得までで100万円以上かかります。

 

資格取得にかかる費用の内訳

項目 金額
入学試験の受験料 5万円
入学金 5~10万円
受講料 80~120万円前後
認定審査の受験料 5万円
認定料 5万円

 

さらに、ここに教材費が数万円ほどプラスでかかります。ほかにも遠方の学校に通うための引っ越し費用学校までの交通費など、学校や試験にかかる費用以外にも出費が発生します。

 

費用に負担を感じるのであれば、日本看護協会の奨学金や給付金をうまく活用するのがおすすめです。勤務先の病院によっては、一部費用を援助してもらえるところがあります。

 

 

 

キャリアとしての将来性

今後さらに認知症患者さんが増えるため、現場での認知症看護のニーズはより高まっていきます

 

現場で認知症患者さんに寄り添ったケアを実践するのはもちろん、病院全体の認知症看護のフローを整備したり、認知症ケアチームを立ち上げたり、訪問看護などで地域で活躍したりと活動の幅が広がります

 

訪問看護師のイラスト

 

認知症看護のニーズが高まる中で、認知症患者さんのことをもっと知りたい、認知症患者さんの視点でより充実したケアをしたい、といった看護師さんには将来のキャリア形成に役立つ資格と言えるでしょう。

 

なお、通学の必要なく取得できる認知症の資格としては、認知症ケア専門士などもあります。

 

 

 

まとめ

本記事では認知症看護認定看護師はどういった資格なのか、資格の取り方、資格を取るか検討するときのポイントについて解説しました。

 

「認知症患者さんのことをもっと知りたい」「認知症の患者さんにできるだけ安心して入院生活を送ってもらいたい」といった看護師さんは、挑戦してみるとよいかもしれません。

 

執筆:看護roo!編集部

 

 

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