救急現場で頼れるフライトスーツの七つ道具

 

ドクターヘリで救急の現場へ駆けつけるフライトナース、順天堂大学医学部附属病院の石倉さんへのインタビュー。

第1回では、出動時の状況やドクターヘリの設備についてお話を伺いました。

 

第2回では、現場で活動するためのフライトナースの装備や、ドクターヘリの運用を支えるスタッフの体制についてお話を伺います。

 

【前回の記事】救命救急のプロだけが乗るドクターヘリの内部とは?

 

フライトナースインタビュー【2】

 

迅速な行動のためのフライトスーツ

フライトナースがフライト当番日に身につけているのが、フライトスーツです。

 

 

「上下一体のツナギで、動きやすくなっています。季節によっては下着で調整するなどして、防寒の工夫をしています。」

 

右脚の外側に鉗子、油性ペン、ハサミ

 

出動時、ジッパーは結束バンドで留められています

 

また、腰につけているバッグには、いつ来るか分からない出動のために必要な道具が常備されています。

 

「このバッグはヘリ当番日の勤務中、絶対に肌身離さず持っています。中はフライトナースの7つ道具ですね。点滴を刺す道具とか、痛み止めの医療用麻薬とか。医療用麻薬は、ドクターヘリを運用している施設でも持ち出さないところがあるようですが、当院では薬剤科との徹底した管理体制のもと、持ち出しています」

 

ケースには「疼痛治療剤」「塩酸モルヒネ」などが

 

医療用麻薬は普段、金庫管理されており、持ち出す際は使用後の入れ物などもしっかり管理するそうです。

ちなみに、このバッグの中にはなぜか現金も入っているとか。

 

「例えば、ドクターヘリが現場で処置をしているときに違う現場から出動要請がかかった場合、状況によっては医師や看護師をその場に残して、ヘリだけ帰投することがあります。セカンドクルーといって、別の医師と看護師がヘリに乗って違う現場に行くんです。そうした際に、公共交通機関で病院へ帰るためのお金です」

 

無線で連絡できない状況もあるため、携帯電話も必需品

 

状況に応じて動きやすいように、フライトスーツや持ち物にもさまざまな工夫がされているのですね。

 

チームで支えるドクターヘリ運用

ドクターヘリの飛行速度は時速220km。地形の影響を受けづらく、自在に行き来できる機動性の高さが特徴です。

 

一方で、天候状況によっては飛行が難しく、また出動時には着陸地点や搬送先の選定が必須です。そして、機体数が限られているため、要請が相次いだ場合などの調整も必要になります。

 

そのため、ドクターやナースのほかに、さまざまなスタッフが運航調整に従事しています。

 

「パイロットと整備士は常に待機室で天候などを確認しています。ほかに、運航対策室で運航調整を専門に行うCS、病院の事務のスタッフもいます」

 

運行対策室内の様子。左が事務員さん、右がCSさん

 

CS(コミュニケーションスペシャリスト)は、ヘリの運用会社から出向しているスタッフで、風や視界、雲などの状況を確認しているそうです。現在の視程(視界の距離)が何kmか、雲の高さが何フィートか、出動範囲内の天候はどうかなど、いろいろな情報から総合的にヘリの飛行可否を判断されているそうです。

 

モニタの1つには、周辺各所のライブ映像が映し出されています

 

こちらは別のモニタ。天候などの情報が表示されています

 

また、事務員の方は、データ管理やヘリ運用のサポートをされています。ホットラインで一報が入ると、ドクターヘリはすぐに飛んでしまうので、ヘリが現場へ行く間に、消防などから得た詳細情報をフライトスタッフに伝達しているそうです。搬送先の病院を選定・調整しておくことで搬送の重複を避けたり、次のホットラインを受けてあらかじめセカンドクルーの手配をしておいたりと、重要な役割を担っています。

 

ドクターヘリというと救急医療の花型に見えますが、陰に日向にこうした方々のサポートがあるからこそ、迅速な救急対応ができているのですね。

 

第1回、第2回で体制や装備について伺ってきたフライトナースインタビュー。

第3回では、石倉さんご自身がフライトナースになった経緯や、やりがいについて伺います。

 

【次の記事】「診断なし、情報なし」未知の現場で処置を行うフライトナース

 


【フライトナース インタビュー】

【1】救命救急のプロだけが乗るドクターヘリの内部とは?

【2】救急現場で頼れるフライトスーツの七つ道具

【3】「診断なし、情報なし」未知の現場で処置を行うフライトナース

 

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