【具体例でわかる】看護師の個人目標の書き方|目標管理シートがパッと書ける!

【具体例でわかる】看護師の個人目標の書き方|目標管理シートがパッと書ける!

多くの病院で、評価にもよく使われる目標管理シート。「個人目標の書き方」に悩む看護師も少なくありません。

 

特に新人看護師は、初めて目標を立てるのが難しいと感じることも。

 

この記事では、看護師の個人目標の具体例&目標管理シートの書き方のポイントを解説します!
※日本看護協会版クリニカルラダーを基に、看護roo!編集部で一部改変し、レベルⅢまでを解説

 

個人目標を立てるときの3つのポイント

個人目標を立てるときの3つのポイント ①目標は「少し先のなりたい自分」から設定する ②客観的に評価できる「達成基準」「行動」を書く ③自分のレベルに合った目標かチェック!

個人目標は、病院で作られたクリニカルラダーや部署目標などをもとに記載するのが一般的です。

 

まずは、目標を考えるための3つのポイントをチェックしてみましょう!

 

① 目標は「少し先のなりたい自分」から設定

「自分の目標を立てよう」と言っても、どんな目標がいいか…具体的にはどういうことを書けばいいか…など、ピンとこなくて難しいかもしれません。

 

まずは「この病棟で、半年後・1年後、自分がどうなっていたいかな」とイメージしてみましょう。もし、「こうなりたい」というキャリアビジョンがすでにあれば、そのイメージを具体的な言葉にします

 

「なりたい自分」をイメージしてみよう(例)

<新人看護師の場合(ラダーレベルⅠ)>
● 優先順位を考慮した行動計画を立てたい
● 〇〇の看護技術ができるようになりたい

<看護師2~4年目の場合(ラダーレベルⅡ、Ⅲ)>
● 後輩・看護学生の指導ができるようになりたい
● 係・委員会活動を通じ、病棟業務に貢献したい
● スペシャリストとしてより専門的な知識を身につけたい
                  ……など

なかなか思いつかないときは、1つ上の先輩が行っていることや、まねしたいと思うところを参考にするのもオススメ。

 

なりたい自分像がイメージできたら、それに対して今の自分ができていること・できていないことを整理しましょう。

メモなどに簡単に書きながら整理してみると、「自分がどんな目標を設定したらいいか」のヒントになります。

できること・できないことを考える

 

② 客観的に評価できる達成基準・行動を書く

次に、どのように目標をクリアするかを明確にするために、「達成基準」と「達成のための行動」を設定しましょう。このとき、客観的に評価できるように、なるべく具体的に考えるのがポイント。

 

達成基準(指標)

いつ/何が/どんな状態になったら、目標を達成したと評価するか」を記載する
(例)◯月までに、△△・✕✕・▢▢の技術を自立したら、目標達成とする
 

達成のための行動(具体策)

「目標を達成するために、具体的にどう行動するか」を記載する
(例)◯カ月以内に、△△・✕✕・▢▢の技術の見学をし、先輩の指導のもと実践する。フィードバックをもらい、課題を抽出する
 

 

「〇〇ができるように努力する」「△△ができるように頑張る」など、曖昧な書き方は、評価しづらいので避けましょう

 

 

③ 自分のレベルに合った目標かチェック!

個人目標は、「今の自分のレベル」に対して、目標が高すぎたり低すぎたりしないのが大切。

 

たとえば、新人看護師が、いきなり「自立して看護展開する」という2年目以上で考えるような目標を立ててしまうと、ハードルが高くなり最終的に達成できない…なんてことも。

 

日本看護協会版クリニカルラダーでは、求められる能力が少しずつアップするようにレベルが設定されています。自分の病院のレベル感はどうなっているか、確認してみましょう。

クリニカルラダーのレベル解説

うまく整理できない・自分のレベルに合っているかわからないときは、教育担当者や上司に相談してみましょう。

 

 

個人目標の具体例を見てみよう!

クリニカルラダーの項目&レベル別に、個人目標の具体例を見ていきましょう。

※日本看護協会版クリニカルラダーを基に、看護roo!編集部で一部改変し、レベルⅢまでを解説

 

【看護の実践能力】に関する個人目標の具体例

【看護の実践能力】に関する個人目標の具体例

「看護の実践能力」とは、患者さんを看護するために必要な能力のこと。

 

個人目標には、ニーズを捉える/個別性への配慮/多職種連携/意思決定支援…などについて、自分が目指すこと・やりたいことを記載します。

 

達成基準や行動には、看護技術・知識/患者さん・ご家族との関わり方/周囲のスタッフとの連携…などについて、何がどんな状態になれば達成とするか、具体的に記載できるとよいでしょう。

 

レベルⅠ 看護の核となる実践能力

「ケアする能力」の目標例

 

【目標】

助言を得ながら、病棟でよく取り扱う疾患の基本的な看護を展開できる

 

【達成基準】

新人技術チェックリストで、自立の項目が◯個以上になる ※◎◎、▲▲は必須項目とする

 

【達成のための行動】

● 自立していない項目は、◯カ月以内に見学し、先輩看護師の指導のもと実践する

◯カ月に一度プリセプターと進捗チェックを行い課題を洗い出す

● 病棟で取り扱う疾患について勉強したことを、プリセプターに共有し、フィードバックをもらう

 

レベルⅡ看護の核となる実践能力

「ニーズを捉える能力」の目標例

 

【目標】

患者のニーズ・問題を捉え、標準的な看護計画に沿って自立して援助ができる

 

【達成基準】

● 受け持ち患者について、自ら看護計画を立案・実践できた割合が100%

入院から◯日以内に、受け持ち患者・家族のニーズがカルテに記載できている

 

【達成のための行動】

● 看護計画の立案・実践について、振り返りを行いフィードバックをもらう

● 患者・家族に対し、入院時から、病気に対する思い、入院生活・予後について希望の聞き取りを行う

 

レベルⅡ看護の核となる実践能力

「意思決定を支援する能力」の目標例

 

【目標】

患者・家族を取り巻く環境について必要な情報収集を行い、意思決定支援ができる

 

【達成基準】

受け持ち患者・家族のニーズがチーム全体に共有されている状態にする(チームカンファレンスでの検討の結果をカルテに記録できている)

 

【達成のための行動】

● 患者のニーズについて、必要に応じてカンファレンスを開催するなど、周囲のスタッフと情報共有する

● 患者・家族への聞き取り結果を踏まえ、関係各所と連携し、患者・家族に必要な支援資源を検討する

 

レベルⅢ看護の核となる実践能力

「ニーズを捉える能力」の目標例

 

【目標】

患者のニーズの優先度を判断し、個別性に合わせた看護計画の立案・援助ができる

 

【達成基準】

◯月時点で、自身が受け持つ患者の看護計画について、個別性に合わせた項目の追加・修正ができている割合が100%

 

【達成のための行動】

個別性の高い看護計画の立案・実践ができているか、先輩看護師にアドバイスをもらい、適宜修正する

 

レベルⅢ看護の核となる実践能力

「意思決定を支援する能力」の目標例

 

【目標】

患者・家族への意思決定支援スキルが向上する

 

【達成基準】

◯月までに、患者・家族のニーズに合わせた情報提供ができる

 

【達成のための行動】

患者の意思決定に関して、セミナー・研修などを受講し、必要な知識を得る

 

レベルⅢ看護の核となる実践能力

「協働する能力」の目標例

 

【目標】

治療方針の決定や退院支援のため、必要な援助について多職種と調整できる

 

【達成基準】

下記3つの項目を満たすことで目標達成とする
① 患者・家族のニーズを把握できる
② 患者・家族の意向を多職種に情報共有し、必要な退院支援について検討できる
③ 多職種とともに患者・家族の意向に沿った調整ができる

 

【達成のための行動】

主体的に退院支援カンファレンスに参加し、周囲のスタッフとの情報共有を強化する

 

 

【組織的役割遂行能力】の個人目標の具体例

【組織的役割遂行能力】の個人目標の具体例

 

「組織的役割遂行能力」とは、組織を運営する一員として、役割を果たす能力のこと。

 

個人目標には、コミュニケーション/メンバー・リーダーシップ/情報・物品・コスト管理/感染対策/医療安全…などについて、自分が目指すこと・やりたいことを記載します。

 

達成基準や行動には、病棟内での業務の進め方/係・委員会活動/チーム運営…などについて、何がどんな状態になれば達成とするか、具体的に記載できるとよいでしょう。

 

レベルⅠ組織的役割遂行能力

「時間管理能力・情報管理能力・医療安全を確保する能力」の目標例

 

【目標】

チームメンバーとして、与えられた役割・責任を、助言を得ながら果たすことができる

 

【達成基準】

● 助言を得ながら、決められた時間内に安全に業務を進める

◯月までに、電子カルテの入力・管理を自立する

インシデントヒヤリハットが発生した場合、自ら報告ができた割合が100%になる

 

【達成のための行動】

● 始業時に、先輩看護師に行動計画をチェックしてもらい、アドバイスをもらう。
また、業務中は時間管理や優先順位の決定について報連相をしてすり合わせる。
終業時に先輩看護師と振り返りを行い、フィードバックをもらう

● 電子カルテ運用マニュアルに沿って看護記録を作成する。先輩看護師のチェック後、フィードバックをもらう

● インシデント・アクシデントに気づいた時点で速やかに報告する。助言を受けながら対応し、その後振り返りを行う

 

レベルⅡ組織的役割遂行能力

「メンバー/リーダーシップ能力・医療安全を確保する能力・経営管理能力」の目標例

 

【目標】

チームメンバーシップをとり、部署の目標達成のための役割・責任を果たすことができる

 

【達成基準】

◯月までに、日勤リーダー業務を自立する

● インシデント・ヒヤリハットについて、チームでの振り返り実施の割合を100%にする

● SPD係として、部署のSPDラベル紛失率を◯%減少させる

 

【達成のための行動】

● 先輩看護師の指導のもと、△月までに日勤リーダー業務を実践する

● チームで起きたインシデント・ヒヤリハットについて、周囲のスタッフと情報共有し、再発防止策を提案する

● SPD委員とともに、SPD運用マニュアルの見直しを行い、スタッフへの共有会を開催する

 

レベルⅢ組織的役割遂行能力

「リーダーシップ能力・医療安全を確保する能力」の目標例

 

【目標】

リーダーシップをとり、部署の目標達成のための役割・責任を果たすことができる

 

【達成基準】

● 医療安全係として、部署のインシデント発生件数を◯件→▲件以下に減少させる

● ◯月までに、管理代行業務ができるようになる

● 感染対策委員として、入室前後の手指アルコール消毒実施率を◯%上昇させる

 

【達成のための行動】

● 部署で起きたインシデントについて、必要に応じてカンファレンスを開催するなど、周囲のスタッフと情報共有し、再発防止策を講じる

● 上司の指導のもと、△月までに管理代行業務を実践する

● アルコール消毒ボトルの残量を毎月計測し、部署のスタッフに使用率を共有する

 

 

【自己教育・研究能力】の個人目標の具体例

【自己教育・研究能力】の個人目標の具体例

 

「自己教育・研究能力」とは、自己の成長のために必要な物事を習得する能力のこと。

 

個人目標には、自己学習・教育/看護研究/人材育成/自己のキャリア開発…などについて、自分が目指すこと・やりたいことを記載します。

 

達成基準や行動には、自身の学習の進め方/看護研究への向き合い方/キャリア形成のステップ…などについて、何がどんな状態になれば達成とするか、具体的に記載できるとよいでしょう。

 

レベルⅠ自己教育・研究能力

「自己教育能力」の目標例

 

【目標】

クリニカルラダーの項目に沿って、助言を得ながら、自己の課題を明確にする

 

【達成基準】

◯月までに、クリニカルラダーで未達成の項目について、振り返りをもとに自己の課題を洗い出すことができる

 

【達成のための行動】

院内クリニカルラダーの指標の達成率について、△カ月ごとに先輩と振り返りを行う

 

レベルⅠ自己教育・研究能力

「自己学習能力」の目標例

 

【目標】

助言を得ながら、学習したことを日々の看護実践に活かせる

 

【達成基準】

◯月までに、部署で取り扱う疾患に関する研修・セミナーを受講し、課題レポートを提出する。その後、先輩看護師と振り返りを行い「学習したことを看護実践で生かせている」と評価を得る

 

【達成のための行動】

院内外の研修・セミナーを受講する

 

レベルⅡ自己教育・研究能力

「看護研究能力」の目標例

 

【目標】

メンバーとして看護研究に参加し、研究方法や調査の手法が理解できる

 

【達成基準】

担当する調査・作業に取り組み、◯月までにチームとして成果を発表できる

 

【達成のための行動】

看護研究についての参考書を読み、知識を身につける

 

レベルⅢ自己教育・研究能力

「看護研究能力」の目標例

 

【目標】

部署の課題を抽出し、中心となって看護研究を実施できる

 

【達成基準】

看護研究の進行計画を立案し、◯月までに発表ができる

 

【達成のための行動】

●テーマ立案会議で、看護研究テーマを自ら提案し、メンバーの意見を取りまとめて決定する

●計画に沿って看護研究が実施できるよう、上司と適宜相談し、必要に応じて計画を変更する

レベルⅢ自己教育・研究能力

「人材育成能力」の目標例

 

【目標】

後輩・看護学生に対し、教育・指導的な役割を果たすことができる

 

【達成基準】

◯月までに実地指導者研修、後輩育成に関するセミナーを受講し、教育に関わる他のメンバーに情報共有をする

 

【達成のための行動】

実地指導者研修、教育に関するセミナーを受講する

●指導する際は、最新のマニュアルを参照し、振り返りの場を設けて新人や看護学生の理解度を確認する

 

 

おわりに

 

個人目標を立てるのはなかなか難しいものですが、自分を客観的に見れるいい機会でもあります。

 

目標を立てたあとは、「なりたい自分にどのくらい近づいたかな? 次は何を頑張ればいいかな?」と、定期的に達成度・課題を振り返ってみるのがオススメです。

 

悩んだときは、教育担当者や上司に相談しながら考えられるとよいでしょう。

 

 

監修

獨協医科大学埼玉医療センター 看護副部長石井 恵利佳

救急看護認定看護師。

熊本大学大学院社会文化科学研究科教授システム学前期博士課程修了。
獨協医科大学越谷病院(現埼玉医療センター)に入職し、日本看護協会看護研修学校(認定看護師教育課程専任教員)への出向を経て、2020年4月より現職。

 

 

 

看護roo!編集部 小園 知恵(看護師)

 

 

 

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