「救急救命士」病院内でも処置可能に…!?|看護roo!ニュース

救急搬送場面

 

いまの法律では、救急救命士が処置を行えるのは事故現場や救急車内だけ。

 

法律を改正し、病院内でも処置できるようにすれば、医師や看護師の負担軽減につながるのではないか。

 

厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」でそうした提案がなされ、議論が進められています。

 

看護師が知っておきたいポイントをまとめました。

 

 

救急救命士って何ができるの?

現在、救急救命士法で規定されている救急救命士ができる処置は、

 

  • メディカルコントロール体制の下、医師の包括的指示により実施できる28項目
  • 医師の具体的な指示が必要な5項目(「特定行為」と呼ばれる)

 

の合計33項目です。

 

※ 救命救急士が傷病者に対して行う医行為の安全と質を保証するため、医師が指示や指導・助言、事後検証、再教育を行う一連の体制を整備し、運営していくことを指す。

 

救急救命士ができる処置は?(★=心肺機能停止状態の患者に対してのみ行うもの)/医師の包括的指示でできるもの:●必要な体位の維持、安静の維持、保温●体温・脈拍・呼吸数・意識状態・顔色の観察●ハイムリック法および背部叩打法による異物の除去●骨折の固定●圧迫止血●呼気吹き込み法による人工呼吸●胸骨圧迫●用手法による気道確保●自動体外式除細動器による除細動★●酸素吸入器による酸素投与●バッグマスクによる人工呼吸●経口エアウェイによる気道確保●口腔内の吸引●特定在宅療法継続中の傷病者の処置に維持●自動式心マッサージ器の使用による体外式胸骨圧迫心マッサージの施行●ショックパンツの使用による血圧の保持および下肢の固定●パルスオキシメーターによる血中酸素飽和度の測定●経鼻エアウェイによる気道確保●鉗子・吸引器による咽頭・声門上部の異物の除去●心電計の使用による心拍動の観察および心電図伝送●血圧計の使用による血圧の測定●聴診器の使用による心音・呼吸音の聴取●気管内チューブを通じた気管吸引●血糖測定器を用いた血糖測定●自己注射が可能なエピネフリン製剤によるエピネフリン投与●産婦人科領域の処置●小児科領域の処置
●精神科領域の処置/医師の具体的指示でできる処置(特定行為と呼ぶ):●低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与●乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保および輸液●エピネフリンを用いた薬剤の投与★●食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスクおよび気管内チューブ★による気道確保●乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液★

救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会の資料を基に看護roo!編集部で作成

 

検討会では、この規定を逸脱するような処置は想定しておらず、あくまで活用の場所を病院内に広げるだけにとどめる方針が示されています。

 

 

賛成の声もあれば、反対の声も…

検討会の委員からは、救急救命士の活用範囲を拡大する提案に賛成の声が多数あがっています。

 

ただし、病院内でのメディカルコントロール体制の構築や、病院で働くための研修の必要性など、幾つか課題も指摘されています。

 

また、現在の救急救命士の教育のまま活動範囲を拡大することには反対の声もあります。

 

※ 救急救命士の養成は、大学や専門学校等で2~4年の教育を受ける場合と、2000時間または5年以上の救急業務を経験した後に半年以上の教育を受ける場合の大きく二通りある。

 

救急救命士の活用拡大へのおもな意見/賛成:「医師や看護師の業務をタスク・シェアできる」「病院では医師から具体的指示が受けられる」/反対:「病院内で処置を行うには3年以上の教育が必要」「救急外来の看護師の配置基準も一緒に議論を」/その他「メディカルコントロール体制の構築を」「活動範囲の拡大は賛成だが、教育はしっかり行うべき」

救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会の資料を基に看護roo!編集部で作成

 

ちなみに、看護roo!が看護職らを対象に行ったアンケートでは、救急救命士が病院内でも処置が可能になることに8割以上が「賛成」と答えました。

 

 

今後どうなるの?

日本看護協会は、医療安全の観点から検討会の提案に反対しています。

 

厚労省は、こうした慎重な意見もあることから、引き続き議論を進めていくとしていますが、早ければ2020年に救急救命士法改正案が提出される見通しです。

 

救急救命士は2019年現在、約6万1000人。その約6割が消防職員として働いていますが、企業など必ずしも救急救命士の資格とは直接関係のない仕事をしている人もいます。

 

法改正が実現すれば、救急外来を中心に病院で働く救急救命士が一気に増える可能性があります。

 

看護師との役割分担にかかわる動きなので、今後どうなるかが注目されます。

 

看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

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(参考)

救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会(厚生労働省)

救急救命士法

救急医療提供体制の在り方に対する日本看護協会の見解日本看護協会

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