3000万円超の新薬「キムリア」ってどんな薬?|看護roo!ニュース

点滴投与する患者さん

 

1回の投与で3349万3407円という超高額な新薬が登場し、話題になっています。

 

ノバルティスファーマが開発した、白血病などの治療薬「キムリア」(一般名:チサゲンレクルユーセル)です。

 

どんな薬で、なぜそこまで高いのでしょうか。

 

 

「キムリア」ってどんな薬?

キムリアは、バイオテクノロジーを活用した新しい薬です。

 

2019年5月22日から保険適用されました。

 

治療対象となるのは、

 

 B細胞性急性リンパ芽球性白血病(投与時に25歳以下)

 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

 

で、従来の抗がん剤では治療効果が得られなかった患者です。

 

患者自身の血液から免疫細胞の一種であるT細胞を取り出し、がん細胞を攻撃するよう遺伝子を操作。それを製剤化したものを点滴で投与し、患者の体内に戻す、という新しいタイプの治療薬です。

 

キムリアによる治療(CAR-T療法)イメージ/1:患者の血液からT細胞を取り出す、2:がん細胞を攻撃するよう遺伝子操作、3:できたCAR-T細胞をキムリアとして製造、4:キムリアを患者の体内に投与

 

キムリアを投与すると、がん細胞を攻撃する「CAR-Tカーティー 細胞」が体内に拡散し、がん細胞を死滅させます。

 

CAR-T細胞は体内で増え、がん細胞への攻撃を続けるため、投与は1回限りで済みます。

 

画期的な治療ですが、正常細胞まで攻撃してしまうサイトカイン放出症候群や重い精神神経症状などの副作用が起きる可能性があります。

 

そのため、治療が受けられるのは副作用に対応できる特定の病院に限定されます。

 

 

なぜ、そんなに高いの?

キムリアが高額なのには理由があります。

 

製造工程が複雑で、患者の血液から一人ひとりに合わせて作るオーダーメイドの薬だからです。

 

キムリアが投与されるまでの流れは、次の通りです。

 

 1)患者から採血した血液からT細胞を採取。凍結保存したT細胞を米国のノバルティスファーマの施設に送付

 2)米国の施設でT細胞に遺伝子操作を加え、キムリアを製造。日本の病院に送付

 3)日本の病院でキムリアを点滴投与

 

採血をしてから患者さんにキムリアを投与するまでには、2~3カ月かかります。

 

キムリアが投与されるまでの流れ/1:日本の病院で採血、凍結保存したT細胞を送付、2:米国の施設でキムリア製造、キムリアを送付、3:日本の病院で点滴投与

 

このように、製造や輸送にコストがかかるため、高額にならざるを得ないというわけです。

 

それでも、5000万円を超える場合もある米国と比べると、3000万円超とはいえ日本では安く抑えられているのではないかとの声もあります。

 

また、日本では、保険適用により、年齢や収入に応じて限度額を超える治療費が払い戻される「高額療養費制度」が利用できるため、患者の自己負担はかなり安くなります。

 

たとえば、年収500万円の会社員では、40万円程度(薬代のみ)の負担といわれています。

 

 

医療費が増えることを心配する声も

キムリアによる治療対象の患者は、ピーク時で216人程度、市場規模は72億円と予測されています。

 

高額療養費制度の活用で公費負担が増えるため、医療費が増えることを心配する声も上がっています。

 

こうした高額な薬は、過去、皮膚がんなどの治療薬「オプジーボ」でも問題になっています。

 

オプジーボは保険適用された当初は年間3500万円でしたが、その後、何度か価格の見直しがなされ、現在は4分の1の価格にまで引き下げられています。

 

今後、キムリアの価格も見直される可能性があります。

 

キムリアは注目されている新薬ですので、患者さんや家族との会話、スタッフ同士の会話で話題になることもあると思います。

 

ポイントだけでも知っておきましょう。
 

 

看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

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(参考)

ノバルティス、国内初となるCAR-T細胞療法「キムリア®」の製造販売承認を取得(ノバルティスファーマ)

キムリア(ノバルティスファーマ)

再生医療等製品の保険償還価格の算定について(厚生労働省)

最適使用推進ガイドライン(案)(厚生労働省)

最適使用推進ガイドラインの取扱いに係る通知について(厚生労働省)

最適使用推進GLが策定された再生医療等製品の保険適用上の留意事項について(厚生労働省)

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