「看護学校はすべて4年制」の日は来る? 「NPの制度」は本当にできる?|看護roo!ニュース

看護師

 

在宅や地域での看護など、看護師に求められる役割が増えています。

 

そのため、

「看護師の教育は3年では時間が足りない。4年制教育に統一を!」

「ナース・プラクティショナー(NP)*の資格制度の創設を!」

と、日本看護協会が繰り返し主張しているのを知っていますか?

 

しかし、いずれも保健師助産師看護師法の改正が必要で、実現のめどはたっていません。

 

そのような中、日看協は厚生労働省に対し、看護師教育の充実やNPの制度化などを求める要望書を提出しました(2019年4月26日)。現状と合わせて紹介します。

 

*大学院修士課程における専門課程を修了し、免許取得や登録を行った看護師で、医師の指示がなくとも一定のレベルの診断や治療などを行うことができる。米国などでは制度化されているが、日本では制度化されていない。

 

 

2022年度から看護師の教育は変わるが…

看護師の教育は、3年以上と保健師助産師看護師法で決められています。

 

看護学校は、大学が年々増え、4年制の専門学校も出てきていますが、3年制の専門学校も多くあります。

 

実は現在、2022年度から教育カリキュラムを新しくするため、厚労省の「看護基礎教育検討会」で教育内容の見直し議論が進められています。

 

しかし、検討会で示されている変更案はマイナーチェンジにとどまる見通しです。

 

領域区分の組み替えなどはあるものの、全体としては1単位増えるだけ。

 

教育時間は最低でも3000時間以上という基準は現状のままで、4年制教育にはほど遠い内容です。

 

検討会の委員からは、実習時間が不十分などの反対がある一方で、実習先への影響が少ない変更案を支持する声もあり、意見は割れています(詳細は関連記事を参照)。

 

看護師教育の変更案/現行教育:97単位(3000時間以上)、変更案:98単位(3000時間以上)/「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」1単位増/専門分野Ⅰ、専門分野Ⅱ、統合分野をまとめ、専門分野に/在宅看護論を基礎看護学の次に位置付け/成人看護学と老年看護学の単位をくくる/臨地実習トータルの単位数23は維持(基礎看護学3以上、在宅看護論2以上、成人看護学・老年看護学4以上、小児看護学1以上、母性看護学1以上、精神看護学1以上、看護の統合と実践2以上)

第7回看護基礎教育検討会の資料を基に、看護roo!編集部で作成

 

こうした検討会での議論を踏まえ、日看協は、看護師の教育を充実させるため、厚労省に改めて下記のような要望を行いました。

 

 「在宅看護領域の教育」「臨床推論力を養う教育」「統合教育(実習)」の追加

 必要な教育時間を確保するために「4年制教育」の実現

 

最終的に、2022年度からの教育カリキュラムがどのような内容になるのか、4年制教育までは難しくとも多少は日看協の要望が反映されるのかが注目されます。

 

 

NP制度の議論、ついに始まるかも!?

訪問先で聴診器で胸の音を聞く看護師

一方、ナース・プラクティショナー(NP)はどうかというと、少し風向きが変わってきたかもしれません。

 

医師の過酷な働き方が問題となり、タスク・シフティング(他職種への業務移管)の推進が話し合われた「医師の働き方改革に関する検討会」で、NPの必要性が話題に上がりました。

 

検討会がまとめた報告書(2019年3月28日)にも、下記のような文言が加えられています。

 

「現行の資格制度を前提としたものに加え、将来的にはいわゆるナース・プラクティショナー(NP)など、従来の役割分担を変えていく制度的対応を検討していくべきとの指摘があった」

 

これまで、NPの養成については医師会などからの反対が根強くありました。

 

特定行為の研修が制度化されるまでの議論でも、「特定看護師」の資格や認証制度をつくることが反対されました。

 

そのため、最終的に「研修を修了した看護師は、医師の手順書による包括的指示があれば、一定の診療補助(特定行為)を行える」という現在の研修制度に落ち着いた経緯があります。

 

資格をつくることを牽制する動きもありますが、NPの制度化に意欲的な日看協は話題になっている今がチャンスと考えているようです。

 

厚労省に提出した要望書でも、NP制度を検討する場を設置するよう求めました

 

 

制度に先行し、進められているNP教育

NPは、その必要性を社会に理解してもらうために、大学院での教育が先行してスタートしています。

 

反対する声もありましたが、2008年に大分県立看護科学大学大学院が日本で初めてNPの教育を始めたのを機に、全国各地に少しずつ広がっています。

 

2019年5月現在、日本NP教育大学院協議会および日本看護系大学協議会が認証する10校の大学院で、NPの教育が行われています。

 

また、日本NP教育大学院協議会では独自に認定制度を設けており、認定試験の合格者は417人に上ります(2019年5月現在)

 

NP教育課程のある大学院(※重複)/日本NP教育大学院協議会(独自のNP資格認定試験合格者417人、2019年5月現在):● 北海道医療大学大学院●東北文化学園大学大学院●山形大学大学院※●東京医療保健大学大学院●国際医療福祉大学大学院●佐久大学大学院●藤田医科大学大学院●愛知医科大学大学院●大分県立看護科学大学大学院/日本看護系大学協議会(認定制度は検討中):● 山形大学大学院※● 沖縄県立看護大学大学院

日本NP教育大学協議会および日本看護系大学協議会のホームページを基に、看護roo!編集部で作成

 

現在の日本の法律では、NP教育課程を修了しても、医師の指示がなければ医療行為を行うことはできません。

 

ただし、ほとんどの大学院が特定行為研修の指定研修機関を兼ねているため、卒業後、医師の包括的指示の下、特定行為を行うことができます(大学院によって詳細は異なる)。

 

将来を見据えた看護師が、NP教育課程のある大学院に進学しています。

 

日看協では、NP教育課程を修了した看護師の活動内容や成果を調査し、NPの有用性のエビデンスを構築していく考えです。

 

 

続く、実現へ向けた働きかけ

看護師の4年制教育への統一もNPの制度化も、実現のめどはたっていませんが、国や関係団体に対する日看協からの働きかけは継続されています。

 

実現すれば、看護師教育の充実や看護師の役割拡大が進む一方で、実習先病院の負担や看護師になるハードルが上がるという側面もあります。

 

看護現場への影響も含め、今後の動きに注目していきたいと思います。

 

看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

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(参考)

厚労省医政局へ要望書日本看護協会

看護基礎教育検討会(厚生労働省)

看護師基礎教育の4年制化の推進(日本看護協会)

ナース・プラクティショナー(仮称)制度の構築(日本看護協会)

日本NP教育大学院協議会

日本看護系大学協議会

医師の働き方改革に関する検討会 報告書(厚生労働省)

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