モヤッとする「看護師」「准看護師」「看護補助者」の業務の違い|日看協がガイドライン作成

「看護師と准看護師、業務の違いは?」「法律的に絶対ダメなことって何?」「看護補助者にどこまで頼んでいいの?」

 

看護チームとして一緒に働く看護師・准看護師・看護補助者の業務分担で、モヤッとしたことはありませんか?

 

法律や通知などで各職種の位置付けは規定されていますが、具体的な業務内容までは明記されておらず、病院や施設によって業務分担が異なるのが実情です。

 

そうした状態を受け、日本看護協会が看護師・准看護師・看護補助者の業務のあり方に関するガイドラインをまとめましたので、ポイントを紹介します。

 

このガイドラインは「看護職の職能団体として基本的な考えを示したもの」とされ、ガイドライン自体に法的拘束力はありません。

 

 

法令等で決められている、それぞれの職種の違い

看護師・准看護師・看護補助者の違いを表にまとめました。

 

看護師・准看護師・看護補助者の違い/【看護師】免許:厚生労働大臣の免許、業務:「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする」(保助看法第5条)、業務独占:あり(保助看法第31条)、名称独占:あり(保助看法第42条3)、基礎教育:入学要件は高校卒業、年限は3年以上、単位は97単位以上、時間は3000時間以上/【准看護師】免許:都道府県知事の免許、業務:「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条(保助看法第5条)に規定することを行うことを業とする」(保助看法第6条)、業務独占:あり(保助看法第32条)、名称独占:あり(保助看法第42条3)、基礎教育:入学要件は中学卒業、年限:2年以上、時間は1890時間以上/【看護補助者】免許:なし、業務:「主治医若しくは看護師の指示を受けて、看護補助を行う」(厚労省告示)「看護師長及び看護職員の指導の下に(略)業務を行う」(厚労省通知)、業務独占:なし、名称独占:なし、基礎教育:なし

看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」(日本看護協会)より一部改変

 

看護師と准看護師の業務は、保健師助産師看護師法(保助看法)で「療養上の世話」「診療の補助」と定められています。

 

看護師と准看護師の違いは指示の必要性の有無で、准看護師が行う業務は医師や看護師等の指示が必要とされています。

 

また、看護師と准看護師は業務独占の規定があり、看護補助者は「療養上の世話」と「診療の補助」を行ってはならないとされています。

 

一方、看護補助者の業務は、法律では定められていません

 

厚生労働省の告示や通知を踏まえ、看護師等の指示や指導を受け、「療養生活・・上の世話」や「ベッドメイキング」など、看護の補助業務を行うこととされています。

 

これらの法令等は順守しなければならず、業務独占などの法律の規定に背いた場合には罰則が設けられています。

 

 

それぞれの職種の役割と責任は?

ガイドラインでは、法令等を踏まえて日看協が考えた各職種の役割と責任が示されました。

 

看護師・准看護師・看護補助者の役割と責任/【看護師】役割:●多様な対象者の看護課題の優先順位を的確に判断●対象者や家族の意思決定を支援●科学的根拠に基づき、対象者に応じた計画立案、看護提供●他職種と連携・協働、責任:療養上の世話・診療の補助の実施(必要時、療養上の世話は自らの判断で方法等を変更・中止、診療の補助は医師に報告・相談し、改めて指示を受ける)、准看護師への適切な指示、看護補助者への適切な指示と指導/【准看護師】役割:●看護師等の指示のもと、対象者の状態や変化を観察、記録・ 報告をするとともに、多職種と協働しつつ、対象者や家族の尊厳や権利、価値観を尊重・擁護し、安楽に配慮しながら安全に看護を提供、責任:看護師等から指示を受け、療養上の世話・診療の補助の実施(必要時、看護師等に報告し、新たな指示を受ける)/【看護補助者】●看護師の指示、看護師長及び看護職の指導のもとに看護の専門的判断を要しない看護補助業務の実施●標準化された手順や指示された手順に則って業務を実施、責任:看護師の指示や指導を受け、看護補助業務の実施

看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」(日本看護協会)を基に看護roo!編集部で作成

 

看護師は、必要な場合、「療養上の世話」については自らの判断で方法等を変更・中止。対象者にとって最も負担が少ない、最良の看護を提供する責任があるとしています。

 

また、「療養上の世話」に関する准看護師への指示は看護師が行うことが望ましいとされ、指示する際に看護計画を活用できるのではないかとしました。

 

准看護師は、対象者の状態を観察し、変化や反応を捉えながらケアを行い、必要な場合は看護師等に報告。新たな指示を受け、対象者の状態の変化に応じた方法で看護を提供する責任があるとしています。

 

看護補助者は、看護師の指示を受け、看護の専門的判断を要しない標準化された手順や指示された手順に則って看護補助業務を行う役割を担っているとしました。

 

 

看護師が実施すべき業務とは?

ガイドラインでは、看護師と准看護師の役割の違いを踏まえ、看護師が担うべきとして下記の業務が示されました。

 

  • 看護計画の立案・評価
  • 看護管理、リーダー業務
  • 訪問看護のオンコール対応

 

また、新人看護師の実地指導や看護学生の実習指導は、准看護師ではなく看護師が行うことが期待されるとしています。

 

 

看護補助者の業務範囲は?

一方、看護補助者の業務は、

 

  • 「療養上の世話」と「診療の補助」に該当しない
  • 看護の専門的判断を要しない

 

という前提の下、対象者に直接的に接しない「周辺業務」直接かかわる「直接ケア」に整理されました。

 

周辺業務は看護師の指示の下に積極的に担ってもらう業務とする一方で、直接ケアは対象者の状態像や実施状況などによって行ってよいかどうか異なるとしています。

 

そのため、それぞれの医療機関に応じて、基準を策定し、指示のルールも決めておく必要があるとしました。

 

看護補助者の業務分類/周辺業務(対象者に接しない業務):生活環境にかかわる業務(●病床及び病床周辺の清掃・整頓●病室環境の調整●シーツ交換やベッドメイキング(退院後、空床、離床可能な人)●リネン類の管理など)、診療にかかわる周辺業務(●処置・検査等の伝票類の準備、整備●診療に必要な書類の整備・補充●診察に必要な器械・器具等の準備、片付け●診療材料の補充・整理●入退院・転出入に関する業務など)/直接ケア(対象者の状態像や看護補助者が業務を実施する状況により、看護補助者が実施可能かどうかは異なる):日常生活にかかわる業務(●食事に関する業務●身体の清潔に関する業務●排泄に関する業務●安全安楽に関する業務●移動・移送に関する業務など)

看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」(日本看護協会)を基に看護roo!編集部で作成

 

 

実際の現場では…

そのほか、ガイドラインには、看護師と准看護師それぞれの資格名称を明示する必要性、准看護師が看護師から指示を受けられる規定や体制整備、必要な教育の実施などが盛り込まれました。

 

日看協では、このガイドラインは、安全で質の高い看護を効果的・効率的に提供するための体制整備をしていく際の取り組みの参考として示したもので、それぞれの病院や施設の状況に応じて活用してほしいとしています。

 

すでに工夫しながら業務分担が行われている実際の現場では、ガイドラインはどのように受け止められるのでしょうか。

 

 

看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

 

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(参考)

看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド日本看護協会

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