看護師免許証のカード化、いいと思いませんか?

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

小林光恵

 

先日、友人のA子さんから電話がありました。「今回はシャレにならない感じです…」。暗く沈んだ口調でした。

 

看護師のA子さんと理学療法士のYさんは共に40代前半でバツイチ同士。相思相愛のようですが「付き合ってはいない」とのこと。たびたびけんかになり、その顛末をいつもは明るく事後報告してくれるのですが……。

 

Yさんがあるナースの経歴について「介護士上がり」という言い方をし、それをA子さんは強く非難したそうです。するとYさんは「うそつきのくせにえらそうに言うな」と逆襲してきて、大げんかに発展したのだとか。

 

「以前、Yに『将来、看護師の免許証はカード化されると思う』って言ったんですよ。そうしたら彼、そのことを方々で言いふらしたらしくて。で、『いつまでたってもカード化されないじゃないか』って周囲から言われているそうで……」

 

そもそもの発端は私がA子さんに「カード化されたらいいな」と希望を語ったことでしたが、言葉尻が変化して伝わっていったようです。

 

 

カード化すれば、こんなメリットが!

看護師免許証がカード化になって喜ぶ看護師のイラスト。

イラスト:立花 満

 

ご存じの通り、看護師免許証はB4判の用紙に印刷された賞状のような見た目をしています。その出番と言えば、就職した事業所に提出してコピーを取ってもらうときだけで、あとはしまっておくという人が多いことでしょう。卒業証書などと一緒に丸めて筒に入れておいたり、タンスの引き出しの底に敷くように広げておいたり……。

 

カード化によってクレッジットカードのように看護師免許証の携帯が可能になれば、以下のような利点が生まれると私は考えています。

 

今後、さらに看護師の働き方の幅が広がり、例えば看護師が急遽必要になった事業所や個人がその旨を知らせるアプリなどが開発され、それに看護師が応じるときも、現場ですぐに自身の資格を証明できます。

 

また、事件や災害の現場に居合わせて看護師として緊急対応するときも、必要に応じて資格を明らかにすることができます。

 

それと、看護師免許証を紛失する人も激減することでしょう。現在のサイズでは日常的に持ち歩けませんから、どこかにしまい込んでしまい、見つからなくなる人が多く、年に数千人が再交付手続きをしているようです。余談ですが、私は紛失ではなく破り捨ててしまって再交付していただいたことがあります。若気の至りで。

 

カード化の利点としてもう1つ、看護師が社会からの応援をいろいろなかたちで受けることが可能になります。

 

あるマッサージ店の経営者から、「映画館にレディースデイがあるように、当店でもお疲れナースへの応援として月に何回かナースデイを設けて、その日はナースに半額以下で施術を受けてもらえるようにしたいのだが、どうやってナースであることを確認したらいいだろう」と相談を受けたことがあります。飲食店や旅行関係の方からも同じような相談がありました。

 

看護師が、様々な企業からの応援の気持ちを優待や特典といったかたちで受ければ、社会の応援の気持ちが看護師にダイレクトに伝わることでしょう。私自身、歳を重ねて、看護を受けるイメージがだんだんリアルになってくると、「看護していただく方々には元気でいきいきと働いていてほしい」という願いが強くなっています。

 

ところで、同じく賞状様の免許証を発行している医師の世界では、免許証自体に変更はないものの、日本医師会がICチップを格納した「医師資格証」を発行しています。看護師免許証のカード化が難しいならば、希望者に有料で医師資格証のようなICカードを発行するといった方向性も関係者の皆様に検討してみてほしいです。

 

 

A子さんとYさんの仲はどうなった?

「黄昏流星群っていうドラマ、あったじゃないですか?不倫だ何だって突っ込みどころ満載でどんどん話が展開するやつ。それに引き換え、私たち2人の関係性には進展がなさすぎて。もう出会ってから5年ですよ。もしかしたら、このまま絶縁になっちゃうかも」。A子さんの声がどんどん小さくなっていきます。

 

「不器用な2人が、ここぞというときに意地を張っているからなんじゃない?」

 

「はい。“敵”が逆襲してきたのは、話の途中にもかかわらず、本筋とは関係ない『介護士上がり』の発言をとらえて非難したからだと思うんです。私、いつも話の腰を折っちゃうんです」

 

「じゃ、その点を謝ったほうがいいでしょ。二人はいつかピタリとかみ合うだろうと思うけど、ただ時の流れに身を任せているんじゃなくて、謝るときは謝る、やるときはやらなきゃ。カード化のことも、周囲に話しているだけじゃなくて、私なりに頑張って動いてみるからさ」

 

「ほんとですか?」

 

「やる。Yさんがカード化されるらしいって周囲に吹聴しちゃったのは、A子さんの看護師の仕事を心から応援しているからじゃないかな」

 

このようにえらそうに宣言してしまった手前もあるので、私は看護師免許証のカード化に向けて行動を開始するつもりです。厚生労働省の看護課か、看護系の政治家か、あるいは別のどなたにか、まずは相談してみたいと思います。

 

A子さんはYさんに謝ったそうで、2人は仲直りしたようです。

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

Aナーシングは、医学メディアとして40年の歴史を持つ「日経メディカル」がプロデュースする看護師向け情報サイト。会員登録(無料)すると、臨床からキャリアまで、多くのニュースやコラムをご覧いただけます。Aナーシングサイトはこちら

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