がん終末期患者の3割が身体的苦痛あり、初の全国的な遺族調査|看護roo!ニュース


 

国立がん研究センターが2018年末、患者が亡くなる前に受けた医療や療養生活に関する調査結果を発表し、注目されています。

 

調査では、亡くなる前1カ月の間、がん患者の約3割が身体に何らかの苦痛を感じているという回答が遺族からあり、緩和ケアの対策をより強化する必要性が示唆されました。

 

 

日本で初めての全国規模の遺族調査

この調査は、2018年2月から3月にかけ、2016年の人口動態調査の死亡情報を基に、病気や亡くなった場所別に無作為に抽出した、がんや心疾患などで死亡した患者の遺族4812人を対象に行ったもの。

 

有効回答数は2295人で、そのうち、がん患者の遺族は1630人と最多でした。

 

2019年中には5万人を対象に本調査を行う予定で、今回の調査はその予備調査にあたります。

 

人生の最終段階をより良く過ごすことができる医療のあり方を探ることが目的で、同センターによると、このような全国的な規模で遺族調査が行われるのは日本では初めて。

 

 

がん患者の身体的苦痛、取り切れていない?

亡くなる前1カ月間、遺族から見て身体の苦痛が少なく過ごせたがん患者の割合は48%にとどまり、がん患者が身体的苦痛を感じていたとの回答は3割を占めていました。

 

 

また、身体の苦痛が少なく過ごせたと遺族が回答したがん患者の割合は、病院が38.0%、ホスピス・緩和ケア病棟が54.9%、施設・その他が59.6%、自宅が49.0%と、亡くなった場所によって違いがみられました。

 

ただし、予備調査の対象者数が限られていることや、症状が安定している患者ほど施設や自宅での療養が可能になるなど、場所の特性が結果に影響していると考えられるため、場所別の数字はあくまで「参考値」とされています。

 

 

亡くなる前1週間の苦痛症状は?

亡くなる前1週間の患者の苦痛症状については、「掻痒感」「吐き気・嘔吐」以外のすべての症状で、苦痛症状がないと答えた人よりもあると答えた人の方が多い結果で、遺族は患者がさまざまな苦痛を感じていると考えていました。

 

特に、「体重減少」「食欲不振」「眠気」の苦痛症状があったと考えている遺族が多くみられました。

 

 

 

医療者の苦痛症状への対応、8割以上が評価

一方で、がん患者の苦痛症状に対し、8割を超える遺族が、医療者は速やかに対応していたと回答していました。

 

また、亡くなった場所で受けた医療に対して、「非常に満足」が13.7%、「満足」が43.1%、「やや満足」が19.4%でした。

 

 

 

終末期医療の事前指示書、半数以上が作成せず

現在、アドバンス・ケア・プランニングが推進されていますが、調査では、患者が事前に終末期医療に関する希望を伝えていたかどうかなどを確認する質問も盛り込まれました。

 

蘇生処置を行うかどうかについて患者と主治医とで話し合いができていたと考えているがん患者の遺族は約3割にとどまり、事前指示書を作成していたと回答した遺族は15%とごく少数でした。

 

 

 

終末期医療の質を向上させるために

今回の調査では、医療者が苦痛を取り除こうと速やかに対応し、医療に対する満足を一定程度は得られている一方で、苦痛が取りきれていない患者がいることが示唆されました。

 

また、事前に終末期医療に対する希望や考えを患者と医療者で話し合っているケースは限られており、今後の課題であると考えられました。

 

今回の予備調査は対象者数が少なく、がんとがん以外の疾患、亡くなった場所の違いによる比較などが難しいため、対象者数を大幅に増やす本調査の結果が待たれます。
 

 

看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

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(参考)

がん患者の人生の最終段階における苦痛や療養状況に関する初めての全国的な実態調査の結果を公表(国立がん研究センター)
 

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