フライトナースになりたいあなたに知っていてほしいこと|日本医科大学千葉北総インタビュー【後編】
前回に引き続き、長年ドクターヘリを運航し、「コード・ブルー」のロケ地でもある日本医科大学千葉北総病院にお邪魔しています。
今回はフライトナース歴4年のナースに、フライトナースのお仕事内容や、フライトナースになるまでの経緯について、お聞きしました。 フライトナースになりたいと思っている方、必見です!
フライトドクターに聞いたドクターヘリについてはこちら
フライトドクターに聞いてみた ドクターヘリのあれこれ|日本医科大学千葉北総病院インタビュー【前編】
お邪魔した日、現地の最高気温は35.4度!こんな暑い日にヘリポートにヘリを待機させておくと、操縦桿が熱を持ってしまい、フライト要請が入ってもすぐに飛べないため、格納庫で待機することもあるそうです
きっかけは、「急変に気付けなかったから」ナース歴11年で念願のフライトナースに!
なぜ、フライトナースになりたいと思ったのですか?
急変している患者さんに対応できなかったという経験がきっかけです。
私はナース1年目に外来、2年目からは脳外科病棟にいたのですが、ある時、患者さんの急変に遭遇したんです。その時「患者さんの異変に事前になぜ気付かなかったんだろう」と、すごく悔しくて…。
亡くなっていく患者さんがいるということを目のあたりにして、命を救う最前線で自分の経験を積みたいと思い、救急を希望するようになりました。
ドクターヘリ到着後、出迎えた若手のドクターとともに、フライトドクターは先に患者さんを処置室に。フライトナースは機内をチェック後、足早に患者さんを追いかけます
ナース7年目に希望がかない、救急へ異動したのですが、そこで今度はドクターヘリで活躍する先輩ナースや、ドクターたちの救命に当たる姿を見て、「かっこいいな」と憧れて…。それで、フライトナースを希望するようになりました。
とはいえ、「フライトナースになりたい!」と思ってすぐになれるわけではなく、まずは3年間救急で経験を積んだ後、ラピッドカー※1に同乗できるようになり、それからまた1年半経験を積みました。
ようやく、念願のフライトナースになったのは救急に異動してから4年半後、ナースになってから11年半が経ってました。
※1 ラピッドカーとは、ドクターとナースが医療資器材とともに、重症患者の元にかけつけ、少しでも早く初期治療を開始するためのドクターカーのようなもの。ドクターカーと違い、車内に患者を収容しての治療・搬送などはできません。
―フライトナースになって、どれくらいで「慣れてきたな」と感じましたか?
だいたい300回くらい搭乗したときに、慣れるというか、「自分の思うような仕事ができたかな」と感じるようになりました。
最初の2年目までは、なかなか自分が思うような動きやケアができなかったり、ドクターに怒られたりで…。「なんでこんなにできないのか」と落ち込むことがすごく多かったです。
300回ほどのフライト経験というのは、軽症から重症までさまざまな症例に対応することができ、フライトナースとしての自信がつく回数なのかもしれません。
千葉北総病院のドクターヘリ稼働数はほかの施設よりも多く、年間1,200回を超えます
―月にどれくらいフライト当番になるのか教えていただけますか。
多い時でも月に4~5回くらいですね。だいたい2週間に1~2回くらいです。
当番日は、朝8時20分にドクターヘリの待機が開始になり、ブリーフィングでその日の注意事項や情報の共有を行います。要請があったらすぐに出られるよう、患者さんの受け持ちはせずに救急外来で勤務しています。
その日の当番がわかる、ドクターヘリ運航表(左)と毎日の出動回数が記録されている運航実績表(右)。運航表は、同じ形式のものが「コード・ブルー」内でも使われていました
治療の中心はあくまで患者さんとご家族
―フライトナースとして、一番大切にしていることは何ですか?
患者さん側の立場に立つことです。
フライトナースは現場で、フライトドクターが診断や治療をスムーズに進められるように補助するのはもちろん、患者さんやご家族への声かけも行います。
患者さんは事故や病気によっていきなりドクターヘリで運ばれるという、心身ともに危機的状況にありますが、同様にご家族にも、精神的な重圧が大きくかかっています。
「もうすぐ病院の中に入りますからねー。もう少しがんばってくださいね」と声をかけながらストレッチャーを押すフライトナース
そんな中、フライトナースとして現場でご家族にも顔を合わせていると、病院に患者さんを搬送した後、院内で、駆けつけたご家族※2に会っても、「さっき現場にいた看護師さんだ」と安心感を持っていただくことができ、病院で初めて会うよりも、介入しやすくなると思います。
※2 北総病院のドクターヘリでは、基本的には、ご家族は同乗せず、自家用車や公共交通機関で搬送先の病院まで来院してもらいます。
フライトナースは、現場でフライトドクターが診療に集中できるように介助したり、患者さんをすぐに搬送できるようコーディネートします。ただ、その中でも、患者さんとご家族が置き去りにならないように声をかけたり、患者さんやご家族の様子をフライトドクターに伝えるなど、治療の中心はあくまで患者さんやご家族となるように心がけています。
同じ意志を持ったチームで救命に当たることができるのもやりがいの一つ
―フライトナースになって4年目ということですが、どういうところに、フライトナースとしてのやりがいを感じていますか?
患者さんにすぐ接触でき、救命の現場に関われる、ということでしょうか。
患者さんにとっても、一分一秒でも早く治療を受けられるというのは最大のメリットです。そういったメリットを医療従事者として提供できるのも、やりがいにつながっているのだと思います。
ドクターヘリが要請される症例の中でも、重症外傷の患者さんで開胸術などの処置を現場で行うこともあります。重症外傷の患者さんへの開胸術は非常に難しく、助かる可能性もそれほど高くはありません。
しかし、どんなに重症で難しい症例であっても、フライトドクターが最大限の治療が行えるよう、フライトナースは準備・対応をします。
そのような治療に対して、「助かる可能性も低く、医療費もかかるのになぜ現場で開胸術を行うのか」とさまざまな意見はあるかもしれません。しかし、「自分の家族が目の前の患者だった場合も、同じことが言えるのかということだと思う」とあるドクターは話していました。
「どんな状況でも『助かる可能性がある』のに『やらない』という選択肢はない」という意志を持って、ドクターヘリチームは現場に行きます。
同じ意志を持って現場で救命にあたることができるというのも、フライトナースとしてのやりがいだと感じています。
その日の待機が終わると、チーム全員が集まり、デブリーフィングが行われます。治療には直接当たらないパイロットや整備士からも、ドクターの指示についての疑問が出ることがあるのだそうです
―フライトナースになりたいナースへ、メッセージをお願いします。
フライトナースを目指す方には、ぜひ日々の看護を深めていただきたいです。
フライトナースとしての技術・知識はもちろんのこと、患者さんの全体像を把握できる視野を持つというのは、普段の業務から培われることだと思います。
ドクターヘリで向かう現場では、ナースは一人しかいません。
周囲に質問できる人や、頼れる人はいないので、自分の看護に自信を持つことが大切なんです。
そして、自分の看護に自信を持つためには、やはり日々の看護の積み重ねが大切だと思います。フライトナースとしての活動は、その先にあるのだと思います。
一日の業務を終え、格納庫に収められるドクターヘリ
やっぱり気になる! 「コード・ブルー」についても聞いてみました!
日本医科大学千葉北総病院は、現在、絶賛上映中の「コード・ブルー」のロケ地となっていることは、すでに述べたとおり。
そこで、インタビューの合間に益子先生とフライトナースの方それぞれに、ドラマについてのお話もお伺いしました!
―益子先生は「コード・ブルー」にも医療監修として携わっておられますね。具体的にはどのようなことをされたのでしょうか?
益子医師:僕が、というよりも、うちの医局全体ですね。
ドラマのスタッフたちは、ドラマを制作するプロですが、当然ながら医療や救急のプロではありません。そのため、想像でしかない救急現場を表現しようとなると、やはり現実離れしてしまうことがあります。
そこで、僕たちが現場に行き、純粋にドラマを見る医療者側としてアドバイスをします。
例えば、気管挿管のシーンでは、喉頭鏡を逆に持っていないかなど、実際の俳優さんが医療シーンを行う際の具体的な動作指導を行いました。
当院で最もドラマに関わっている救命救急センター長の松本尚先生も、医療従事者が医療シーンを見ても「ありえない」という違和感がないようにする、ということを意識していますし、こだわっています。
一方で、ドラマの制作側としても譲れない部分はあります。
例えば、よく「感染予防のマスクをしていないのはおかしい」と言われるのですが、俳優さんの顔をきれいに見せなくちゃいけないという、制作側の事情もあるので。 ここら辺はもう、制作側と監修(医療者)側の駆け引きですね(笑)
―「コード・ブルー」が放送されたことで、何か変化などはありましたか?
益子医師:当院がロケ現場になったことから、ヘリを見に来るドラマのファンの方たちも増えました。
ただ、中には帽子をかぶっていたり日傘をさしていらっしゃる方もいます。それらがもし、ヘリの離発着時に下降気流(ダウンウォッシュ)で飛んでしまうと、安全管理上問題になるので、そういう方には声をかけ、帽子は飛ばないように押さえるなどしてもらい、日傘はたたんでいただきます。
それから、患者さんを搬送してきた場合も、そういった見学の方にはご遠慮いただくようにしています。
多くの方は素直に聞いてくれますが、中にはやはり嫌な顔をされる場合もあります。でも、誰でもやはり、自分が患者になって搬送されてきているところをじろじろ見られるのはいい気がしないと思うので、そこは重ねてお願いします。
ドラマで見慣れたこの道を、ドラマの登場人物と同じように走る見学者もいるのだとか
フライトナース:見学といえば、先日は、地方の修学旅行生が、自由行動の日に当院まで見学に来てくれたことがありました。せっかく東京に来て、ほかにもいろいろと見るところがある中で、わざわざ当院まで来てくれたのはうれしかったですね。
そうやって医療従事者だけでなく、子どもや一般の人にもドクターヘリに興味を持ってもらって、認知してもらえるのは、ドラマ効果だなと思います。
フライトナースは、素晴らしい仕事だし、やりががある仕事だと思います。
もちろん、ドラマと現実は決して同じではありませんが、私もいち視聴者として、ドラマを鑑賞しています。
ライター:山村真子(看護師)
撮影・編集:林 美紀(看護roo!編集部)
インタビュー前編
フライトドクターに聞いてみた ドクターヘリのあれこれ|日本医科大学千葉北総病院インタビュー【前編】
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