「宿のオーナー」と「訪問看護」の二足のわらじ | ペンション経営ナースライフ【4】

現役ナースがペンション経営!?

「健康に不安がある人にも旅行を楽しんでもらいたい」そんな想いをカタチにしたナースマン・桐木智一が、ペンション経営ナースライフをお届けします。

 

第4回:「宿のオーナー」と「訪問看護」の二足のわらじ

 

今回は「宿のオーナー」と「訪問看護師」、二足のわらじを履く私の仕事内容についてご紹介します。

 

宿の基本は料理、掃除、接客

宿の基本的な業務は料理、掃除、接客です。

 

ときどき、「料理はどこで勉強したんですか?」という質問を受けますが、実はほとんど独学。十勝の野菜やお肉、乳製品など食材がよいので、あまり手をかけない方が美味しいんです(笑)。新鮮なアスパラガスのサラダや、「牛とろ」と呼ばれる生の食感の牛肉が人気で、毎朝焼く十勝小麦100%のパンも好評をいただいています。

 

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十勝の「美味しい」がいっぱい詰まっています

 

お客様に快適に過ごしていただくには、毎日の掃除も欠かせません。最近はパートさんにも手伝ってもらいながら、気持ちを込めて掃除をしています。

 

接客については、病棟勤務の頃から人と接していたので、特にとまどいはありませんでした。ただ、お客さんに対して看護師として接するわけではないので、病気の話が出たときに、どこまで突っ込んでいいのか考えてしまうことはあります。

 

話したそうであればいろいろ聞きますし、困っているようであればアドバイスします。ただし、お客さんがそれを欲しているかを慎重に見極めるよう心がけています。

 

「お客さんの笑顔」が活力

「旅行が難しい方にも旅の幸せを」と始めた宿ですが、ふたを開けてみれば、ご家族連れのお客さんにとても気に入っていただいています。お子さんが喜ぶようにと、宿の中に「かまくら」をつくったり、絵本をたくさん置いたりしたことが効果的だったようで、「帰りたくない!」とお子さんがぐずってしまうこともしばしば。

 

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こちら、子どもたちに大人気の「かまくら」。中にはおもちゃがいっぱいです

 

また近くに「十勝千年の森」があるので、ガーデニングがお好きな年配の方もたくさんいらっしゃいます。車いすの方などはまだ1割程度でしょうか。

 

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雄大な風景が広がる「十勝千年の森」。セグウェイで野山を巡るツアーが大人気です

 

宿泊された方に感想を伺うと、皆さんとても喜んでくださっていてこちらが恐縮してしまうほどです。お客さんの笑顔が、宿を続ける上での最大の活力になっています。

ただ、お客さんの数を見ると安定した経営とは言えませんので、まだまだ宣伝が必要と感じています。

 

平日の日中は訪問看護師

お客さんに、私が訪問看護の仕事もしていることをお話しすると、たいてい驚かれます。私も正直、我ながらよくやっているなぁと思います(笑)。

 

訪問看護は平日の9時半から17時まで、パートとして働いています。事務所まで車で片道36kmの道のりですが、そこは北海道。渋滞することはほとんどなく、40分で着いちゃいます。

 

訪問看護を始めたのは、開業より2年前のこと。宿を始める際に一度やめたのですが、人手不足の訪問看護ステーションから協力を打診されたのがきっかけで、また携わるようになりました。

 

私が訪問看護をするようになったのは、「旅行が難しい方」の生活を知りたいと思ったからです。働き始めてみて、この選択は正しかったと実感しています。というのも、自宅での患者さんの生活は想像していた以上に入院生活と違っていて、病院に勤めていた頃の退院指導がいかに事務的なものであったのかを痛感させられたからです。

 

内服一つとっても、意外なほどのコンプライアンスの悪さに驚かされました。そこには「もっと薬を減らしてほしい」「こんな薬は必要ない」という思いが隠されている場合も少なくありません。医師や看護師に言えないことがこれほど多くあるという事実を知ったのも、訪問看護を始めてからでした。

 

病棟で働く看護師には、訪問看護の仕事内容をぜひ知ってほしいと思います。そして患者さんの退院時には、訪問看護へ情報をつないでいただきたいです。またもし可能なら、ぜひ一度、訪問看護師として働いてみてください。間違いなく病棟看護の視点が変わると思います。

 

二足のわらじの年間サイクル

最後に二足のわらじの「年間サイクル」についてご紹介しましょう。ご存知のとおり、宿には繁盛期と閑散期があり、ここ北海道にお客さんが訪れ始めるのはゴールデンウィークから。連休になると、いきなり満室が続きます。冬から春にかけてはお客さんが少なく、私も体がなまっているので、なかなか大変です。毎年「満室に体が慣れた頃に、満室続きが終了」ということ繰り返しています。

 

ゴールデンウィークを過ぎた後は、主として週末に宿業をし、平日は訪問看護。繁盛期に入る7月中旬からは訪問看護をお休みして、宿業に専念します。9月中旬から訪問看護を少しずつ始め、10月末頃から平日の宿業はほぼお休みしています。こんなサイクルで1年が回っていますので、7月から10月末までは休みがほとんどありません。

 

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改めて見ると、我ながらこんなにも働いていたんですね(笑)。まあ、自営業なので休もうと思えばいつでも休めるのですが。

 

こうした生活を送れるのも、訪問看護のスタッフにご協力をいただいているからこそです。パートとはいえ、2カ月間ほぼ丸々お休みをいただいていることにとても感謝しています。

 

こんな感じで、忙しく過ごす毎日です。二足のわらじは大変なこともありますが、いろいろな経験ができ、満足しています。

 

次回はあっという間の最終回。「和みの風」のこれからについて書きたいと思います。

 


■執筆者プロフィール

名前:桐木智一

経歴:外科病棟・緩和ケア病棟に勤務後、訪問看護に転身。さらにそののち、バリアフリーの宿「和みの風」をオープン。訪問看護の仕事でケアにも携わりつつ、宿の経営を続けている。

和みの風HP:http://www9.plala.or.jp/nagominokaze/


【ペンション経営ナースライフ|連載記事】

【1】「看護婦さんが一緒だったら、旅行するのになぁ。」

【2】開業へひた走った5年間

【3】「看護師ならではの宿」とは? 

【4】「宿のオーナー」と「訪問看護」の二足のわらじ

【5】1人でも多くの方に、旅の幸せを

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