退院調整看護師が在宅医療を導くー終の棲家への架け橋
最近では、専従の退院調整看護師を設置し、患者さんが安心して在宅療養できるように調整する病院が増えてきました。
退院調整看護師については、一般的な看護師の仕事のイメージと離れていたり、退院調整に関わる業務が新しく増えるなど、ネガティブな面も少なからずあります。しかし、今後の高齢化社会において、退院調整看護師が担う役割はとても重要です。
そこで今回は、退院調整看護師の役割や重要性について、まとめてみます。
〈目次〉
- ●国の掲げる2025年問題-終の棲家を住み慣れた自宅へ
- ●退院調整のスペシャリスト、退院調整看護師の実態
- ・退院調整部門の設置と退院調整看護師の人数
- ・退院調整と退院支援に必要な能力と業務内容の違い
- ・退院調整看護師のメリット・デメリット
- ・退院調整看護師になるためには
- ●病棟看護師と退院調整看護師がうまく連携するための3つのコツ
- ・自分の役割を認識し理解する
- ・定期的に情報交換できる時間をつくる
- ・退院支援に関わる患者さんの入院から退院までを2人体制で受け持つ
国の掲げる2025年問題-終の棲家を住み慣れた自宅へ
皆さんは、国が掲げている2025年問題をご存知ですか?
2025年には、65歳以上の高齢者数が3,657万人となると予測されています。このままでは、療養者の数に対して、病院のベッド数が大幅に足りなくなってしまいます。そこで、国は在宅療養環境の整備を促進すると同時に、自宅への退院を進める退院調整看護師の配置を進めています。
厚生労働省の調査によると、60%以上の人が自宅療養を希望しています。また、要介護状態になっても、自宅や、子供や親族の家で介護をして欲しいという人は、40%以上います。しかし、自宅療養をするためには表1のようなさまざまな環境調整が必要です。
表1 自宅療養のために必要な環境調整
このような退院後の生活環境を、自宅療養を望む患者さんや家族の希望を聞きながら整えていくのが、退院調整看護師の仕事です。
退院調整のスペシャリスト、退院調整看護師の実態
●退院調整部門の設置と退院調整看護師の人数
退院調整部門のある病院では、専従の退院調整看護師が活躍しています。退院調整部門がない病院では、病棟看護師や社会福祉士、医療ソーシャルワーカーなどの職種の方が、その役割を担っていますが、専従の看護師を配置することにより、より充実した退院調整が行えます(図1)。
図1 退院調整部門を設置している病院の割合
150床以上の病院(全839件)のうち、退院調整部門の有無を調査した結果です。
(文献2より引用改変)
図1から、全体の約2/3の病院が退院調整部門を設置しているのがわかります。さらに、退院調整部門を持たない病院276件のうち約30%は、今後、退院調整部門の設置を予定していると回答しています。
また、退院調整部門がある563病院のうち、退院調整部門に配属されている看護師は895名います。つまり、1病院につき、1.5人の看護師が配置されている状況です。
こちらの報告書は、平成22年の1ヶ月間に行われた調査のため、現在はさらに増えていることが予想されます。
●退院調整と退院支援に必要な能力と業務内容の違い
退院に向けた看護師の仕事には、退院調整と退院支援の2種類があります(表2)。
表2 退院調整と退院支援の違い
●退院調整看護師のメリット・デメリット
退院調整部門がある病院で、専属の退院調整看護師として配置されて働くと、いくつかのメリットとデメリットがあります。
(1)メリットの例
・夜勤がない
・日曜、祝祭日が休み
・残業が少ない
・重労働がない
・病棟や部署を超えて多職種と関われる
・地域医療に詳しくなる
(2)デメリットの例
・患者さんと関わる機会が少ない
・医療処置に携わることがほとんどない
・主にデスクワークになる
●退院調整看護師になるためには
退院調整看護師になるためには、退院調整部門のある病院に勤務することが前提となります。
急性期のみの病院よりは、地域包括ケア病棟を有する病院や、回復期、療養型の病院の方が退院調整看護師の活躍する場が多いでしょう。
また、病院によっては、専属の退院調整看護師として活躍できる場合もあれば、その他の業務と兼任する場合もあります。
まずは、ご自身が所属する施設に確認してみてください。
病棟看護師と退院調整看護師がうまく連携するための3つのコツ
退院支援を行う病棟看護師、退院調整を行う退院調整看護師のどちらにとってもお互いの連携が不可欠です。
そこで、両者がうまく連携するためのコツをお伝えします。
●自分の役割を認識し理解する
病院の規模や体制によって、自身がどこまで役割を担うのかが変わってきます。
そのため、勉強会などを開き、お互いの役割を把握しておきましょう。
●定期的に情報交換できる時間をつくる
お互いがバラバラに動いてしまうと、逆に時間がかかってしまったり、行き違いが生じたりします。
そのため、患者さんのことや、進行状況などを情報共有する曜日や時間をあらかじめ設定しておくことをお勧めします。
●退院支援に関わる患者さんの入院から退院までを2人体制で受け持つ
退院支援、退院調整が本格的に動き始めると、病棟看護師と退院調整看護師との間の連絡や、外部の方との連絡が頻繁になります。休日中に担当患者さんについて連絡があると、退院支援や退院調整に数日の遅れが出てしまいます。
そのため、患者さんは、2人体制で受け持つことをお勧めします。2人体制であれば、どちらかが出勤していれば、自分が休んでいる間に動きがあっても安心です。
* * *
筆者自身、療養型病院で専従の退院調整看護師として働いています。
確かに、最初の頃は医療行為が少なく、患者さんとの関わりが少なくなることで看護師資格を持っていることに意味があるのか、もっと看護師らしいことをしたいと思ったこともあります。
しかし、退院支援や退院調整を進めていくうちに、やりがいを感じるようになりました。患者さんの病態を理解してアセスメントし、必要とされる地域医療の関係職種と連携するには、看護師としての経験や知識が必要だということも実感しています。
【ライター:こたつむし】
【参考文献】
(1)在宅医療・介護の推進について. 在宅医療・介護推進プロジェクトチーム. 厚生労働省. (2017/3/23アクセス)
(2)退院調整看護師に関する実態調査報告書. 財団法人 日本訪問看護振興財団.2011.(2017/3/23アクセス)
(3)東京都退院支援マニュアル.東京都福祉保健局. 2016. (2017/3/23アクセス)
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