緩和ケア 7つの誤解|誤解4◆医師の説明を患者は理解している

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最後の抗癌剤治療が奏功しなかった患者に、「もう治療選択肢はないので本格的な緩和ケアを行いましょう」と医師が説明する。すると患者は「先生を信じて治療を続けてきたのに治療選択肢がないとはどういうことか」と嘆き、深い絶望に陥る──。よくある事例だ。

(満武 里奈=日経メディカル)

 

 

特集◎緩和ケア 7つの誤解

誤解4◆医師の説明を患者は理解している

なぜ上記のようなことが起こってしまうのか。それは医師が患者に治療選択肢を十分に説明したつもりになっていても、実際に患者は理解していないことが多いためだ。

 

「次の抗癌剤へと切り替えるときに、『次にはこの薬がありますよ』とさも治るように説明しているケースがある。治療効果が得られなかったから次の抗癌剤に変更することや、その抗癌剤が最後の選択肢であることを明確に伝えていないことが原因だ」と立川在宅ケアクリニック(東京都立川市)の井尾和雄氏は指摘する。

 

埼玉県立がんセンターの余宮きのみ氏が勧めるのは、治療前に今後の見通しと治療選択肢を分かりやすく伝えておくこと。「最初にAという抗癌剤を使用します。もしこれで治療効果が得られなかった場合はBを検討しましょう。それでも腫瘍が小さくならなかった場合にはCか、緩和ケアを本格的に開始することを検討しましょう」といった形で説明することで患者の理解を促進できる。

 

治療選択肢が複数あった場合は、単に並列に提示するだけでは不十分だ。患者が医療用語を十分に知らないために、十分に理解できていない可能性があるためだ。愛和病院(長野市)の平方眞氏は、「患者さんが理解できているか、理解の度合いを確認しながら話したり、大切なことは繰り返し話すよう気をつけるとよい」とアドバイスする。また、選択肢を横並びで示さずに、各選択肢の合理性を分かりやすく解説する必要があると話す。

 

愛和病院の平方眞氏

愛和病院の平方眞氏は、患者が話を理解しているかこまめに確認しながら話すほか、大切なことは繰り返し説明するようにしている。

 

情報提供だけでなく情報収集も

患者に分かりやすく情報提供するためには患者からの情報収集に力を入れることが大切だ。

「医療者は情報提供することばかりに陥りがち。患者さんがどう感じているのか十分に理解した上で情報提供するよう心掛けた方がよい」と余宮氏は指摘する。

 

例えば患者が「本当に、朝晩にオキシコドンを飲まないといけないのでしょうか」と聞いてきた場合、「そうですよ。これは鎮痛薬で、これを飲んでいるから痛みが取れているのですよ」と回答するのでは不十分。正解は「何か気が掛かりなことがあるのですか」と聞くこと。そうすれば、患者がなぜその質問をしてきたのか、背景にある不安や心配を聞き出すことができる。 

 

 

【緩和ケア 7つの誤解】

誤解1◆緩和ケアは癌治療後に開始

誤解2◆予後は予測できない

誤解3◆緩和ケアは痛みの緩和

誤解4◆医師の説明を患者は理解している

誤解5◆レスキュー薬はできるだけ制限

誤解6◆モルヒネは命を縮める

誤解7◆点滴しないと死期が早まる

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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