患者さんのために知っておくべき「医薬品副作用の公的補償制度」|ナース必読ニュース!

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患者さんのために知っておくべき「医薬品副作用の公的補償制度」

医薬品を使って重い副作用が出た場合、患者・家族は、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)が運営する「医薬品副作用被害救済制度」で金銭的な補償を受けられることがあります。

 

しかし、PMDAの調査で、一般国民では認知率が約30%、看護師は50%弱と、制度の認知率が高くないとの結果が、2016年3月29日に発表されました。

 

副作用への補償を受けるためには、患者さん・ご家族が自ら申請しなければなりません。

制度を知らなかったために、患者さん・ご家族が経済的に困窮することがないように、看護師として、制度の概要をおさえておくとよいでしょう。

 

【看護師がおさえておきたいこと】

医薬品を適正に用いて、重い副作用が出た場合、患者・遺族が必要な書類をそろえて申請すれば、補償を受けられる可能性がある。

 

 

◆目次

 

 

【制度の概要】月に20万円を超える給付も 

1.給付の対象と給付金の種類

「医薬品副作用被害救済制度」で補償されるケースと、それぞれの給付金を挙げます(2016年4月1日現在)。

 

A)入院治療が必要な程度の医療を受けた場合

◆給付金

・副作用治療の医療費(自己負担分)

・医療手当(医療費とは別に月3万4,300円/3万6,300円)

 

B)日常生活が著しく制限される程度の障害が発生した場合

◆給付金

・障害年金(1級で月22万9,700円、2級で月18万3,800円)

・障害児養育年金(1級で月7万1,800円、2級で月5万7,500円)

 

それぞれの年金における「1級」とは、身の回りのことはかろうじてできるがそれ以上の活動はできない状態です。

活動の範囲は、病院ならベッド周辺、家庭なら室内に限られる場合を指します。

 

「2級」は、日常生活は極めて困難で労働により収入を得ることができない程度のものを指します。

活動の範囲は、病院内なら病棟内、家庭なら家庭内に限られる場合です。

 

C)死亡に至った場合

◆給付金

・遺族年金(月20万900円:原則10年間

・遺族一時金(723万2,400円)

・葬祭料(20万6,000円)

 

B)のように、重い障害が出た場合、C)のように家族が亡くなった場合には、各種年金などにより、「継続的に補償が受けられうる」ことがポイントです。

 

たとえば、重い障害が残った場合や、生計維持者(一家の大黒柱)が亡くなったような場合などにも、この継続的な補償が得られると、本人や遺族の生活のための重要なサポートになります。

 

2.給付の例外

A)予防接種法に基づく予防接種による被害

「予防接種法に基づく予防接種」については例外となっていますが、健康被害の補償として、別の公的補償制度があります。予防接種健康被害救済制度」という制度です。

(また、輸血などの生物由来製品による感染の場合にも、同様の公的補償制度があります。「生物由来製品感染等被害救済制度」)

 

B)対象外医薬品(抗がん剤、免疫抑制剤など指定されたもの)による被害

抗がん剤、免疫抑制剤などは、そもそも重い副作用が出るリスクが高い薬剤です。

「対象外医薬品」にはそのような「もともと重い副作用の出るリスクが高い薬剤」が指定されています。

 

3.給付のための手続き

給付のためには、患者さん・ご遺族からPMDAに対して「給付請求」を行うことが必要です。

その後、PMDAが厚生労働省の「薬事・食品衛生審議会」の意見を踏まえて、給付するかどうかを判断します。

 

請求にあたっては、所定の「申立書」に加えて、「投薬証明書」や「決められた形式での診断書」も必要になります。

所定の書類については、このページ(請求に必要な書類)からダウンロードできます。

 

 

【適正使用の基準】添付文書の用法・用量を守ることが原則 

1.「適正使用」の判断基準

支給の前提として「医薬品が適正に使用されたこと」が必要とされますが、この点は以下の要素から判断されます。

A)添付文書の用法・用量の記載

B)投薬当時の医学水準、医療の実情

C)患者年齢・身体状況、疾病の性質・状態

 これらを考慮したうえで、総合的な見地から、個別具体的な判断となります。

 

原則は、添付文書の用法・用量を守ることが求められますが、例外として投薬量が添付文書の使用量を超えている場合でも、適正使用となる場合があります。

 

臨床現場では、必要に応じて添付文書の用法・用量とは異なる使用をすることもあります。

制度の趣旨からすれば、過失無過失を問わず補償をする「本来の無過失補償制度」に近づけるべきで、よほど逸脱した使用法でなければ、補償することが望ましいのではないでしょうか。

(東京地裁 平成20年10月31日判決、p.18-19)〔PDF〕

 

2.請求状況と実際に給付される割合

請求状況は年間1,000~1,400件で増加傾向にあり、請求件数の81~86%程度に対して支給されています。

 

支給額は総額年間20億円前後で、財源はおもに医薬品製造販売業者からの拠出金(年間36~45億円)です。

(医薬品医療機器総合機構:平成27年度のこれまでの事業実績と最近の取組みについて)〔PDF〕

 

過去に「適正使用ではない」として不支給になった件数は、2015年3月、2016年4月分で、各月約200件の申請のうちそれぞれ4件、6件のみです(ただし適正使用に当たらないケースは請求していない可能性があります)

(医薬品医療機器総合機構:平成27年度決定 3月分28年度決定 4月分)〔PDF〕

 

 

【まとめ】制度があっても知らないともらえない

医薬品の投与を含め、医療ではある程度の確率で、良くない結果が生じることは避けられません。

とはいえ、患者さんやご家族にとっては、医薬品副作用で被害を受けた結果、経済的に窮地に立たされかねないのが現実です。

 

しかし、制度があったとしても、患者さん・ご家族が申請しないと給付を受けられません(知らないと申請できない)。

 

患者さん・ご家族が、医薬品などの副作用で経済的に窮地に立たされてしまわないように、看護師として、「こういう制度もある」ことを知っておかれるといいでしょう。

 

(参考)

救済制度に関する認知度調査(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構法 第15条1号

 


山崎祥光(やまざき・よしみつ)

弁護士・医師(弁護士法人 御堂筋法律事務所 大阪事務所)

医療者・病院側に立っての弁護士活動を行っており、医療紛争や医療訴訟を中心に、監査対応、警察対応や日常の法律相談なども行っている。

共著に『「医療事故調査制度」早わかりハンドブック』(日本医療企画)。委員として『医療事故調運用ガイドライン』(へるす出版)編集。

 

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